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【クロスメディアキーワード】クラウドコンピューティング

パソコンにアプリケーションをインストールし、さらにデータについてもそのパソコンに保存している場合、アプリケーションの機能やデータの利用には、「そのパソコンが利用できる環境」に制約される。

クラウドコンピューティングの採用

クラウドコンピューティングとは、ネットワーク(インターネットを指すことが多い)の向こうを「雲(クラウド)」に見立て、これまでパソコンにインストールすることでアプリケーションにより提供されていた機能を「雲の向こう」からサービスとして享受するといった意味が語源となっている。
クラウドコンピューティングを採用し場合は、Webブラウザーによりアプリケーションの機能やデータをサービスとして提供しているサーバーに接続することで、利用できる環境が特定のパソコンになるといった制約がなくなる。さらにケータイやスマホ、タブレットなどパソコン以外の端末からの利用も可能になることがある。クラウドコンピューティングの採用により、データの共有も可能となり、アプリケーションやデータを利用する時間や場所に関する制約もなくなる。しかし、「ネットワークに接続しているサーバー上でデータを処理する」といった考え方は、クラウドコンピューティングに限られるものではない。
ASP(Application Service Provider)によるサービスや、あらゆるモノにコンピューターやIC チップなどが埋め込まれ、有線または無線による通信により常に相互に接続され、いつでもどこからでも、さまざまな情報やサービスを利用できる情報ネットワーク環境である「ユビキタスネットワーク」といった考え方もある。

クラウドコンピューティングの普及

クラウドコンピューティングが一般化した背景には、インターネットの普及や関連する技術の発展がある。ネットワークの利用に高額な費用を要し、機能面においても不便であった時期と比べ、今日ではその障壁が非常に小さなものとなった。
また、仮想化技術やグリッドコンピューティングを利用することで、実際に処理を行うさまざまなハードウェアやさまざまなソフトウェアを意識することなく、サービスを享受できるようになっている。
前述のとおり、クラウドコンピューティングを利用する場合、ハードウェアの購入やシステムの構築に伴う初期投資は、大きな削減を見込むことができ、「短期間だけの試用」も可能であるといった柔軟性も併せ持つ。一方、長期的な利用になることで、契約形態によっては、多くの費用を要するといった例も存在する。
クラウドコンピューティングによるサービスに大きく依存することで、サービスの終了や提供事業者の倒産などが、大きなリスクとなるという懸念もある。さらに、自身でコントロールできないネットワークやシステムの障害による影響を被る恐れもある。

クラウドコンピューティングの欠点

クラウドコンピューティングの欠点として、カスタマイズに対する柔軟性が低いといった意見がある。しかし、サービスの組み合わせにより改善できる可能性がある。また機密情報をインターネットに接続しているシステムに保存して利用することは、ハッキングの対象となるリスクもあり、さらに接続時には盗聴される可能性も否定できない。この点については、クラウドコンピューティングによるサービスを提供する事業者が最も留意するセキュリティー対策に左右されるが、実績のある事業者であれば相応の投資をしている可能性も高く、自身で不完全なセキュリティー対策をしている場合と比べ、高度なセキュリティーを得られるといった考え方もある。

関連用語

・マッシュアップ
「マッシュアップ」とは、「混ぜ合わせる」といった語源から、もとは「違う曲のボーカルと伴奏を融合させて新たな表現を試みる」といった音楽の手法を指す。さらに、複数の機能やコンテンツを融合し、新規にサービス化することについても「マッシュアップ」と呼ぶようになった。特に「Web 技術」においては、無償で提供された複数のAPI(Application Programming Interface)を組み合わせ、あたかも一つのサービスであるかのように機能させることを指す場合が多く見られ、「Web2.0」の特徴の一つとして挙げられていた。

・SaaS
SaaS(Software as a Service)は、アプリケーションソフトウェアをパッケージといった形態ではなく、ネットワークからアプリケーションソフトウェアの機能をサービスとして提供することを主に指している。導入に際しての敷居が低いことや、すぐに利用が開始できる点が代表的なメリットとして挙げられるが、使用中のトラブル対応もサポートしていることが多く、導入だけでなく運用に対しても優位性がある。

・SLA
SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証制度)では、サービスを提供する事業者と委託する事業者間で、内容と範囲、品質に対する水準を明確にし契約を行う。

JAGAT CS部
Jagat info 2016年4月号より転載

【クロスメディアキーワード】メディアとしてのブログ

個人の情報発信スタイルを支えるブログは、独自のジャーナリズムを実現し、メディアとして価値が認められている。

ブログの登場

ブログが普及する以前、個人がWeb コンテンツを公開する場合には、パソコンにインストールされているテキストエディターや専用アプリケーションを使用していた。インターネット上のアプリケーションサービスとして提供されるブログの登場で、個人が容易に占有的なコンテンツ展開を行えるようになった。
情報発信が容易となることで、文章表現能力やコンテンツ制作能力に優れたブロガーが商業的なメディアと同等の情報発信を行うことが可能となり、新聞や雑誌の購読率にも影響を与えるようになっている。ポータルサイトやコミュニティーサイトを運営する法人が、メディアとして価値のあるブログを集めブログ総合サイトとして運営することにより、ブログジャーナリズムの発展を後押しした。場所を問わず情報発信が可能なリアルタイム性の高い「Twitter」に代表されるマイクロブログも登場し、生活者の情報接触時間に大きな影響を与えている。

ブログサービスの種類

ブログサービスには、ブログ専用の有料サービスのほか、独自ドメインがないポータルサイトの無料サービス、レンタルサーバーにアプリケーションをインストールして使用するものなどがある。アプリケーションサービスとして提供されるブログの利用は、システムに関する特別な知識や技術が必要ない。コンテンツ制作では、利用できるデザインや機能は限定されるが、ワープロによる文書データ作成と同様で、テンプレートに従い文章や画像を配置することで完成させることが可能であり、多くの人々に利用されている。
一方、レンタルサーバーにインストールし利用するブログは、カスタマイズによりレイアウトやデザインの変更のほか、さまざまな機能を追加できる。デザインやプログラミング、システムに関する知識が必要になる。しかしCMS(Contents Management System)で構築されたWeb サイトと遜色ないサイト構築が可能であり、企業が事業活動における情報の受発信手段として利用することが多くなっている。

ブログの機能

「トラックバック」は、ブログの代表的な機能の一つで、別のブログにリンクを設置した際に、リンク先のブログ運営者に通知を行う仕組みである。発信している情報と関係のある他のブログと、連携や交流が可能になる。また、ブログで公開されている記事に対し、閲覧者が意見や感想を入力できる「コメント機能」も代表的なものである。「コメント機能」により、ブログは双方向性のあるコミュニケーションメディアとなる。コメント入力者の名前欄に、自身のブログURL やメールアドレスの掲載が可能であり、「誘導」や「情報収集」などできるなど、コメント入力者の利点もある。
有名なブログアプリケーションには、プラグインとしてさまざまな機能がサードパーティーとなる法人や個人から提供されており、短時間かつローコストで多機能なシステムを立ち上げることができる。

マイクロブログ

「Twitter」のような文字数に制限があるマイクロブログの登場で、個人の「気付き」や「感想」「事象」などを即時的に情報発信が可能となった。また、ケータイやスマホなどのモバイル端末の普及や通信環境の充実により、場所や時間を問わずに情報の受発信を行えるようになり、マイクロブログの普及に貢献した。
高度情報化社会の生活者は、さまざまな情報への接触時間が長くなる傾向があり、情報の受発信源であるマイクロブログは、メディアとしての価値が認められている。マイクロブログからコーポレートサイトやSNS への連携や誘導が可能なことから、話題性の高い情報がマイクロブログに投稿される傾向がある。放送局や新聞社、出版社などといったマ スメディアを運営する組織が、マイクロブログのアカウントを取得し、速報性のある情報配信を行っている。

ブログの問題点

ブログの活用は、「情報発信が容易である」「更新が容易である」「SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)対策も行える」などさまざまな利点がある一方で、いくつかの欠点もある。ブログにより記事を日々公開すると、トップページの最新記事は数件が掲載されるが、古い記事は掲載されない。したがって、閲覧者が過去の記事を読む可能性が徐々に低くなる傾向がある。過去の記事が「価値のある情報」であっても、専門的なカスタマイズを行わない限り、PV(Page View)数は伸びない。

ブログによる情報氾濫

ブログの登場により情報発信が容易になったが、「価値のある情報」が常に発信できるとは限らない。安易な情報発信は、信憑性や公平性を欠く可能性を秘めており、ブランドを傷つける恐れもある。誹謗中傷ともとれる情報発信を行ってしまったために、閲覧者の反感を高め、企業が謝罪する事例があった。また、株の取引市場に大きな影響を与え、株価が暴落する事例もある。さらに、著名人であると偽り、情報発信を行う事例も後を絶たない。
検索サイトの検索結果表示では、探している情報が見つけにくくなるといった問題も起きている。

適切な情報発信に向けて

企業が事業活動の一環でブログを活用するのであれば、自己満足的ともいえる安易な情報発信を避ける考えも必要である。コンテンツとして表現されていることが、すべてであると解釈する閲覧者を生むことも考えられ、個人や法人を問わず、意図しない「印象」をブログにより与えてしまう可能性もある。
「ブログ」で表現するコンテンツは、インターネット上にあるごく一部であり、表現する内容については、十分な検討をした上での公開が望まれる。

JAGAT CS部
Jagat info 2016年3月号より転載

【クロスメディアキーワード】ダイレクトメールの特性

「DM(Direct Mail)」は、販売促進の代表的な一つの手法である。個々の顧客に対し、直接的に情報を訴求できる媒体であり、固定客の維持には適しており、その特徴から活用方法はさまざまである。

ダイレクトメール

「DM」は目的に応じターゲット(対象者)を選定にすることにより、高い効果を期待できる。また、効果測定が可能であるといった利点があり、「DM」による告知を行ったプレゼントキャンペーンでは、申込者数がレスポンス率となり、「DM」の効果が測定できる。
送付先となるターゲットに合わせ情報をカスタマイズすることで、深い情報の発信が可能だが、ターゲット数と比例し費用も増加することから、到達度が犠牲になってしまう傾向がある。効果の指標となる「レスポンス率」を上げる方法を理解し、効果的な情報発信を行うために、マーケティングに関する知識やデータの分析方法の理解が必要になる。

認知と興味

一般的に「DM」では、消費行動のきっかけとなる生活者の「認知」「興味」を向上させるための情報を提供する。サンプルや割引クーポンなどを同梱することで、「DM」の受信者へ「認知」「興味」を刺激し、消費行動へと導く。したがって、「AIDA」や「AIDMA」などの生活者の消費行動モデルについても理解した上で、マーケティングの一環として「DM」の適切な企画を立案し、配信することが望まれる。

One to One DM

「One to One DM」は、ターゲットとなる顧客ごとの「嗜好」や「最新購買日」「累計購買回数」「累計購買金額」などの属性に合わせ、掲載する情報に変化を与え展開する「DM」である。「One to One DM」の実現には、顧客の分析が必要となる。
顧客に関する情報は、主に基本情報と購買データに分かれる。基本情報は、「年齢」や「性別」「住所」などといった属性により構成される。購買データは、「最新購買日」「累計購買回数」「累計購買金額」などの購買履歴により構成される。これらの情報を蓄積しているデータベースから、セグメント化(属性によって分類)されたデータを抽出し分析する。分析結果を基に、セグメントごとに対応した計画を策定し「DM」を展開することで、効果的な結果が期待できるようになる。
分析に用いるデータには、さまざまな行動履歴が含まれていることが望ましい。その理由は、さまざまな行動履歴により、セグメントに幅を持たせることができるようになるからである。

データマイニング

顧客に関するデータを解析し、項目ごとの相関関係や法則などを発見するためには、「データマイニング」に関する技術を利用することで、効率的かつ効果的な結果が期待できる。「データマイニング」は、データベースを「潜在的な顧客ニーズが眠る鉱山として捉え、この鉱山から採掘する(mining:マイニング)」という意味を持つ。
スーパーマーケットのPOS(Point Of Sales)データをデータマイニングすることにより、「ビールを買う顧客は、一緒に紙オムツを買うことが多い」「雨の日は肉の売り上げが良い」などのような、項目間の相関関係を発見することができる。通常では思いつかない仮説ができることも、データマイニングの特徴である。

ダイレクトマーケティング

ダイレクトマーケティングでは、見込顧客や既存顧客に対する個別のマーケティング施策により、「顧客の囲い込み」や「商品の販売」を拡大する。ダイレクトマーケティングでは、プロモーションの結果がターゲットのレスポンスといった観点から測定することが前提となる。したがって、顧客データに大きく依存する傾向がある。通信販売事業と深い関係性があり、さまざまなSP(Sales Promotion)メディアに支えられている。対象となる生活者に対し、単に情報を発信するだけではなく、必要な情報を選別し送付することで、期待する行動を促すことが目的となる。

カスタマーシェア

カスタマーシェアとは、顧客の一定期間における購買総額のうち、個別の商品にそれぞれどれだけ費用を投じたかを示す割合を指す。販売側にとっては、顧客の総購買金額の何パーセントを獲得したかを表す。
カスタマーシェアの最大化を考える場合に、顧客のライフサイクルにおける節目の需要を理解することで、さまざまな商品に対し応用が可能になる。「進学」「就職」「結婚」などの節目には、一般的に消費行動が連動している。「結婚」を機会に家具を購入するなどの行動は、その典型的な例といえる。また、「出産」により家族構成が変化するときにも、大きな消費機会が訪れる。このようなタイミングに合わせ、特定の顧客に対し継続的に「DM」による販売促進活動を展開することが、固定客の囲い込みにつながる。

JAGAT CS部
Jagat info 2016年2月号より転載

【クロスメディアキーワード】ロジカルシンキングとMECE

ロジカルシンキングとは、一貫しており筋が通っている考えや説明の仕方などを指す。

ゼロベース思考

環境変化の激しい現代では、1 年前の当たり前のことが今日に通用しないことがあり、前例の修正だけでは解決できない場合がある。そのため、過去の情報は白紙に戻して考えることが重要になる。ゼロベース思考は、ロジカルシンキングにおける思考のうち、「既成概念を取り払い、一から最善の答えを見つけ出す」といった考え方である。

フェルミ推定

フェルミ推定は、前提や推論の方法の違いにより結論に誤差が生じる可能性も指摘されているが、調査が困難な分野の想定顧客や市場規模について仮説を立てる上では有益であるとされている。統計資料が手元にない問題について、幾つかの手がかりを元として論理的に推論し、短時間で概算する手法である。

MECE

一貫性があり筋が通っている考え方や説明の仕方などは、「MECE(Mutually Exclusive and CollectiveExhaustive)により実現する。
「MECE」とは、マッキンゼー(McKinsey &Company)の提唱した物事を分解し構造化する概念であり、「モレなくダブりがない」を意味している。ロジカルシンキングの技術の中で、「MECE」は非常に重要な考え方となる。「MECE」の活用により、物事の全体像を正しく把握することができる。構造化した考え方に「モレ」がなければ、ロジカルシンキングにより導き出されたすべての要素に対して思考することが可能になる。さらに、分解されたそれぞれの要素に重複がないため、それぞれの分析が容易になる利点もある。解決が難しい大きな問題に対する際、小さな問題に分解することで、解決が容易になる。

構造化と切り口

「MECE」は、構造化する際の分解で非常に重要な役割を果たす概念である。「物事」を「MECE」により分解する際には、「切り口」が重要になる。通常は、対象となる一つの物事に対し、「切り口」は複数存在する。そのため、「目的」や「主題」に適した「切り口」を選定する必要がある。しかしながら、複数の「切り口」を混在させることで、「モレ」や「ダブり」が生じやすくなる。
また「モレ」や「ダブり」のほか、「MECE」により分解した要素に対する優先順位付けも重要になる。「切り口」の発見は容易ではないが、「グルーピング」を利用することで「切り口」が発見しやすくなる。「MECE」による代表的な「切り口」は、「相対する概念(「賛成」や「反対」、「A である」「A ではない」など)」「短期、中期、長期などといった尺度に対するいくつか区切り、物事の起点から終点といった順序による適度な区切り」「男性と女性、動物と植物など並列している物事による区切り」といったものを挙げることができる。しかしながら、これらの「切り口」に縛られることで先入観に陥ってしまうことや、本末転倒となる階層までの細分化にとらわれてしまうことに注意が必要になる。

ロジックツリーとピラミッドストラクチャー

「MECE」は、「ロジックツリー」や「ピラミッドストラクチャー」として表現されることがある。「ロジックツリー」と「ピラミッドストラクチャー」は、ツリー構造になっており並列するボックスが「MECE」になっていることなどから、よく似ている。
「ロジックツリー」は「トップボックス」として最終的に解決すべき命題を定義し下位の階層へ原因や手段などを展開する「トップダウンアプローチ」で考察される傾向が強く、「ピラミッドストラクチャー」は最終的な主張を頂点に置き下位の階層にその論拠を展開させる「ボトムアップアプローチ」により考察される。

フレームワーク

フレームワークとは、枠組みのことを指しロジカルシンキングでは、一般的に「MECE」によって分類され、さまざまな問題について考察する際の「切り口」となる。フレームワークの一つである「MECE」を活用することで、問題に対する表現や物事の分類などを行う際に、モレやダブリをなくし大きな視点で問題を捉えることができる。さらに、問題パターンに応じた定型的なフレームワークとすることで、思考の際に効率化が図れる。
フレームワーク活用の留意点は、情報を整理するだけでなく論理的に整合させるということが挙げられる。フレームワークは、情報を整理するためのツールであり、利用すること自体を目的化しないようにする。
留意点を踏まえることが、経営分析やマーケティング戦略策定などで、仮説の設定においてフレームワークが役立つ可能性を高める。

JAGAT CS部
Jagat info 2016年1月号より転載

【クロスメディアキーワード】成長戦略

企業のメディア戦略を策定するには、経営戦略について深く理解する必要がある。

競争戦略と成長戦略

経営戦略を検討する際、構成する基本的な戦略として、「成長戦略」と「競争戦略」がある。
「競争戦略」とは、対象となる市場を明確にしたうえで、有利な市場地位(ポジション)を確保するために立案する他社と異なった戦略を指す。
また「成長戦略」の立案では、対象とする市場の選択から始める。したがって「成長戦略」は「競争戦略」の前段階であると考えられる。

成長マトリックス

H.I. アンゾフの「成長マトリックス」では、製品と市場について、それぞれ既存と新規に分けマトリックスに配置し、それぞれに対応した戦略の概念を提唱している。

①市場浸透戦略
 既存製品を既存市場に追加投入し、シェア拡大を目指す。
②市場開拓戦略
 既存製品を新規市場に投入し、市場拡大を目指す。
③製品開発戦略
 新しい製品分野に参入し、既存市場に投入し、シェア拡大を目指す。
④多角化戦略
 新しい製品分野および市場に参入および投入し、市場拡大を目指す。
 新しい製品分野に参入し、新しい市場に新製品を投入する戦略は、製品開発と新規顧客獲得へ向けた取り組みを同時に行う必要がある。

多角化戦略の類型

「多角化戦略」の類型については、既存事業との関係性の深さにより、「関連型」と「無関連(非関連)型」に分類され、「市場」か「製品」との関連性により、「水平的多角化」と「垂直的多角化」に分類される。「水平的多角化」と「製品開発戦略」との差は、「製品開発戦略」が既存顧客を対象とすることに対し、「水平的多角化」は既存顧客が存在する市場と同一ではなく近似した顧客を対象とし、新しい製品分野に対し参入することを指す。

・水平的多角化
「水平的多角化」では、「スーパーがコンビニエンスストアも展開する」「レストランが喫茶店も展開する」などといった例を挙げることができる。メリットとしてこれまでのノウハウを生かすことができるが、対象とする市場に差がないことも想定され、成長性や収益性については大きな変化を期待しにくいといったデメリットもある。

・垂直的多角化
「垂直的多角化」は、既に参入している製品分野のプロセス(工程)に対し、「前段階」や「後段階」の市場へと新規の市場を開拓しようとする戦略である。「前段階」である上流へ展開する戦略を「川上統合」、「後段階」である下流へ展開する戦略を「川下統合」と呼ぶ。
「垂直的多角化」では、既存の製品や顧客の情報を生かし、新しい事業から得る情報やノウハウなどを生かすことができるため、既存事業との相乗効果が期待できる。その反面、既存の製品が陳腐化してしまった場合、多角化により展開した事業にも影響を与え、複数の事業が同時に衰退してしまう恐れがあり、「リスク分散」に弱い傾向がある。さらに「川下統合」の場合は、既存顧客が競合になるといった問題が存在する。

事業の関連性

多角化事業について「関連型」か「無関連型」の判別は、「既存の経営資源を生かせるか」といった基準による。
事業の「関連型」による多角化では、相乗効果を次の4 つに分類することができる。

①販売:流通チャネルやブランド展開
②生産:人材のほか資材や施設の共有
③投資:研究や開発に関する設備を含む類似
④管理:ノウハウをはじめとするさまざまな情報の整理

・無関連多角化
「無関連型多角化」は、「集約型多角化」「コングロマリット型多角化」などとも呼ばれることがある。相乗効果はあまり期待できず、事業の進展についてもリスクが高い傾向がある。しかしながら「垂直的多角化」と比較すると、既存の製品が陳腐化したとしても、新規事業との関連性が低いことから、その影響を受くいといったメリットもあり、「リスク分散」に強い傾向がある。
そのほか多角化には、既存事業の技術力や情報力、マーケティング力などを生かし、新規の市場や製品に展開するといった「集中的多角化」もある。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年12月号より転載

【クロスメディアキーワード】電子クーポン

「電子クーポン」とは、主にインターネット上で配布される「割引券」や「無料券」などの「クーポン」を指す。「電子クーポン」自体を印刷する方式や「スマホ(スマートフォン)」や「ケータイ(フィーチャーフォン)」などのモバイル端末を店頭で提示する方式などがある。現在、「電子クーポン」を発行する事業者と利用する生活者をつなぐさまざまなシステムが提供されている。

さまざまな電子クーポン

「メールマガジン」と連動した「電子クーポン」は、モバイル端末を活用したプロモーションで多く使用されている。
モバイル端末を利用した生活者が対象となるため、「利用履歴」の活用が見込めることから、マーケティング上でも有用なサービスであるとされる。また、「IC(Integrated Circuit)チップ」対応のモバイル端末を利用したソリューションやプロモーションも一般化している。施設や店舗などに設置された「リーダー/ライター」からデータを受信し、モバイル端末上の記憶メディアに保存する。モバイル端末には専用のアプリケーションが搭載されており、保存されたデータによる情報をリスト化し、表示や再生をすることができる。モバイル端末は受信したデータに含まれる「URL(Uniform Resource Locator)」を参照することでインターネットに接続し、「電子クーポン」や「電子チラシ」などのコンテンツを取得して表示する。
このような手法は典型的な「クロスメディア」であり、旧来の生活者とのコミュニケーション手法であるペーパーメディアの「DM(Direct Mail)」に対する代替や、補完が可能なサービスとして展開が広がっている。主な「電子クーポン」利用の「トリガー(きっかけ)」は、メールマガジンの場合がある。商品の認知度向上に向けたキャンペーンや、既存顧客のリピーター化を考慮した施策に利用されることがある。利用者は、モバイル端末向けの商品を販売する事業者のWeb サイトのほか、クーポン情報サイトやフリーペーパー、フリーマガジンなど、さまざまメディアから「電子クーポン」に関する情報を取得している。
「電子クーポン」はファストフードを提供する事業者で多く利用され、非常に短い接客時間でも取り扱うことができ、注文を受ける時間が短縮できると同時に正確性も高まるというメリットがある。

電子クーポンの問題点

移動体通信事業者による「電子クーポン」は、それぞれの仕様が異なるため、すべての生活者を対象とした互換性の高いサービス提供は困難である。特に多くの利用者を見込むことができる「スマホ」や「ケータイ」では、Web サーバーの負荷を減らすために、1 日当たりのデータのトラフィック総量やファイルサイズの制限をそれぞれ設けていることがある。したがってパソコン用とは異なり、画像データは数キロバイト程度にすることが望まれる。さらに「電子クーポン」の利用者の中には、毎週配信されるような電子メールによるプロモーションを歓迎する層と、必要なときにだけ「電子クーポン」を取得したいと考える一方的なプロモーションを歓迎しない層がある。

FeliCa

「FeliCa」は、ソニー開発した非接触IC カード技術方式である。「FeliCa チップ」を活用した「電子クーポン」サービスの代表例としては、NTT ドコモが提供する「スマホ」や「ケータイ」向けのクーポンサービスである「トルカ」がある。「FeliCa チップ」により実現される「おサイフケータイ」を活用することで、さまざまな利点をもたらしている。
生活者にとっては「アプリのインストールが不要」「メール添付や赤外線により、他の対応する端末へ容易に転送できる」などの利点があり、事業者にとっては「専用アプリの提供が不要」「データ作成が容易」「リーダー/ライターを安価に導入できる」などの利点がある。「トルカ」を「リーダー/ライター」から読み取る際には、データを「FeliCa チップ」に送信して端末を動作させる機能を利用し、「FeliCa チップ」「モバイル端末」「リーダー/ライター」の三者間通信機能を使用する。この通信方法では、「移動体通信網」や「無線LAN(Local Area Network)」による「パケット通信」を使用しないため、「リーダー/ライター」から送信される「トルカ」を受信する際の通信料は発生しない。

電子クーポンとモバイルアプリ

モバイル端末向けのアプリを活用することで、「割引券」や「無料券」など、さまざまな「電子クーポン」を配信することが可能である。「電子クーポン」には「公開日」や「終了日」などのタイマー設定ができる。モバイルアプリの大きな特徴である「プッシュ通知」に対応することで、ターゲットとする生活者に対し日時の詳細を設定し情報を配信することができる。

FeliCa 対応モバイルアプリ

おサイフケータイに標準搭載の「FeliCa チップ」を活用したモバイルアプリを開発し、モバイル端末を「電子クーポン」や「会員証」の代わりにできるようにした事例もある。「FeliCa チップ」へのデータ書き込み方式を工夫することで、利用者に直接影響する通信を抑える仕組みも取り入れられている。これにより何度でも「FeliCa チップ」への書き換えが可能となり、ユーザビリティーの向上にも寄与している。
利用者はアプリを立ち上げることで、いつでも最新の「電子クーポン」を受け取ることができる。「電子クーポン」を発行する事業者は、利用者の購買履歴に従い「電子クーポン」を発行することや、キャンペーンで無料の「電子クーポン」を発行するなど、柔軟な運用が可能になる。また、施設や店舗の「リーダー/ライター」と連携することで、「無料券」に代表されるベネフィットの高い「電子クーポン」に対する利用回数制限を実現しており、無用な客単価の低下を防ぐことができる。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年10月号より転載

【クロスメディアキーワード】インターネットメディアとネットワーク社会

インターネットは誰もが情報を受発信できる開かれたメディアだが、その反面、情報の「信頼性」「安全性」などについて問題が存在する。

Wiki と進歩的性善説

インターネットにおける「Web」の爆発的な発展は、「分散性」と「匿名性」に基づく受発信の容易さによるところが大きいと考えられる。この「分散性」により、さまざまな「コンテンツ」が世界中で受発信されてきたばかりでなく、一つの「コンテンツ」を共同制作できる環境としての「仕組み」も実現している。
「Wiki(ウィキ)」とは、Web ブラウザーから容易にWeb ページの制作が行える「CMS(Contents Management System)」の一つである。履歴管理や復元などの機能を搭載することで、誤りや悪意を持った編集による不測の損害を防ぎ、自由度の高い共同制作環境として普及している。
「Wiki」を利用しインターネット上で「百科事典」の共同編集を進める「Wikipedia」は、英語版では2015年8 月時点で500 万近い項目数に達している。多くの人々が参加し、修正を含む「編集」を繰り返すことで、正確性が向上するといった共同編集手法は、インターネット上における「集団の知恵」として注目される。
しかし、「匿名性」と「分散性」に支えられた「Wiki」による「百科事典」は、編集責任が明記されている「伝統的な百科事典」と比べ、「信頼性」の面では同様に扱うことができない。このように「信頼性」が高いと言えない情報は、利用者がその内容を判断し、注意深く利用しなければならない。
インターネットの活用による「いつでも、どこでも」情報の受発信ができる容易性は、コンテンツ運用において非常に有益な仕組みとなり、「Wikipedia」のような「百科事典」や「ソーシャルメディア」などの情報を共有する「Web サイト」の利用者が増加する理由の一つとなる。しかし、分散的な共同編集手法にも問題は存在する。それは、「更新される情報が次第に良くなるとは限らないこと」や、「制作者の意見が分かれると内容が確定的なものとならない」などが挙げられる。
また、一貫したコンテンツでなくなることで、管理者の不在につながり、「信頼性」の欠如につながる。ただし、一時的に問題のあるコンテンツが掲載されても、複数の制作者や利用者により、内容は緩やかには監視されている。コンテンツの内容は、複数の制作者や利用者からの指摘により是正される場合があり、さらに利用者の多い有益なコンテンツについては、専門的な知識を持つ人物の関与も期待できる。したがって、インターネット上の分散的な共同編集により制作されたコンテンツは、長期的に考えると「信頼性」の向上が期待できる情報源になるという、善意の支配が勝る「性善説」が語られる。

メディアの複合利用

ペーパーメディアにより発信された情報の概要や低解像度の画像をインターネット上に展開し、ペーパーメディアの利用を促す手法は、過去に多く試みられてきた。しかしながら、ペーパーメディアに利用者が必要としている情報が掲載されているか正確に判断することが難しいため、実際には利用に結び付かないことも多く、その効果検証も実施されなかった。現在は、インターネットメディアとペーパーメディアを横断的に利用する方法は、一般的となった。大手新聞社ではインターネットメディアにより購読者に対し、地方版や限定コンテンツの提供、特別チケットの購入権付与など、総合的な「付加価値」を提供している。また、非購読者にも楽しめるコンテンツの一部を用意し、さらに続きを閲覧しようとすると購読者以外は閲覧できないといった手法が採用されている。非購読者に対し「購読者になると付加価値も利用できる」と訴求することで、購読意識が高まることを期待できる。

QR コードの活用

ペーパーメディアからスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末へ誘導する目的の一つとして、「利用者の特定」を挙げることができる。
「URL」を入力する煩わしさを解消するため、「QRコード」の活用が一般的な手法となっている。「QRコード」は二次元コードの一種で、リーダーが読み取りやすいコードとして開発され、1994 年に発表された。それまでのバーコードは約20 桁程度の情報量だったが、「QR コード」の登場によりバーコードの約数十〜数百倍といった情報量の取り扱いが可能になった。「数字」「英字」「漢字」「ひらがな」「カタカナ」「記号」「バイナリー」「制御コード」など、さまざまなデータの取り扱いが可能であり、「数字」で最大7000 文字まで表現することができる。
「QR コード」の活用は、会員登録を目的とした利用者のメールアドレス取得のための「空メール」送信に応用することができる。Web サイトの閲覧者が会員であるか判断するために、会員のみが入手できるものに「QR コード」を印刷し、その「QR コード」を定期的に読み込ませる手法なども考えられる。
「パソコン」用Web ページの場合は、ユーザー名やメールアドレスなどを「QR コード」とし、リーダーで読み込むことで関連付けする方法もある。「QR コード」と記載する際には、「QR コードは(株)デンソーウェーブの登録商標です」と併せて記載する必要があるが、「QR コード」の画像のみを使用する場合には記載する必要がない。また、デンソーウェーブは「QR コード」画像の使用に関し、「一切請求しない」ことを公にしている。「QR コード」の普及は、複数ある二次元コードの中でも、一切請求しない」ことにより実現したと考えられている。

社会環境とメディア

社会環境の少子高齢化やグローバル化などにより、利用者ごとのメディア活用能力の差があるため、それぞれのメディア特性を生かし、「アクセシビリティー」や「ユーザービリティー」「ユニバーサルデザイン」などを採用した情報発信を心掛けることが望まれる。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年9月号より転載

【クロスメディアキーワード】ユビキタス

パロアルト研究所の技術主任であった「マーク・ワイザー」が1991年に提唱した「ユビキタスコンピューティング」における「ユビキタス」とは、利用者が存在や操作を意識することなく「いつでも、どこでも、誰でも」コンピューターを使用できる環境の総称を指す。

ユビキタスとコンピューター

「ユビキタスコンピューティング」での「コンピューター」は、あくまでも利用者が「意識せず」に使用できなければならない。1984 年、坂村健による「リアルタイムOS」仕様の策定を中心としたコンピューターのアーキテクチャーを構築するプロジェクトである「TRON(トロン)プロジェクト」では、最終目標に「どこでもコンピューター」といったコンセプトが掲げられていた。このコンセプトは「ユビキタス」の方向性と近似しており、その後の日本におけるユビキタスの展開にとって、大きな影響を与えたといわれている。
1990 年代の後半から、携帯電話が普及しインターネット利用も実現したことで、さまざまなサービスをどこでも享受できる環境が提供され始めた。
ユビキタスの実現により、小型化した情報端末がさまざまな製品などに組み込まれると考えられた。「スマートウォッチ」に代表されるコンピューターの機能を身にまとうウェアラブルコンピューターの実現や、さまざまな製品や資材に付与され情報を管理する「ICタグ」の普及のほか、インターネットにつながる端末数を大幅に増やす「IPv6」の定着などにより、「ヒト」と「ヒト」がつながり、「モノ」と「モノ」が結ばれる本格的なユビキタス社会が実現すると考えられており、それを支える機器類の互換性が不可欠となる。既に普及した「スマートフォン」や「タブレット」などの端末により、遠隔からの操作が可能な機器類も市場に展開されている。
技術の標準化は「WWW」の機構である「W3C」による「ユビキタスに関するワークショップ」の開設や、各国での標準化団体による「IC タグ」の規格化や標準化の促進などにより対応が進められている。
なお、総務省は2004 年に次世代「ICT 社会」の実現に向けた中期ビジョンである「u-Japan 政策」を発表しているが、「u-Japan 政策」の「u」には、「ユニバーサル」「ユニーク」などと共に「ユビキタス」の意味が込められている。

ユビキタスの分類

ユビキタスは大きく3 つに分類することができる。

1. ユビキタス・コンピューティング
コンピューターということを生活者に意識させず、コンピューター本体や周辺機器の区別もなく、人々の生活環境に溶け込んだ状態を指す。

2. ユビキタスネットワーク
コンピューター同士が自律的に連携、動作する状態で、監視カメラやセンサーネットワークなどがインターネットと接続し、有機的に動作するシステムもある。

3. ユビキタス社会
ユビキタスに関連する技術により、人間らしい生活を実現する社会を指す。

ユビキタス社会とクロスメディア

ユビキタス社会とは、ユビキタスコンピューティングが実現している社会環境を指し、「生活環境のあらゆる部分に情報通信環境が浸透し、利用者が意識することなく利用できる技術」が実現している社会を意味する。
ユビキタス社会では、「2 次元コード」や「IC タグ」「デジタル家電」など、主にインターネットに接続するさまざまな技術やメディアについて理解が必要となる。不可視であるデジタルデータがコンピューターやネットワークの境界を超えて移動するようになった利点がある一方、データ流出に起因する個人情報の漏えいや、ウィルスによるシステムの破壊などのリスクが大きくなる面もあり、システムの構築や利用については、セキュリティーに対する十分な対策が必要となる。
人々の生活に深く関わる以上、「IT」による「ユビキタス」を意識したサービスの提供者は、利便性の追求とともに社会的責任を自覚しなければならない。このような社会変化に適応するように、事業構造の改善や、メディアの新たな活用方法も模索されている。

ユビキタスに関連する代表的な技術や用語

・2 次元コード
従来のバーコードと比べ格納できる情報量が多く、表示するスペースを小さくできる。ペーパーメディアとWebサイトを連携するキャンペーンで多用されている。

・ICタグ
トレーサビリティーに関連する活用が進んでいるが、生産コストの圧縮が普及へ向けた課題とされている。リーダーの悪用によって個人情報を漏えいする恐れもあり、セキュリティーに対する注意も必要である。

・デジタル家電
インターネットに接続することで、サービスの更新や拡張ができる家電を指し、情報家電とも呼ばれる。クラッキングの対象となり得るため、セキュリティー対策も課題となる。

・コンテキスト
コンテキスト(Context)とは、(文章の)前後関係、文脈、または(ある事柄の)状況、背景などといった意味があり、用例により訳が異なる。

・クラッキング
クラッキングとは、悪意を持ったコンピューターネットワークへの不正な侵入や、コンピューターシステムの破壊や改ざんなどの行為を指す。ハッキングも同様の意味で使用されることがあるが、「悪意や害意を伴うハッキング」がクラッキングと呼ばれ、「ハッキング」と区別される。

・IoT
「IoT(Internet of Things)」とは、従来は主に「コンピューター」や「プリンター」などの「IT 関連機器」が接続されていたインターネットに対し、それ以外のさまざまな家電や家具などの「モノ」を接続する技術を指す。「モノ」に対しさまざまなセンサーを付与することで、インターネットを介した状態の監視や操作などにより、安全で快適な生活を実現しようとしている。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年8月号より転載

【クロスメディアキーワード】EC

「EC(Electronic Commerce:電子商取引)」は、インターネットをはじめとするさまざまなコンピューターネットワークを用いた「契約」や「決済」などといった取引形態を指す。

インターネットとEC

インターネット上で商取引を行うため、一般的には「EC サイト」を展開する。有形の商品だけではなくアプリケーションやドキュメントなどの無形のデジタルデータとして構成される商品は、在庫や配送などの障壁が少ない取り引きが可能になり、個人の参入が容易であり、国境を越えた直接取引も可能になる。「EC サイト」による顧客の獲得は、在庫保管や店員配置などのコストが削減でき、低価格での商品提供を実現することで、さらなる集客が期待できる。

EC の適用

「EC」を展開する事業者は、「小売業」「サービス業」「卸売業」などが中心だったが、「製造業」でも進展をみせている。また、「建設業」では「企業からの調達」、「製造業」では「事業者への販売」といった「B to B(Business to Business)」での利用もあり、また「B to C(Business to Consumer)」といった「生活者への販売」では、「金融業」「保険業」などでも利用されている。事業者がインターネットから販売を行う主な理由は、「商圏を伴わない新規顧客の獲得」や「取引に伴う間接業務の効率化」などが挙げられる。

EC の種類

「EC」の種類は、「B to B」「B to C」「C to C」の3つに大別できる。

・B to B
「B to B」は企業(事業者)間取引を指し、EC 市場の多くを占める。代表的な例として、「製造業と卸業」「卸業と小売業」などによる「受発注の電子化」や「電子調達」などが挙げられる。また、不特定多数の企業がインターネット上に設けられた取り引きの場に集い相手を探す「eマーケットプレイス」も存在する。

・B to C
「B to C」は事業者と生活者間の取引を指す。事業者からインターネットを通じ、生活者が製品やサービスを購入する「オンラインショッピング」を実現するサービスが代表例といえる。立地条件が課題となることがない「EC サイト」では、事業者の工夫による生活者視点のきめ細かいサービス展開を図ることで、発展を続ける可能性がある。代表的な例として、ネット通販(インターネットによる通信販売)を実現する「EC サイト(単体の店舗)」や、「EC サイト」の集積である「オンラインモール(電子モール、サイバーモールなど)」などがある。「オンラインモール」は、「複数の店舗をまたいだ検索が可能」「決済や配送の一括化が可能」などの利点を生活者に提供できる。また、各店舗の運営者(事業者)に対し共通の「決済システム」を提供することにより、「EC サイト」を独自に構築する場合と比べ、出店費用を抑制する利点を小売業者に提供できる。
また、「One To One マーケティング」「仲介業者の排除」などの特徴がある。生活者への直接販売を通し、事業者は個人の要求に合わせた製品やサービスのカスタマイズを行っている。さらに、複数の製品やサービスを関係づけ、より多くの情報と、選択肢を提示することで、高度な付加価値の提供が可能になった。一方、購入者から代金を預かり、商品の配達を確認した後に事業者に送金する「escrow(エスクロー)」サービスといった取り引きの安全性を保証する仲介サービスも普及している。

・C to C
「C to C」は、生活者間の取引を指す。代表的な例として、「ネットオークション」がある。また、オークションで利用される決済や物流などのサービスを提供する企業を「C to C事業者」と呼ぶ場合もある。

企業間電子商取引(B to B EC)

企業間電子商取引の一つである「電子調達」は、「部品」や「資材」の調達を目的に、商品に関連する「見積もり」や「受発注」、「請求」などの処理に対し、インターネットを利用して、時間や場所に影響を受けない取引を目指し、工数や費用の削減効果も見込む。企業全体を経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化や合理化を図るための手法や概念として、「ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)」がある。取引先との受発注、資材の調達や在庫管理、製品の配送など、総合的な管理がERP では求めらる。これを実現する管理手法に、「SCM(Supply Chain Management)」で、原材料調達から最終顧客まで、取引先を含む商品の流れを供給の連鎖として捉え、コンピューターシステムを活用し統合的に管理する。

市場の動向

個人や規模の小さい法人が小資本で展開できるネットビジネスは、参入障壁が低い。実存する店舗や倉庫などの資産も所有する事業者によるサービス展開を「ブリック&モルタル」と呼ぶ。また、企業が新たにインターネットを活用した事業に進出する際、すでに所有する店舗や流通基盤、顧客を基とし、インターネットの活用による販売手段の拡張をはじめとするサービスの補完を展開することを「クリック&モルタル」とも呼ぶ。一方、インターネット上のみから、事業が拡大するにつれて実店舗も展開し、紙のカタログや雑誌などを発行する傾向もある。
既存の事業とネットビジネスの融合は進み、それぞれをまたがった展開が一般的なものとなっている。さらに昨今では、「オムニチャネル」戦略として「EC サイト」と「実店舗」を複合的に活用し、あらゆる生活者との接点を連携し拡販するマーケティング戦略を採用する事業者も存在する。
今後は配送インフラの充実により、「越境EC」と呼ばれる国際的な取り引きが拡大すると予想されている。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年6月号より転載