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科学的な改善活動のルーツとIE活動

改善と科学的なアプローチ

印刷工場におけるムリ、ムダ、ムラの3Mを削減することは重要な課題だ。特に中小の印刷業では、多品種少量に加え、仕様の異なる受注生産の多い製造部門においては管理が難しく、現場では経験や勘による職人気質で活動してきた事案が見受けられ、生産性向上に向けた改善活動が進まないケースがある。改善活動が上手くいかないケースでは、推進するリーダーや改善マインドが重要不可欠で、納得感のある合理的で科学的な対応策も必要だ。ロサンゼルスドジャーズの大谷選手は、データ分析にも積極的で科学的だ。自分の打撃データを分析して弱点を補強し、強みをさらに伸ばしているという。日刊スポーツ(2024年6月20号)によれば、新ルーティンでは、打席でのバット置きで立ち位置を確認していることで、導入後5戦で打率4割5分の記事が掲載された。同チームのベイツ打撃コーチによれば「彼は打席で同じ位置に立ちたいと思っている。相手投手によって変えることもあるが、安定して立てるように」と、左足をセットする明確な意図があるという。こうした姿勢が、彼の打撃力をさらに高め、ホームランを量産する結果に繋がったとされる。

科学的な改善とIE活動

これらは、仕事における改善活動にも大いに共通する。科学的な改善活動では、IE活動がある。トヨタ生産方式のベースになったともいわれ、改善活動のルーツのようなものだ。IE(Industrial Engineering)は、一般的に生産工学や経営工学とされ、JISでは経営工学とされている。ものづくりの改善は経済的な側面が大きく、企業の経営を左右する。世界におけるものづくりは、18世紀後半~19世紀前半にかけてイギリスで起こった産業革命によって大きく変わった。職人による家内労働から工場における組織的生産活動に変化したことにより、効率的な生産に向けた体制づくりが必要になった背景がある。1900年初期に、アメリカの技術者兼経営学者“フレデリック・テーラー”によって提唱された手法で、日本インダストリアル・エンジニアリング協会(日本IE協会)によれば、IEは、価値とムダを顕在化させ、資源を最小化することでその価値を最大限に引き出そうとする見方・考え方であり、それを実現する技術。仕事のやり方や時間の使い方を工夫して豊かで実りある社会を築くことを狙いとしており、製造業だけでなくサービス産業や農業、公共団体や家庭生活の中でも活用されているとある。

IEは、論理的な分析によって生産性を向上する手法だ。工程や作業の方法、作業にかかる時間などを科学的な手法に基づき細かく分析することで、ムリ・ムダ・ムラのない最適な方法を導く。基本的な考え方は、生産活動における作業を「価値のあるもの」と「価値のないムダなもの」に分けることだ。これらを「見える化」し、ムダを排除する。

効率=「得られた結果」÷「労力」で表し、

労力におけるムダを減らすことで労力の比率が下がり、生産効率が高まる。ポイントは、IEではムダは全部排除できないとされる。「必要なムダ」があるというのだ。

例えば、印刷機の3つの作業動作では、

  • 紙を積み、インキ、版をセット=「価値を生まない」
  • 刷り出し調整=「価値を生まない」
  • 印刷=「価値を生む」

段取り替えにあたる①と②は価値を生まないムダに分類される。ところが、このムダに分類された動作がなければ印刷はできない。「必要なムダ」ということだ。ムダを不必要なムダは排除し、必要なムダを工夫することで効率化していくことが肝になる。

IE活動の実践では、論理的な様々な分析手法を使い、大きく2種に分類される。 「方法研究」 と 「作業測定」 である。方法研究では、工程・作業方法・手順を分析して改善を行い、作業測定では、作業に必要な時間を測定・分析して、ムダな時間をなくす。これら2つの分類において様々な具体的な手法がある。例えば、代表的なものにフランク・バンカー・ギルブレスが提唱した「サーブリッグ分析」は、方法研究である動作研究の基礎となる。「人が行う作業は、18種類の基本的な要素動作からなる」と提唱し、その要素動作をサーブリッグと名付けた。3つの有用度、第1類・第2類・第3類に層別し、サーブリッグ分析表により「見える化」することで改善案を検討する手法で微細動作分析(サーブリッグ分析)と呼ばれる。2025年6月4日開講予定の第5期印刷工場長養成講座(全6回)では、新講座として、生産性向上のためのマネジメント「IE活動のすすめ方」を取り入れる。多くの工場で、人材不足や働き方改革への対応が必要な今日では、社員の納得感のある合理的な課題解決策は益々重要になる。

(研究教育部 古谷芸文)

【オンライン】 第5期 印刷工場長養成講座  2025年6月開講

【オンライン】第3期 印刷機長養成講座 2025年8月開講

 

2025年6月開講【オンライン】第5期 印刷工場長養成講座

 

「人材開発支援助成金」と「オンラインスキルアップ助成金」の

対象になる可能性があります。

 

工場の価値を高め稼ぐマネジメント力を身につける  

企業規模の大小にかかわらず、工場長や製造現場の管理者は、経営の重要な役割を担っている。
印刷工場で作り出す製品は、印刷ビジネスを左右することから自社の営業戦略を共有し、稼ぐ工場として価値を高めていかなければならい。ビジネス環境の変化対応の中、生産現場の管理は勿論のこと経営視点での幅広い見識と対応力が求められる。
印刷工場長養成講座では、守りだけではなく攻めの工場マネージャー育成を目指す。マネジメント、製品とサービス開発、設備投資、改善活動、財務管理の広い視野で講座を開催する。

 

 本講座のおすすめポイント
・競争力のある工場づくりのポイントが学べる
・経営戦略と連携した工場マネジメントを学べる
・顧客思考のものづくりを学ぶ
・マネジメントとチーム力向上のためのコミュニケーションを学ぶ
・部下の管理と育成について学べる
・管理者としての思考を学び、モチベーションが高められる
・生産性向上から補助金活用、投資計画をカバーしたカリキュラム
・経営数字の読み方を学び経営感覚をブラシュアップする
・印刷ビジネスに特化、実務経験と実績ある講師陣
・オンラインでの自社や自宅で相互コミュニケーションでの受講ができる
・1 社2 名の参加で社内体制作りに繋げる

 

開催日程

2025年6月4日(水)開講 全6回 ※計21時間 (1回3時間/日または1回4時間/日) 

※本講座は、Web会議システム「ZOOM」を使用したインターネットによる講座です。

 

カリキュラム

開催日 詳細
第1回
6/4(水)
13:00~17:00
(4時間)
●テーマ:
印刷工場マネジメント
●内容:
競争力のある工場づくり
・顧客思考のものづくり
・マネジメントとはなにか
・コミュニケーションの活性化
「部下のやる気を引き出すチームづくり」
演習①:強いチーム活性化とは
演習②:顧客視点の工場づくり
 ↓
【最終日に向けての課題説明】
1.個人目標(フレームワーク)
2.工場づくり目標(※顧客視点強化目標)
 ↓
工場改善の課題設定と目標(最終日発表会へ)
第2回
6/11(水)
13:00~17:00
(4時間)
●テーマ:
印刷工場の生産性向上と改善活動
●内容:
~工場改善「IE活動」~
(1)IE活動とは何か
 「勘と経験の生産管理、工程管理を体系的に構築し、
 ムダ、ムリ、ムラを除去し、生産性を上げる」
(2)IE改善の概要とすすめ方
 顧客が求める「品質」の製品・サービスを、最小のコストで
 効率良く納品する
 科学的に把握を行い、工程全般の改善を組織で
 取り組む
(3)IE手法と効果(演習あり)
 <IE手法>
 「工程分析」「動作分析」「時間分析」など
 <効果>
 「プロセスの効率化」「生産性の向上」「コスト削減」
 「品質管理の改善」「リスク管理の強化」
 「チームワークの促進」など 
第3回
6/18(水)
14:00~17:00
(3時間)
●テーマ:
設備の導入/工場の原価と利益管理
●内容:
効果的な設備導入と体制づくり
設備導入体制と新規設備の投資計画について
※補助金・助成金でビジネスの成功率を高める
印刷工場の原価管理と見える化
原価管理と見える化は、何のためにするのか?
原価を見える化するしくみづくりと手法
工場が利益を増やす方法

第4回
6/25(水)
14:00~17:00
(3時間)
●テーマ:
DXと技術動向
●内容:
デジタル印刷の動向と効果的な運用
DXとAIで変わるビジネスの流れ
デジタルデータによる仕事の特徴と動向
多様化するデジタルデータ知識
デジタル印刷に欠かせない設計の重要性
デジタル印刷の種類とバリアブル印刷
第5回
7/2(水)
14:00~17:00
(3時間)
●テーマ:
リスクマネジメントと持続的な対策
●内容:
リスクマネジメントとは何か
多岐に渡るリスクと管理のアウトライン
注目すべきリスクとマネジメント
(情報セキュリティや労働安全衛生、災害対策計画、重要機密情報など)
持続的な工場マネジメントとBCP対策
第6回
7/9(水)
13:00~17:00
(4時間)
●テーマ:
工場改善の目標と実践計画づくり/人材マネジメント
●内容:
成果を上げる印刷工場の組織と目標発表
【発表内容】
1.個人目標(フレームワーク)
2.工場づくり目標(※顧客視点強化目標)

※カリキュラム、日程等は諸般の事情により変更となる場合がございます

 

対象

工場・各職場の管理者、リーダー、ISOの管理者、改善リーダーの方など

定員

10社(1枠2名まで可)  

最少催行社数

 3社6名

受講料(税込み)※1枠2名まで(複数枠お申込可能)

JAGAT会員 330,000円   一般 440,000円

パンフレットのダウンロードはこちら ※準備中 

 

 

「人材開発支援助成金」の対象になる可能性があります。

人材開発支援助成金とは?
厚生労働省が管轄している助成金制度で、労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を効果的に促進するため、事業主等が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。

厚生労働省のWebサイト:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

 

 

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令和5年度「人材開発支援助成金」は大幅に制度改定

 

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03-3384-3168までFAXにてお送りください。

 

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 お気軽にお問合せください。 
 公益社団法人日本印刷技術協会 研究・教育部 セミナー担当
 TEL:03-3384-3411/FAX:03-3384-3168
 E-mail:

 

 

 

印刷営業のプロフェッショナルになるためには

印刷営業の仕事は、クライアントのニーズを正確に把握することから始まる。単に印刷物を売るだけでなく、クライアントの事業目標や課題を深く理解した最適な提案をしなくてはらならない。時にはクライアントが明確に表現できていない要望を読み取り、具体的な形にする能力も必要だ。 続きを読む

動画エフェクトで一工夫

広がる動画ビジネス

動画ビジネスは、デジタル化やWebメディアの広がりと共に印刷会社での受注も増加の傾向であたり前になりつつある。受注拡大には、一工夫も必要のようだ。国内の動画コンテンツビジネス市場(株式会社矢野経済研究所プレスリリースより)は、主要5市場での2024年度を事業者売上高ベースで前年度比 108.9 %の 9,880 億円と推計した。近年、市場が好調な要因としては、SNS上に静止画像から動画コンテンツが増えたことや、副業や趣味を目的とした動画編集ソフトの需要が高まっていること、ライブ配信アプリの認知・利用が広がっていることなどが挙げられるという。拡大傾向の中では、これまで視聴機会が少なかった若年層以外の世代でも動画コンテンツを視聴する機会が増加。特に、50代〜60代の年齢層でコネクテッドテレビ(インターネット接続して動画視聴が可能なテレビ)などの新たなサービスを通じ、視聴機会が増加したことで市場が活発化したという。

特に成長分野のサービスを整理すれば、

1. 動画配信プラットフォーム

NetflixやAmazon Prime Video、Disney+など

2. 短編動画の人気

YouTubeショートやTikTok、Instagram

3. 動画広告市場

動画広告市場も拡大。2023年には6,253億円に。スマホやコネクテッドテレビ向けの広告需要が増加している。

4. ライブ配信

特にゲーム実況やイベントのライブストリーミングが人気。リアルタイムな交流が可能。

5. 新しい技術

AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などの新技術。入感のある体験が提供される。

一工夫するためのモーションデザイン

成長する動画ビジネスの中では、一工夫の動画コンテンツが必要になる。JAGATでは2024年5月に浅野桜(あさのさくら)氏(デザイナー・株式会社タガス代表取締役)を講師に招き、オンラインセミナー「デモで制作手法を学べる DTPスキルを活かしたモーションデザインの作り方」を開催した。

これは、印刷物のコンテンツを活かし、一工夫の動画を作成するものだ。講座では、印刷会社ではお馴染みのPhotoshop( フォトショップ )やIllustrator( イラストレーター )で作成した部品を動かして短いプロモーション動画を作る流れやWebサイトで活用するノウハウを解説した。使用するアプリケーションが同じAdobe( アドビ )のAfter Effects( アフターエフェクト )であることも面白い。Premiere Pro( プレミアプロ )と並び映像のデジタル合成やモーショングラフィックス制作、アニメーション制作における定番である。本格的に動画制作をステップアップする上でも使い勝手がよさそうだ。動画制作での効果と手法を理解する上では、意味を知ることが早道だ。モーションとは動きのことで、「エフェクト」は効果の意味である。つまり、動画に与える効果の種類を整理し理解すれば、制作やアプリケーションを使う上でもイメージが膨らみ効果的な作業に役立つ。

<主なエフェクト>※主な動画効果

【トランジション】

映像を切り替えるときに使う。動画と動画のつなぎ目をスムーズに印象的にする。

  • ディゾルブ

前のカットがフェードアウトするのに合わせて後のカットがフェードインする。「dissolve (溶ける)」という名前より

  • フェードイン・フェードアウト(ホワイトアウト/ブラックアウト)

画面を徐々に明るくして、次の映像につなげる。逆の動きでフェードアウト(ブラックアウト)は、画面を徐々に暗くする。

  • スライド・押し出し

前のカットの上に次のカットが重なる形で映像が切り替わる。

  • ワイプ

画面が拭き取られるように前のカットから次のカットへ切り替える。

【モーショングラフィックス】

写真やイラスト、文字などの素材に動きや音をつけるエフェクト。動画のオープニングを中心に使用される場合が多く、エフェクトの中で最も使用頻度が高いエフェクト。

  • キーフレーム

アニメーションやエフェクトの値を変更するために使用するもの。変更できる値には、スケール、位置、回転、アンカーポイント、不透明度などがある。

  • スピードランプ

動画の一部を早送りやスローモーションにするなど速度を変更する。動画編集ソフトごとに呼び名が異なる。「タイムリマップ」や「リタイミング」など

  • サウンドエフェクト

効果音のこと。笑い声や拍手などの人が発する音から雨や風などの自然の音まで様々。

  • カラーエフェクト

動画の色に関する効果。 「モノクロ」「カラースプラッシュ」。動画内の色を一つだけ選択し、他の部分はモノクロに見せるなど。

  • クロマキー合成

映像や画像内にある特定の色を透明にして切り抜く。テレビの天気予報や映画、ゲーム実況などで使用。

  • トランスフォーム

動画の素材を変形。タイトルやロゴの強調や場面転換時に挿入するコメントを目立たせるなど。

これらは、動画編集の経験のない人でも聞いたことがあるかもしれない。マイクロソフトoffice、パワーポイントのアニメーション機能にも搭載されているものも多い。一工夫のヒラメキは、身近にあることも多い。何を作りたいか、どんな風にどんな効果で作りたいのか、そのゴールをイメージすることが肝心である。イメージが広げれば、想像力を働かせ見渡せばひと手間かけるだけで高いコミュニケーション効果を生み出すアイデアが浮かぶことも増えるだろう。

(研究教育部 古谷芸文)

【オンライン】デザイン・レイアウトの基本知識

【オンライン】最新版!DTPアプリケーションの徹底活用

社員が自走する組織づくりと1on1ミーティング

社員の自走について

企業に必要とされるイノベーションや生産性向上は、印刷会社においても重要な課題で、人材においては、自走する社員が求められる。「社員の自走」とは、社員が自ら考え、行動し、課題を解決する能力を持つことを示す。上司からの指示を待つのではなく、自分でやるべきことを見つけて実行する姿勢を意味する。PHP人材開発のWebサイト(2024年2月13日更新)を参考に自走する社員がいる組織のメリットが上げられる。

<メリット>

  • 生産性の向上:社員が自発的に動くことで、業務の効率が上がる。
  • イノベーションの促進:新しいアイデアや改善策が生まれやすくなる。
  • マネジメントの負担軽減:上司が細かい指示を出す必要がなくなり、戦略的な業務に集中できる。

自走する社員を育成するためには重要なポイントがあるという。

<実施するポイント>

  • 理念やビジョンの共有:企業の方向性を明確にし、社員に浸透させる。
  • 支援型リーダーの育成:社員の自主性を引き出し、サポートするリーダーを育てる。
  • 心理的安全性の確保:社員が安心して意見を言える環境を整える。

社員の自走を促進するコミュニケーション

社員が自走するためには、マネジメントにおける社員各々のモチベーションと目標を持たせることが欠かせない。鍵の握るのは、コミュニケーションである。JAGATの管理者系研修でも受講者の困りごととして「部下とのコミュニケーション」についての事柄が意外に多い。2024年9月12日(木)に開講する「営業マネージャー養成講座」の第2回目では「部下の成長を促進させる1on1ミーティング」をテーマに泉谷史郎氏(キャリアコンサルタント、凸版印刷株式会社 情報コミュニケーション事業本部ビジネスプロデュースセンター第六営業本部長)により事例と演習を交えながら講座を行う。 LINEヤフー株式会社 が2012年から取り入れたことでも話題になった「1on1ミーティング」は効果的な手法のひとつかもしれない。講座では、その狙いについて、過去のマネジメントスタイルやリーダー像を鉄道に例えて「機関車」と称する。先頭の機関車が動力のない車両を強引に引っ張るものだ。対して、これからのマネジメントを「新幹線」に例えている。新幹線は、各車両が自走することで効率よく高速で走り快適な乗り心地を生み出すことができる。自走型の組織と自走できる社員の育成の必要性を表したものだ。講座では、部下を育てる上で必要となる関係づくりを学び、コミュニケーショントレーニングを行う。

1on1は、各社員の力を引き出し、業績アップを導くものだ。上司と部下が1対1で行う定期的なミーティングで概ね短時間の面談、頻繁に実施することが基本とされる。1on1の目的は、部下の成長のために行うものである。主役はあくまで部下、上司は聞き手に徹することが大切である。

1on1ミーティングを効果的に行うためにはポイントがある。

(目的と期待を共有する)

ミーティングの目的や期待を事前に部下と共有することで、双方が同じ方向を向いて話し合う。

(傾聴の姿勢を持つ)

上司は部下の話をしっかりと聞くことが重要。部下が話しやすい雰囲気を作り、積極的に質問を投げかけることで、深い対話を可能にする。

(定期的に実施する)

1on1ミーティングは一度きりではなく、短い時間でも定期的に行うことで信頼関係が築かれる。例えば、月に一度や隔週で行うことなど。

(フィードバックを具体的にする)

ポジティブなフィードバックだけでなく、改善点も具体的に伝えることが大切。具体的な事例を挙げて話すと、部下も理解しやすい。

(アクションプランを策定する)

ミーティングの最後には、次回までのアクションプランを明確にし、フォローアップを行うこと。成長をサポートしていく。

(記録を残す)

ミーティングの内容を記録し、いつでも見返せるようにしておく。次回のミーティングにも役立つ。

部下とのコミュニケーションスタイルの変化への柔軟な対応は益々重要である。1on1が話題になっている背景には、VUCAと称される時代や働き手の減少に加え、働き方の多様化などがある。 人材マネジメントは 、人材の確保と育成において益々各社員を尊重し、それぞれの心を大切にする必要がある。一方、その運用に難しさを感じている企業も多い。企業の中には、強烈なリーダーにより成長してきた事例も多い。大きな声を出す過去の成功体験や実績のあるリーダーこそ変化対応が難しいかもしれない。拘ることは、テクニックや体裁ではない。無駄な人材を抱える余裕のない中、満遍なく各社員を機能させ戦力化することである。生産性を高め自走する組織づくりには、各社員の心に触れ、やる気を高めることにより自走する社員を生み出すことだ。

(研究教育部 古谷芸文)

オンライン 印刷営業マネージャー養成講座2024

オンライン【2024年10月開講】秋の印刷入門

炎上する広告を防ぐ

広告は企業の製品やサービスを消費者に知らせ、購入やその他の行動を促すための重要な手段だ。しかし近年では広告が炎上するケースが増えてきた。ここでいう炎上とは広告が社会的に批判を浴び、大きな議論や非難を引き起こす現象を指す。炎上する広告は、企業にとって大きなリスクとなっている。
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職場のモチベーションアップと目標管理

社員のモチベーション管理と課題

印刷工場の改善活動が進まない大きな原因のひとつにリーダーシップや社員のやる気(モチベーション)という心の問題がある。社員のモチベーションを高めるために印刷会社でも、人事評価に目標管理を連動させて運用しているケースも少なくない。人事評価に目標管理を組み込むことで、公平かつ納得感のある人事評価を行うことが目的である。しかし、目標管理や人事評価の本来の意味や目的を正しく理解していないために、運用方法を間違え社員の主体性やモチベーションを奪う場合もある。リクルートソマネジメントリューションズのWeb版用語解説によれば、モチベーションとは、動機づけ、やる気という意味。何かを欲求して動かす(動かされる)ことで、目標(ターゲット)を認識し、それを獲得し実現するために、方向づけたり行動したりすることを示すとある。ビジネスでは「仕事への意欲」を指し、社員のモチベーションを引き出すことを「動機づけ」と呼ばれている。モチベーションに関する研究は、主に1950年代に広く行われ、現在でも有名な「マズローの欲求段階説」「マクレガーのX理論・Y理論」「ハーズバーグの動機づけ・衛生理論(二要因理論)」などが展開されている。一般的にモチベーションを上げるには、動機づけを大きく2つに分類できる。

<外発的動機づけ>

外発的動機とは「給料のため」「生活のため」など、外部から与えられた条件や特定の目的意識などによる意欲のことで、昇給や賞与、インセンティブ、社内表彰、抜擢など、報酬や名誉によってモチベーションを上げる施策がある。

<内発的動機づけ>

内発的動機とは「自身の成長」「おもしろみ」「夢の実現」など、個人の内面から起こる感情や発生する意欲のことになる。金銭や知名度アップなどではない「自らのやりがい」という意識がある。社員の多様な仕事への価値観や働き方を理解し、コミュニケーションや仕組みづくりにより目標を導くことが求められる。

モチベーションを上げる目標管理

本来の目標管理は、社員のモチベーションを上げるものだ。目標管理である「MBO」とはManagement by Objectives and Self controlの略で、目標管理制度のことを意味する(人事ポータルサイト【HRpro】用語集より)。個別またはグルーブごとに目標を設定し、それに対する達成度合いで評価を決める制度で、1954年にP.F.ドラッガーが自身の著書の中で提唱した組織マネジメントの概念とされる。過去に大ブームとなった小説“もしドラ”(「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」)でも注目され、組織貢献と自己成長の両方が達成できる「個人目標」を設定させ、その達成度で評価を行う人事制度として用いられていた。そもそも人事評価とは相反する部分もある。人事評価の指標は、企業の期待に対して、従業員の能力や業務遂行度、業績などを評価し、待遇・処遇に反映させる。従来の日本の企業では、年齢や勤続年数による人事評価が採用され、近年では、個人の働きぶりや能力を重視し、適切に評価することが主流になりつつある。

「目標管理」では、社員自らが設定した目標を、「主体的」に管理し、達成に向けて行動することが求められる。管理するポイントは、例えば、「組織目標との連動」「適切な目標設定」「取り組みの具体的性」「期間の設定」などをチェックし、進捗を見極める。社員は自己管理をしながら目標達成に向けて行動する。目標管理では、定期的に1on1や面談などにより、上司と部下との間で、進捗状況の共有し、目標を達成できるように適切なアドバイスなどのコミュニケーションが求められる。共にPDCAを行いながらゴールに向かって行動していくことが肝心だ。そうすることにより、現実的な達成感が得られ、モチベーション向上に繋がる。社員が目標を達成することは、組織全体の良い業績を生み出すことになる。

ドラッカーの提唱したMBOと日本に根付いたMBOとでは、大きな違いがあるという。目標管理は単なる人事評価とは異なる。また、経営陣によるトップダウンで成果を求めるものでもない。「評価の手法」ではなく、「マネジメントの手法」として提唱している。社員各々を尊重したもので民主的な考え方だ。目標づくりは、本来セルフコントロールの領分とされる。一人ひとりが目標を考え、そこに対してコミットし、コミットの結果を自分で振り返りながら達成に向かっていくことがポイントとさられる。去る6月~7月に開催された第4期印刷工場長養成講座でも多くの工場長が人材育成やコミュニケーションといった部下の管理に纏わる課題が関心を集めた。人材不足の昨今、社員の多様化する働き方や価値に対応し、モチベーションアップという単純な解のない課題解決は益々重要になっていく。

(研究教育部 古谷芸文)

オンライン 印刷営業マネージャー養成講座2024

オンライン  秋の印刷入門<2024年10月開講>

チーム営業マネジメントの必要性 -属人性を克服し、組織力を高める

印刷会社の営業活動は多岐に渡っている。営業担当者は技術革新が進むこの時代に、受注管理だけに留まらず新規顧客の開拓、既存顧客のフォローアップ、課題解決に向けた提案営業などで売上目標の達成と顧客満足を追求している。しかし多くの印刷会社では営業教育が不十分で、社員の属人的な能力に依存している現状がある。
続きを読む

印刷工場のリスクマネジメントと持続的な対策を考える

中小企業のリスクへの備えと現況

印刷工場を取り巻くリスクは、自然災害やIT化による情報漏洩など大きな影響を及ぼす事象がますます増えている。「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」(2024年※複数回答あり)株式会社帝国データバンクによると中小企業が「事業の継続が困難になると想定しているリスク」は「自然災害68.6%、情報セキュリティ上のリスク41.3%」に続き、「設備の故障39.7%」が上位を占めている。また、事業継続計画(BCP)の策定状況では、「策定している」企業の割合(以下、BCP 策定率)は19.8%となった。前回調査(2023 年 5 月)から 1.4 ポイント増加し、過去最高となったという。2024年7月3日に開催された第4期印刷工場長養成講座全6講座、第4回では、リスクマネジメントと持続的な対策について講座開催された。リスクマネジメントの定義は、組織全体で企業の障害リスクを管理していくことで予想される損失を回避、低減化を図る活動のことである。組織内で発生するリスクに対して個別に対応せずに体系化した「しくみ」を通じて対応する。目的は、企業として「事業を継続」していくことでBCPに行き着くという。今日は、明らかにリスクが増加し、取り囲まれている。印刷会社が直面するリスクも多岐にわたる。

例えば

  • 受注リスク: 受注が減少したり、キャンセルされたりするリスク
  • 品質リスク: 印刷品質不良によるクレームややり直しリスク
  • 納期リスク: 納期に間に合わないリスク
  • 情報漏洩リスク: 顧客情報や社内情報の漏洩リスク
  • 災害リスク: 地震、火災、洪水などの自然災害リスク
  • 法令遵守リスク: 法令違反による制裁リスク
  • 人材リスク: 従業員の離職や労災事故リスク
  • サイバーセキュリティリスク: ハッキングやランサムウェアによる被害リスクなど

これらのリスクは、印刷会社の経営に大きな損害を与え、場合によっては事業存続を脅かす可能性がある。

リスクマネジメント の施策とBCP

そこで、印刷会社はこれらのリスクを認識し、適切な対策を講じることが重要である。では、なぜ増えたのか。周知の通り、地球温暖化にみる環境や法令施行などに加えてインターネットの普及による情報革命は、大きくビジネス環境を変えた。今やリスクは致命的な損失を与える可能性が圧倒的に高くなっているのだ。また、2006年に改正された会社法では、会社法施行規則第100条では、体制構築することを求めている。

・損失の危険の管理に関する規定その他の体制(いわゆるリスクマネジメント体制)

・使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制(いわゆるコンプライアンス体制)

不祥事を起こした企業経営者が「知らなかった」「担当者の一存でやった」などの責任逃れが済まされない。経営者として職務不履行であることを法的に明確にしてある。

リスクマネジメントは、4つ施策から成り立つという。

①リスクを抽出し特定する

②リスクを分析する

③リスク対応の優先度を評価する

④リスク対策を立案し、実行する

改善活動の基本となるPDCAサイクルと同様だ。ISO規格では、ISO31000になる。2009年11月にリスクマネジメント手法のガイドラインとして発行されている。あくまでもガイドラインであり、認証を目的としたものではないことを再認識する必要がある。その考え方や手法を個々の組織の事情に応じて臨機応変に応用して利用するべきだという。リスクマネジメント対策は、まだまだ取り組む企業が比較的に少ない。これからの重要な施策だと考えられるが、一方で、印刷工場の対策は、これまでの改善活動とは別物で考える必要はない。例えば、ヒューマンエラー対策も含まれる。ヒヤリハットのデータを集め、インシデントレポートを集めるしくみをつくり、予防予知トレーニング(KYT)によって事故を軽減する取り組みはリスクを軽減する活動である。リスクマネジメントの目指す施策にBCPを含むことが考えられる。BCP(Business Continuity Plan)とは「事業継続計画」である。地震、台風、火災といった有事が発生した際、企業や団体が、事態にどう対処し、事業をどう復旧させるかなどの計画のことで事業を止めず、継続させることが目的となっている。昨今は、VUCA(ブーカ)の時代と呼ばれるように、予測できない変化が激しくなる一方で、さまざまなリスクが潜んでいるといわれる。 今一度自社のリスク発生後、事業継続するための施策の現状を確認したいところだ。

(研究・教育部 古谷芸文)

【オンライン】第2期 印刷機長養成講座

【2024年9月開講】印刷営業マネージャー養成講座2024

【オンライン】 生成AIで営業が楽になる!

印刷業界では人手不足が深刻な問題となっています。さらに印刷会社の営業・企画職は、多様な顧客ニーズへの対応、価格競争、短納期対応、新技術の導入、内部および外部とのコミュニケーション、市場変化への対応など、多岐にわたる課題を抱えています。これらの課題を解決するためには、生成AIを活用した業務の効率化や自動化が不可欠です。

・生成AIツールをどのように活用すれば良いのか?
・どのような効果が得られるか?
・何から始めればいいのか?

本セミナーでは営業・企画業務における生成AIツール「Perplexity※」の具体的な活用方法とその必要性について演習を交えながら、実践的に解説し、上記のお悩みを解決します。生成AIの導入は、印刷会社の生産性向上や労働力不足の解消につながります。生成AIツールを明日から使って、少人数でも高い業務成果を達成しましょう。

※ Perplexity ( https://www.perplexity.ai/ 基本無料)は、最先端の自然言語処理と機械学習技術を駆使した、革新的なAI搭載検索エンジンとチャットボットを提供するサービスです。演習に使用しますので講義前にアカウントの登録をお願いします。最初に英語表記のページが表示されますが右下のボタンより日本語表記が選択できます。


 

開催日時

2024年9月25日(水) 14:00~16:00

 

形式

オンライン  ※「Zoom」を使用します。必ず1人1台のPCをご用意ください。

 

カリキュラム

はじめに
営業・企画業務における生成AI活用のユースケース
実務で直ぐに使える生成AIツールのご紹介
実際に使ってみよう
①クレーム対応メールの作成
②市場調査
③顧客提案資料の骨子作成
まとめ

 

最少催行人数 

6名

 

受講対象

印刷会社、関連会社の営業・企画職。生成AIツールを業務に活用したい方
 

 

講師

 野間 康平 

   株式会社To22代表取締役

京都大学工学部卒業後、パナソニックに入社。新規事業部門にて、機械学習エンジニアからBizdevまで幅広く担当。その後、ボストン・コンサルティング・グループにて、M&A戦略、DX戦略、成長戦略や新規事業、構造改革等の立案/実行支援等の数多くのプロジェクトに従事。そして戦略コンサルティング及び生成AI関連サービスを展開するTo22. incを創業。To22においても事業開始2年目で数多くの大企業へのコンサルティングを実施し、プロジェクト全体をリードする。

 

参加費(税込)

JAGAT 会員 15,400 円 /一 般 20,900 円

※上記価格は、1名様の価格です。
 複数名でご視聴の際は、人数×受講料をお支払いください。

 

お申込み  

 Webからのお申込み

必要事項をご記入のうえ、お申込みください。

 

FAXでのお申込み  
annai-2
お申込書をプリントアウトし必要事項をご記入のうえ、
03-3384-3216
までFAXにてお送りください。

 

■ 参加費振込先
参加費は、下記口座に開催日の2日前までに振り込み願います。
なお、お申し込み後の取り消しはお受けできません。代理の方のご出席をお願いします。

口座名:シャ)ニホンインサツギジュツキョウカイ
口座番号:みずほ銀行中野支店(普)202430

 

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【内容に関して問い合わせ先】
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研究・教育部 セミナー担当 電話:03-3384-3411

【お申し込み及びお支払に関して】
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