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フォトビジネスにみるサービスとビジネスモデル

市場規模ではなくビジネスの仕方が重要

製造業におけるサービスは、印刷業が価値を高めるキーワードのひとつだ。印刷ビジネスとも親和性の高いフォトビジネスでもサービスの力によって業績を伸ばすビジネスモデルが注目される。フォトビジネス市場も数字の上では、右肩上がりではない。2024年フォトブック市場予測は、フォトブック市場は、2019年度まで順調に拡大傾向で2020年度は、新型コロナの影響による撮影機会減少を受け、減少となり、2021年度以降も減少傾向は続き、2023年度は数量が847万冊(前年比94%)、金額が107億円(前年比97%)と推計となっている(日本フォトイメージング協会サイト掲載2024年9月26日)。フォトブックは、「思い出を残す」ことに加え、「スマートフォン内の多数の画像の整理」にも繋がる為、一度、経験するとリピート率は高く、市場拡大は継続すると期待し、2024年度については、数量:813万冊(前年比96%)、金額:105億円(前年比98%)と推測していた。一方、アルバムをはじめとする学校写真のビジネスでは、撮影業者の高齢化や人手不足が課題となり、業界の持続的な発展が求められる現状があるという。

DXの力で変わるフォトビジネス

近年は、ベンチャー企業によりイベント写真や、スポーツ写真、幼稚園写真のインターネット販売を開始し、 ネット販売を営業の武器に、北海道から沖縄まで全国で多くのイベント撮影を軒並み受注している状況がある。今、日本全国で着実に広まっている。スクールフォトの保育園向けサービスでは、保育士の労力削減や販売リスク軽減に向けてDXの力で写真販売サービスを展開している。株式会社e-CHANNELが運営するWebサイト「ほいくis」(2023/11/08)の特集記事「保育士が比較!保育園向け写真販売サービスサイト一覧と口コミ」では、サービスの解説と紹介が記載されている。多くの保育園・幼稚園では、子どもたちの成長を収めた写真販売をインターネットで販売、購入する方法が主流になっている。保育園向け写真販売サービスは、園で撮影した子どもの写真をインターネット上で販売するサービスのこと。保育士は保護者の同意書を得て写真を撮影・インターネット上にアップロードし、保護者はスマホなどでアップロードされた写真の確認・注文・購入を行う。以前は廊下や教室に写真を展示して販売する方法だったが、近年は保育士と保護者双方の時間と手間を軽減できる写真販売サービス導入が進んでいる。

写真販売サービスで販売する写真は、通常の保育の様子などは保育者が撮影する。普段の保育の様子を撮影できるので、子どもたちの自然な姿を捉えた写真を販売できる。入園式や運動会、イベントの時はプロカメラマンによる撮影代 行と使い分ける園も多い。写真コンテンツの価値の再認識にも繋がり実は、プロカメラマンへの撮影ニーズ拡大にも繋がっている。写真販売サービスのシステム導入費は基本的に無料である。プロのカメラマンによる派遣も基本的に無料で、保護者からの写真購入代金をもとに運営していることが多い。保育システムと併用の場合は、月額使用料がかかる場合もある。写真購入代は「L判1枚80円」などシステムごとに設定された価格や最低販売価格が設定されていることもある。最低価格以上で販売した場合は差額を手数料として園に振り込まれるケースもあるという。写真販売サービスを導入すれば、ユーザーが行うのは下記の業務のみ。

<主なユーザーの作業>

•写真撮影

•インターネット上にアップロード

•販売できない写真を削除

•販売期間の設定

前もってアプリをインストールしておくと、撮影するだけで自動的に写真がアップロードされるサービスもある。システムがクラスや日付ごとに写真を振り分けてくれるので、写真の整理や掲示などの手間は一切かからない。販売できない写真を一括で削除できるため、写真撮影がNGの園児への対応もスムーズにできる。

<園のメリット>

①写真の整理、展示の手間がかからない

②集金作業の負担がない

③セキュリティが高い

<保護者のメリット>

①キャッシュレス決済ができる

②好きなタイミングで写真を選べる

③リマインド機能で買い忘れを防止できる

【主な保育園向け写真販売サービス、サイトの特徴】

・はいチーズ!フォト

千株式会社が運営する、保育園・幼稚園など子どもを預かる施設向けの写真販売サービス「カメラマン撮影プラン」と「先生撮影プラン」の2つのプランがあり、併用も可能。カメラマンの派遣は日程や回数に関わらず無料なので、行事だけでなく日常保育の撮影も依頼しやすい。専用アプリをインストールしたスマホやタブレットを利用すれば自動で写真をアップロードしてくれる。

・egao(エガオ)

株式会社スタジオアリスが運営する、学校・保育園・幼稚園向けのインターネット写真販売サービス。子ども専門写真館で培った撮影技術、プリント工場やサポート窓口も全て自社で行っている。「先生撮影プラン」では、販売したい写真をサイトにアップロードするだけで写真販売が行える。「カメラマン撮影プラン」では、子ども写真館運営のノウハウを活かした独自の研修を受けたカメラマンが撮影。プロカメラマンによる撮影データを卒園アルバムに利用できる。

・スナップスナップ

株式会社フォトクリエイトが運営する。園・学校で撮影された写真の販売サイト。日本全国の公私保育園〜大学まで約16,700校に導入されており、スクールフォト販売サービス満足度1位を誇っている(日本トレンドリサーチ調べ)。プロのカメラマンの写真を残せる「撮影事業者紹介プラン」や置くだけで写真を撮れる「自動撮影カメラプラン」などニーズに応じた複数のプランがあり、併用も可能。

・えんフォト

株式会社うるるが運営する、幼稚園・保育園の写真販売システム。写真販売だけでなく動画販売サービスも行っている。運営会社は情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格の認証を取得している。セキュリティ面での信頼性も高い。カメラマン派遣サービスでは無料でプロのカメラマンを派遣している。動画販売もしているので、イベントや行事の動画販売を考えている園のニーズにも対応。

・みんなの写真屋さん

株式会社ルクレが提供するスクール写真のネット販売システム。全国370店の写真屋さんに導入されており、近くの写真屋さんが撮影からお届けまでを一貫して担当してくれる地域密着型のサービス。

・富士フイルムスクールフォト

富士フイルムイメージングシステムズ株式会社が提供する写真販売サービス。幼稚園・保育園・学校の専任カメラマンによって撮影された写真をインターネット上で販売。高品質プリントに仕上げる。顔検索機能、スマートフォンに最適化された画面やトリミング機能など便利な機能が備わっている。保護者からの問い合わせに対応をしてくれるため、園の負担がない。

・そだちえ

株式会社リコーが運営する、保育園・幼稚園・学校向け写真・動画販売サービス。スマホで撮影した写真・動画を専用アプリが自動でアップロードしてくれる。保育者が撮影した写真販売だけでなく、プロカメラマンに撮影してもらえるプランも無料で利用可能。「ダブル認証方式」や「保護者チェック機能」などセキュリティも強味。園だよりや給食メニューなどお知らせ配信機能もある。

・コドモン写真共有・販売

株式会社コドモンが運営する保育・教育施設向けICTサービス。保育者の作業は、写真を撮影・アップロードして公開先(クラス/園児)を選ぶだけ。販売や印刷、集金、配送は全てコドモンが代行。カメラマン派遣サービスを無料で実施。コドモンのICTサービスは導入数全国No.1。勤怠管理や登降園の管理、保護者との連絡など保育業務をサポートする便利な機能が充実。

・撮っても楽だ

はるの写真工芸株式会社が提供する写真販売代行サービス。12年以上サービスを運営している、写真販売サービスのパイオニア的存在。保育者、保護者の視点に立った使いやすいサービスで、リピート率8割の高い満足度。園のニーズに合わせて、インターネット販売、見本ポスター展示、インターネットと見本の併用など販売方法を自由に選べる。写真販売システムを利用と従来の展示方式による販売も続けたいという園のニーズに対応。

・フォトレコ

フォトレコは、株式会社エクスラントが提供する、保育園・幼稚園・各種学校向けの写真販売サービス。導入数は2万3,000事業者を突破。プロカメラマンの無料派遣を行っている。サービスの不明点は、Zoom等のオンラインツールや園への直接訪問でサポート。

各サービスは、生き残りをかけた競争によりそれそれの特徴打ち出し、価値を生み出している。また、製造部門を持たないビジネスモデルでは、印刷会社がビジネスパートナーになっていることもある。重要なことは、印刷物と同様、写真自体はプリント物で コモディティ化 しているが、コンテンツを含めてサービスという無形の価値で競争していることだ。サービスという言葉は、さまざまな場面で使われる。身近に例えれば、商品価格の割引や景品の無料提供は、経済的な価値である。他にも、機能的な価値では、情緒的な「接客サービス」、機能的な価値では「補償サービス」「アフターサービス」「デリバリーサービス」など様々な事柄考えられる。機能的な価値に加え、安心感のような情緒的な価値も含んでいるようだ。印刷業も印刷製品を作る価値からサービスの価値を高める「サービス化」を促進する必要がある。サービスという言葉はやはり多様な意味を含み、その概念や定義を明確に表現することが難しい。しかし、これらはおおむねモノとの関係においてサービスを定義しようとしていると考えられる。モノとサービスの相乗効果で顧客満足に繋がることによりビジネスチャンスを広げる可能性があるようだ。

(研究・教育部 古谷芸文)

新入社員セミナー2025~学び放題サービス~

【オンライン】第5期 印刷工場長養成講座

【オンライン】第3期 印刷機長養成講座

オンライン印刷営業マネージャー養成講座2025

印刷会社とキャラクタービジネスの関係は

印刷業界は大きな転換期を迎えている。デジタル化の波に押され、従来の印刷ビジネスモデルだけでは生き残りが難しくなっている。そんな中、新たな可能性を秘めた市場として注目を集めているのが、キャラクターグッズ市場だ。
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デジタル時代のDTPプロフェッショナルになるために

デジタル時代の到来により、印刷業界は大きな転換期を迎えている。かつては紙媒体が主流であったが、今や情報伝達の手段は多様化し、デジタルコンテンツの需要が急増している。この変化に伴い、DTPオペレーターやデザイナーには新たなスキルセットが求められるようになった。
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若手社員の離職防止

若手社員の離職は、多くの企業にとって深刻な問題である。人材育成にかけた時間と費用が無駄になるだけでなく、組織の活力低下にもつながる。そこで、若手離職を防止するための効果的な方策について考察する。
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真の印刷営業マネージャーになるために

印刷業界は、デジタル化の進展による大きな転換期を迎えている。デジタル印刷技術の普及で生産効率が向上し、小ロットやオンデマンド印刷の需要が増加する一方、紙媒体の需要減少や電子書籍化が進んでいる。
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人気キャラクター「ちいかわ」にみる印刷ビジネスの機会

とある会話、人気のうさぎキャラクター

 キャラクターグッズビジネスは、印刷及び関連会社にも携わっているケースも多い。先日、とある劇場のロビーで、若い学生風の姉妹と父親らしき来場者がバッグに付けたアクリルキーホルダーに纏わるこんな会話を耳にした。

父親らしき人物「この『うさぎ』可愛いね!」

妹らしき人物「そうそう『ちいかわ』だよ!可愛いでしょう!」

姉らしき人物「うさぎ?『ちいかわ』知らないの?」

父親らしき人物「なんとなく『ちいかわ』見たこと!?知っているかな!?」

 ちいかわは、言わずと知れた一般社団法人キャラクターブランド・ライセンス協会が主催する日本キャラクター大賞において、Twitter発のコンテンツとしては初めてグランプリを受賞したキャラクターである。ハローキティやミッフィーでもなく人気キャラクターはSNSから生まれる時代だ。2024年度のキャラクタービジネス市場規模は前年度比101.8%の2兆7,464億円を予測(株式会社矢野経済研究所調べ)され、急成長を背景に続々と新キャラクターが登場している。最新の人気うさぎキャラクターも今や「ちいかわ」だけでもなさそうだ。2024年版10代女子が選ぶ!流行りそうな人気キャラクターランキング(マイナビマーケティング広報ラボ:更新日:2024年02月08日より)では、好きになったきっかけや購入したくなるグッズのポイントを徹底調査している。

2024年流行りそうなキャラクターランキングでは、

第1位「おぱんちゅうさぎ」

第2位「ちいかわ」

第3位「んぽちゃむ」

キャラクターの好きなポイントは、

「ビジュアル」が約8割

  • 高校生:「キャラクターの言葉」への注目度も高く、コトバ自体が流行ることもある
  • 大学・専門学生:「キャラクターの設定・コンセプト」の回答率が高く、見た目とその背景にも魅力を感じることが多い

好きなキャラクターのグッズは、

「ぬいぐるみ」「キーホルダー」を持っている

好きなキャラクターのコラボ商品・サービスは、

「文房具」「食品・お菓子」を購入

キャラクターIPを生み出す背景

 『ちいかわ』ヒットの背景は、SNSで活躍するクリエーターのナガノ氏が2020年にTwitterで展開し始めた漫画作品がある。現在ではキャラクターライセンスを専門に取り扱う株式会社スパイラルキュートがプロデュースしているIPだということだ。キャラクターを生む作家と作品(キャラクター)を発掘して育てるプロセスで成立する。ビジネスでは、特に後者にあたるプロディースが重要だ。2024年07月04日(木)開催、コンテンツ東京の特別講演 「キャラクター&ブランド活用」IPヒットへの仕掛けとキャラクター活用の可能性では、社会現象化する「ちいかわ」成功の背景とネクスト・ステージと称して、川上 洋一氏(スパイラルキュート代表)、辻 有起氏(グレイ・パーカー・サービス営業部長)と古川 愛一郎氏(一社キャラクターブランド・ライセンス協会理事長、ラブワン・コミュニケーションズ 代表取締役)によるトークイベントが開催され、成功の背景として川上氏より、SNSでのキャラクタークリエイター発掘、素材としての作品の目利きがポイントでることに加え、クリエイター・キャラクターファーストであることが語られた。グッズ販売にあたる辻氏からは、LINEをはじめとするSNSをコミュニケーション手段の主力とし、メイン商品のひとつとしてのぬいぐるみを主力とした売り場のポップアップなど見た目を重要視することと、新しいキャラクターをスタートすることへの注力について語られた。

キャラクターIPビジネスのプレーヤー

 キャラクターIPビジネスには、プレーヤーとしてのそれぞれのポジションが4つある。「ライセンサー」「ライセンシー」「ライセンスエージェント」「小売業者(流通のプラットホーム)」で、互いの強みを発揮することで双方の利益を図ることができる。

【ライセンサー(実施許諾者)】

ブランドやキャラクターなどの特許ライセンスを所有する団体や個人

【ライセンシー(実施権者)】

ブランドやキャラクターなどのIP(知的財産)の使用権をライセンサーから承諾を得ることで、IPを使用した商品やサービスを開発し、販売することが可能な事業者

【ライセンスエージェント】

ライセンサー(実施許諾者)と契約を結ぶことで、キャラクターやブランドなどのIPの営業代行やマーケティングを行う団体や個人。

【小売業者】

ライセンシーが開発したライセンス製品を購入することで、インターネットや小売店などを通して販売する事業者。また、キャラクターグッズに携わる事業者には、ライセンサー(版権元)から版権を借りてグッズ化し販売する事業者「ライセンシー」と企業や同人、個人から委託されるOEMがある。

 キャラクターIPビジネスは、成長分野ではあるが競争は激しい。もはや、レッドオーシャンかもしれない。一方、拡大する市場の中、顧客は、常にキャラクター開発に留まらず、ビジネスに纏わる情報や確かなブレーンを求めている。印刷会社としては、自らキャラクター開発を行うライセンサーに目を奪われているだけではなく、自社の強みや「やりたいこと」を明確し、プレーヤーとしてのポジションを選択することも視野にいれる必要がある。ちなみに、前出の人気グッズ「ぬいぐるみ」「キーホルダー」は、モノづくりに自信のある印刷会社は、ライセンシーとの関係づくりにもビジネスチャンスがあるだろう。商品開発には、売れる製造ノウハウが欠かせないことは当然だ。印刷会社では、「推し活」やファンアイテムの必需品として人気のアクリルキーホルダー(アクキー)やアクリルスタンド(アクスタ)は、「レーザー加工機」と「UVプリンター」を使ったアクリルグッズ製作で業績を伸ばした事例もある。市場は拡大の傾向だ。重要なことは、「今、売れている?」からではなく、市場のしくみを理解して「自社には何ができるか!」「何をやりたいか!」である。page2025セミナーでは、キャラクターIP、グッズ商品の製造販売で業績を伸ばす企業よりご登壇頂きビジネス開発のポイントを解説する予定だ。講師事前インタビューで感じたことは、ビジネスへの想いと熱い情熱が必要なことは強く感じた。また、キャラクターに愛情を注ぐ若い社員のモチベーションを引き出し、チームづくりを大切にしているマネジメントには共感を覚えた。

(研究教育部 古谷芸文)

page2025

page2024 オンラインカンファレンス・セミナー

科学的な改善活動のルーツとIE活動

改善と科学的なアプローチ

印刷工場におけるムリ、ムダ、ムラの3Mを削減することは重要な課題だ。特に中小の印刷業では、多品種少量に加え、仕様の異なる受注生産の多い製造部門においては管理が難しく、現場では経験や勘による職人気質で活動してきた事案が見受けられ、生産性向上に向けた改善活動が進まないケースがある。改善活動が上手くいかないケースでは、推進するリーダーや改善マインドが重要不可欠で、納得感のある合理的で科学的な対応策も必要だ。ロサンゼルスドジャーズの大谷選手は、データ分析にも積極的で科学的だ。自分の打撃データを分析して弱点を補強し、強みをさらに伸ばしているという。日刊スポーツ(2024年6月20号)によれば、新ルーティンでは、打席でのバット置きで立ち位置を確認していることで、導入後5戦で打率4割5分の記事が掲載された。同チームのベイツ打撃コーチによれば「彼は打席で同じ位置に立ちたいと思っている。相手投手によって変えることもあるが、安定して立てるように」と、左足をセットする明確な意図があるという。こうした姿勢が、彼の打撃力をさらに高め、ホームランを量産する結果に繋がったとされる。

科学的な改善とIE活動

これらは、仕事における改善活動にも大いに共通する。科学的な改善活動では、IE活動がある。トヨタ生産方式のベースになったともいわれ、改善活動のルーツのようなものだ。IE(Industrial Engineering)は、一般的に生産工学や経営工学とされ、JISでは経営工学とされている。ものづくりの改善は経済的な側面が大きく、企業の経営を左右する。世界におけるものづくりは、18世紀後半~19世紀前半にかけてイギリスで起こった産業革命によって大きく変わった。職人による家内労働から工場における組織的生産活動に変化したことにより、効率的な生産に向けた体制づくりが必要になった背景がある。1900年初期に、アメリカの技術者兼経営学者“フレデリック・テーラー”によって提唱された手法で、日本インダストリアル・エンジニアリング協会(日本IE協会)によれば、IEは、価値とムダを顕在化させ、資源を最小化することでその価値を最大限に引き出そうとする見方・考え方であり、それを実現する技術。仕事のやり方や時間の使い方を工夫して豊かで実りある社会を築くことを狙いとしており、製造業だけでなくサービス産業や農業、公共団体や家庭生活の中でも活用されているとある。

IEは、論理的な分析によって生産性を向上する手法だ。工程や作業の方法、作業にかかる時間などを科学的な手法に基づき細かく分析することで、ムリ・ムダ・ムラのない最適な方法を導く。基本的な考え方は、生産活動における作業を「価値のあるもの」と「価値のないムダなもの」に分けることだ。これらを「見える化」し、ムダを排除する。

効率=「得られた結果」÷「労力」で表し、

労力におけるムダを減らすことで労力の比率が下がり、生産効率が高まる。ポイントは、IEではムダは全部排除できないとされる。「必要なムダ」があるというのだ。

例えば、印刷機の3つの作業動作では、

  • 紙を積み、インキ、版をセット=「価値を生まない」
  • 刷り出し調整=「価値を生まない」
  • 印刷=「価値を生む」

段取り替えにあたる①と②は価値を生まないムダに分類される。ところが、このムダに分類された動作がなければ印刷はできない。「必要なムダ」ということだ。ムダを不必要なムダは排除し、必要なムダを工夫することで効率化していくことが肝になる。

IE活動の実践では、論理的な様々な分析手法を使い、大きく2種に分類される。 「方法研究」 と 「作業測定」 である。方法研究では、工程・作業方法・手順を分析して改善を行い、作業測定では、作業に必要な時間を測定・分析して、ムダな時間をなくす。これら2つの分類において様々な具体的な手法がある。例えば、代表的なものにフランク・バンカー・ギルブレスが提唱した「サーブリッグ分析」は、方法研究である動作研究の基礎となる。「人が行う作業は、18種類の基本的な要素動作からなる」と提唱し、その要素動作をサーブリッグと名付けた。3つの有用度、第1類・第2類・第3類に層別し、サーブリッグ分析表により「見える化」することで改善案を検討する手法で微細動作分析(サーブリッグ分析)と呼ばれる。2025年6月4日開講予定の第5期印刷工場長養成講座(全6回)では、新講座として、生産性向上のためのマネジメント「IE活動のすすめ方」を取り入れる。多くの工場で、人材不足や働き方改革への対応が必要な今日では、社員の納得感のある合理的な課題解決策は益々重要になる。

(研究教育部 古谷芸文)

【オンライン】 第5期 印刷工場長養成講座  2025年6月開講

【オンライン】第3期 印刷機長養成講座 2025年8月開講