電通が発表した「2015年日本の広告費」によると、近年のインターネット広告の進展・拡大は顕著となっており、現在ではテレビの次に大きな媒体と言える。
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【クロスメディアキーワード】インターネットメディア
インターネットは、アメリカの軍事産業や学術機関のためのネットワークとして運用されていた「ARPANET」が起源であり、その後、世界規模での情報通信を可能にしたネットワークである。
インターネットの登場と歴史
1990 年代に入り、「Web(WWW:World Wide Web)」といった概念が提唱され、ハイパーリンクを用いたネットワークシステムが公開された。Web 技術は、ハイパーテキストとハイパーリンクをその根本に持つ広大なネットワークシステムである。
商用利用が解禁されたインターネット上には数々のWebサイトが構築され、企業による「コーポレートサイト」や「EC(Electronic Commerce)サイト」、製品やサービスの「キャンペーンサイト」などに活用されるようになった。さらに、「NTT ドコモ」による「iモード」の登場によりケータイ(携帯電話)による接続が可能になり、活用範囲がさらに広くなった。
メディアとしてのWeb サイト
「Web 技術」の根本にある考え方は、閲覧するデバイス(機器)やその接続環境に左右されず公平に情報を取得できることである。したがって環境の相違で、必ずしも同じ体裁で情報が閲覧できるとは限らない。ペーパーメディアの多くは、規定のサイズ(A4 やB5など)で提供され、固定のレイアウトで提供される。Webコンテンツとして制作されたデータは、多くの場合、閲覧者の環境によりデザインやレイアウトが変化する。パソコンだけでなく、スマホ(スマートフォン)をはじめとしたさまざまなデバイスが相次いで登場し、その利用者は増加し続けている。
Web 技術
Web技術はインターネットの普及とともに、専門分野の利用者が多かったコンピューターネットワークによる通信を一般的なメディアとして変化させた。
また、「Web 技術」は、「個人サイト」を爆発的に増加させ、「コーポレートサイト」のほか「コミュニティーサイト」やアプリケーションソフトウェアをダウンロードできる「ポータルサイト」など「Web サイト」の拡大に貢献した。さらに、「チャット」や「通話」などさまざまな機能を生み出しながら、成長し続けている。
ポータルサイトの特徴
「ポータル(portal)」とは、「門」や「入口」などといった意味を持ち、インターネット上で無数に広がるWeb サイトへの入口となる「検索」「リンク」のほか、「事件」や「株価」などの「ニュース」をはじめとする情報提供を行っている。さらに、「BBS(Bulletin Board System:電子掲示板)」や「チャット」「Webメール」などといったサービスを提供することで莫大な利用者を獲得し、広告収入に支えられるビジネスモデルを実現した。
「グーグル(google)」をはじめとする検索エンジンを提供する事業者によるWeb サイトのほか、「マイクロソフト」などのWeb ブラウザーを提供する事業者が展開するWeb サイト、インターネットのプロバイダーである事業者によるWeb サイトは、ターゲット(対象者)を絞らないポータルサイトとして競争している。
ポータルサイトの持つ機能的な傾向は、ビジネスモデルを重視し大きな変化を繰り返すことで、個人ごとに掲載する情報を変化させる「パーソナライズ」も実現している。さらに中古車情報や住宅情報などを提供するほかのWeb サイトと提携することで、ポータルサイトとして幅広い情報の提供を行っている。
ポータルサイトの収益は、広告によるものが大半を占めるが、「オークション」や「ショッピング」などのような機能を提供することで「手数料収入」を得る事業者も存在する。また、インターネットの帯域が広くなったことで、「映画の予告」やテレビ放送向けの「CM(Commercial Message)」など、映像のストリーミング配信も利用されるようになった。
メールマガジンの特徴
「メールマガジン」とは、電子メールを利用することで登録者に定期的な情報配信を行うサービスであり、略して「メルマガ」とも呼ばれる。「バックナンバー(過去の記事)」の多くは、Web サイトに再掲載される。有料と無料のサービスがあり、ほとんどの無料サービスでは数行の広告が掲載される。
情報の発信者となる発行者は、企業や個人などさまざまであり、企業によるものでは商品情報やニュースリリース、特定分野についてのコラムなど、非常に多岐にわたる。メールマガジンは、文字だけで構成することが可能であり編集が容易であること、「まぐまぐ」や「メルマ!」などの配信システムを無料で提供する事業者が存在することなどにより、インターネットが普及する中で早期からメディアとして地位を確立した。
利用者は嗜好に合わせメールマガジンを検索と選択を行いメールアドレスを登録することで、無料でメールマガジンが配信されるようになる。配信システムについては無料で提供されていることが多く、メールマガジンに掲載される広告によりビジネスモデルが成立している。
メールマガジンの活用
企業により提供されるメールマガジンとしては、事前に受信を承諾した利用者に対し配信する「オプトイン」によるサービスが一般化している。企業による「メールマガジン」は、マーケティングの一つである「メールマーケティング」として活用されている。この場合、利用者の「年齢」「性別」「居住地」「趣味」「嗜好」をデータベースにより蓄積することで、さまざまな「コミュニケーション」を実現する機会をうかがう。
Web サイトを利用する顧客を待つだけではなく、新規顧客をリピート顧客として育成し囲い込む重要性が高まり、メールマガジンは注目された。さまざまな告知手段と比較した場合においても、メールマガジンによるリピート顧客への育成は期待できると評価されている。メールマガジンは顧客にとって有用な情報源となり、「読み物」としての楽しいものが好まれ、工夫次第で「商品案内」として製品やサービスに対する理解を促す。ただし受信されたメールマガジンがすべて読まれるわけではなく、受信者のほとんどは、「件名」や「目次」で判断するなど、「ペーパーメディア」による「DM(Direct Mail)」と近似した傾向がある。
JAGAT CS部
Jagat info 2015年5月号より転載
【クロスメディアキーワード】パーソナルメディアとインターネット
主に個人の利用者が、情報の「発信」や「記録」「編集」するために用いられるメディアとして、「パーソナルメディア」と呼ばれるものがある。
代表的なパーソナルメディア
「パーソナルメディア」は、「マスメディア」が情報を大量に「発信」できることと対比される傾向がある。これらのメディアを介した情報の受発信が、比較的匿名性の低い知り合い同士の間で起こるものが多い。「パーソナルネットワーク」「インターパーソナルネットワーク」などと呼ばれることもある。「パーソナルメディア」とは、「カメラ」「家庭用ビデオカメラ」「テープレコーダー」などのほか「ケータイ(フィーチャーフォン)」「スマホ(スマートフォン)」などの機器を指し、「アマチュア無線」や「電子メール」「チャット(Chat)」「ブログ(Blog)」「ソーシャルメディア」などの仕組みやサービスも「パーソナルメディア」と呼ぶことがある。パーソナルメディアによるコミュニケーションでは、特に「ケータイ」「スマホ」などのモバイル端末とインターネット接続による「電子メール」や「ソーシャルメディア」の普及が、生活者間の関係性の維持や発展に大きく貢献している。
インターネットとパーソナルメディア
旧来のコミュニケーション手段では、「手紙」で行われていたコミュニケーションが、「電子メール」や「ソーシャルメディア」などによりコミュニケーションの頻度を高め、さらに対面によるコミュニケーション機会の創出に貢献している。学校や職場を離れることで、必然的な対面によるコミュニケーションの機会を失った場合にも、パーソナルメディアの進化に伴う「電子メール」や「ソーシャルメディア」などの活用により、人々の関係性の継続や、広い人的ネットワークの構築や保持が可能になっている。
チャット
「チャット」は、「世間話」「おしゃべり」などの意味があり、パソコン通信の時代から存在し、複数の参加者が画面を共有し文字情報を会話的にアップロードできるサービスである。当初の「チャット」は、一つの画面で構成されるリアルタイムな「BBS(Bulletin Board System:電子掲示板)」のようなものであり、情報は参加者全員で共有される。インターネットが普及したことで、「IRC(Internet Relay Chat)」として運用されており、参加者は「入室する」といった「メタファー」を使用する。
専用アプリケーションを使用し参加する場合と、チャット機能のあるコンテンツにWeb ブラウザーから参加する場合がある。Web ブラウザーによるチャット利用を可能にするための「CGI(Common Gateway Interface)」によるプログラムや、「インスタントメッセンジャー(Instant Messenger)」などのアプリケーションを利用してシステムを構成する。「チャット」自体は断片的なコミュニケーション手段であるため、社会的なメディアとして大きな役割を期待することは難しい。代表的な「インスタントメッセンジャー」には、映像や音声にも対応している「Skype」や、「ケータイ」や「スマホ」「パソコン」に対応したテキストによる「チャット」機能を持つ「LINE」、「SNS(Social Networking Service)」の最大手である「フェイスブック(Facebook)」が展開する「Facebook Messenger」などが広く普及している。
ブログ
「ブログ」は「ウェブログ」とも呼ばれる。個人の生活者が新聞やテレビなどで配信されたニュースを紹介し、独自のコメントやコラムを加え、関連したニュースサイトやポータルサイトへのリンクを掲載しているブログサイトも存在する。
「ブログ」の内容に対する生活者の関心は、マスメディアに匹敵する可能性もあるが、マスメディアのニュースがなければ「ブログ」が活性化しないといった相補関係にあり、すでに確立された旧来のメディアにとって脅威にはなり難いが、個人による情報発信がメディアの一角を占めるようになっている。個人が開設したWeb サイトは、無責任であり内容の信頼性が欠けるといった傾向がある。これは「ブログ」にも当てはまるが、匿名による「BBS」との比較であれば、Webサイトの運営者を明示することで、運営者の意思表示として信憑性があると考えられる。
ソーシャルメディア
ソーシャルメディアは、インターネット上のコミュニケーションツールとして普及し、多くの会員(利用者)で形成されている。ソーシャルメディアによる情報の伝達力は、マスメディアに匹敵するほどになり、媒体価値を高く評価されるようになった。現在では、企業などのさまざまな組織が生活者とのコミュニケーションを図る上で、欠かせないメディアとなっている。
SNSの歴史
利用者を限定したコミュニティー型情報サービスは、1980 年代頃から存在していた。日本では「ケータイ」の普及に伴い、「ケータイ」向けの「SNS」も発展した。パソコン通信やインターネットの普及段階で多く利用されていた「BBS」といったオープンサービスでは、情報の発信者が意図しない非難や批判の殺到を意味する「炎上」につながる事象も存在する。「炎上」は、継続的に発展するコミュニケーションの妨げとなることも少なくなかった。その後、情報の発信者が「ブログ」のように他者からのレスポンス情報の公開をコントロールできる機能を実現することで、コンテンツとしての品質もコントロールできるようになった。当初の「ブログ」は、専門知識を有する人物の情報発信を中心に、アメリカで使用されていた。しかしながら日本では、個人的な日記を公開するために使用され、関係性の高い生活者同士のコミュニケーションツールとして急速に発達した。ブログは「インタラクティブ(双方向性)」を重視したコミュニケーションツールではなかったことから、閲覧者の管理もコントロールできるアプリケーションとして「SNS」が登場した。
コミュニティーサイト
ソーシャルメディアにより形成される「コミュニティーサイト」は、同様の物事に関心を持つ利用者が自発的に集まりコミュニケーションが行われるサービスである。基本的にサービス自体は無料で提供され、主に広告による収益で運用される。サービス提供者が用意したWeb コンテンツ生成機能を使用し、利用者はコンテンツを制作し公開する。
また、「カテゴリー」や「テーマ」により分類された「コミュニティー」で、利用者同士がコミュニケーションを図ることができる。「メーリングリスト」や「ファイル共有」などのグループウェアの機能と近いサービスを利用し、他者と情報の共有を図ることで、「口コミ」による情報展開が期待できる。
JAGAT CS部
Jagat info 2015年4月号より転載
【クロスメディアキーワード】マスメディアとコミュニケーション
「マスメディア(mass media)」は、「新聞社」「出版社」「放送局」など、特定の情報を発信する事業者から不特定多数の受信者へ向け、情報伝達手段となる「新聞」「雑誌」「ラジオ放送」「テレビ放送」などのメディア(媒体)を指す。また、マスメディアにより実現される情報の伝達(コミュニケーション)を「マスコミュニケーション」と呼ぶ。
マスメディアの歴史
15 世紀半ば、グーテンベルクによる活版印刷術の発明により、複数の受信者に対する情報の同時発信が可能になった。1660 年には世界初の日刊紙「ライプツィヒ新聞」が創刊され、その後ヨーロッパ各地で日刊新聞が創刊された。欧米や日本では、19 世紀の産業革命による都市人口の増加と、初等教育の普及による識字率の上昇に伴い、「書籍」や「新聞」の大衆化が進んだ。1895 年には、グリエルモ・マルコーニが電波による無線通信の実験に成功し、放送の手段が確立された。
ビジネスモデル
マスメディアの収入の源は、情報の発信を望む側から受け取る広告料と、受信者に「受信料」「購読料」などとして課金するものに大きく分類できる。
「新聞」や「雑誌」は双方に課金し、書籍は書籍料金として受信者からのみ徴収する。
放送事業者には、「新聞」や「雑誌」と異なり、さまざまな課金手段が存在する。「広告料」や「受信料」のほか、「政府交付金」を受ける放送事業者もある。また、「衛星放送」や「有線放送」の場合には、「ペイ・パー・ビュー方式」により視聴者に課金する事業者もある。
IT(Information Technology)とネットワークの発展により、マスメディアの収入源はインターネットを介し提供されるメディアと競合し、減少傾向にある。
主なマスメディア
主なマスメディアとして、電波によるメディアは、「テレビ放送」「ラジオ放送」などが挙げられる。また、紙によるメディアは、「新聞」「雑誌」「フリーペーパー」などが挙げられる。さらに、「映画」や「音楽」「出版(書籍)」全体をメディアに含む考え方もある。
デジタルメディアによる変化
「新聞」や「雑誌」「ラジオ放送」「テレビ放送」などのマスメディアは、社会的な地位を十分に示すことで発言力を持ち20 世紀に君臨していた。これらのマスメディアは、それぞれが独特の情報に関するシステムを編み出すことで、そのノウハウや影響力が資産となり、事業として大きく成長した。しかし、さまざまな情報がデジタル化され、メディア自体もデジタル化されることで、平準化された技術としてインターネットが頭角を現した。さらに、インターネットの通信速度が高速化し、マスメディアとの境界線がさらに弱まっている。
さまざまなメディアは、デジタル化の影響を受けることで、その役割や性質に変化が生まれ、特別なものとしてではなく、日常のコミュニケーション手段となる道具として扱われるようになっている。メディアのデジタル化によって企業にとってさまざまな事業と連携したメディアの登場や、コミュニティーの形成を重視したマーケティングが展開されるなど、従来のメディアが持つ世界とは異なる環境が、提供され続けることが考えられる。
パーソナル化するコミュニケーション
現代のテレビ放送では、個人視聴の傾向が強まっている。さらに、デジタル放送が普及することで、「見るだけのテレビ放送」だけでなく「利用するテレビ放送」や「参加するテレビ放送」「対話するテレビ放送」などと変化している。今後も、さまざまなデジタルに関する技術の発展により、マスメディアのインタラクティブ性(双方向性)が高まり、コンテンツの企画や制作が重要視されるようになると考えられる。
新しいメディア
1990 年代後半から普及したミドルメディアと呼ばれる「Web サイト」がマスメディアに近い影響力を持ち始めており、「ニュースサイト」「動画共有サイト」「BBS(Bulletin Board System:電子掲示板)」「ブログ」などをマスメディアとして捉える考え方もある。
口コミ情報
伝統的なマーケティングでは、生活者の商品購入が最終目的と考えた。アメリカのローランド・ホールが提唱した「AIDMA」や電通により提唱された「AISAS」などの生活者の消費行動モデルでは、なるべく多くの生活者に対し「注意」を促し、「関心」から「欲求」や「検索」へと意識が高まるような情報を発信する必要があるとされている。情報を発信し、多くの生活者を対象に「注意」を促すには、マスメディアの活用が効率的と考えられる。さらに、「関心」から「欲求」や「検索」へと意識を最大限に高めるため、専門家によるクリエイティブが重要視される「広告」が必要であった。
現在では、生活者によるインターネット上の口コミ情報が力を持ち、情報発信の方法として無視できない存在となった。生活者の行動は、マスメディアの情報と比べ、口コミ情報により強く影響を受ける傾向があるとされ、特に「映画」や「ファッション」などの嗜好性の強い商品にその傾向が強い。情報の受信者は主体性を持ち、メディアによるコミュニケーションをイニシアチブを持って行う。
マスメディアとクロスメディア
マスメディアとミドルメディアの組み合わせにより、生活者の商品の認知から始まるシナリオ(動線)を設計する必要がある。マスメディアではクリエイティブの専門家に依頼することで、インターネットへの情報発信と比べ、訴求力の高い「広告」配信の実現が期待できるが、宣伝色の強すぎる「ブログ」の展開は逆効果を誘引する可能性もある。インターネット上に存在する予測が難しい「発言力」の扱い方は、情報を発信したいと考える事業者にとって大きな課題となる。
JAGAT CS部
Jagat info 2015年3月号より転載
クロスメディアエキスパート認証試験、試験方式を一部改定
公益社団法人日本印刷技術協会(略称:JAGAT、本社:東京都杉並区、会長:塚田司郎)は、2016年10月28日、同協会クロスメディアエキスパート認証制度の試験方式を一部改定することを発表しました。
❏『クロスメディアエキスパート認証試験、試験方式を一部改定』
昨今、印刷メディアとWebやモバイル、SNSなどを効果的に利用するクロスメディアコミュニケーションが日常化しています。
しかし、従来の受注依存型の組織ではこのようなビジネスに柔軟に対応することは困難です。さまざまなメディアを活用する能力、論理的で説得性の高い提案能力が求められています。
そのような能力を磨くための手段として、同協会は2006年よりクロスメディアエキスパート認証試験を実施しています。累計で1,100人以上の方が合格しています。この試験は、デジタルメディア活用に必要な知識を問う学科試験と、実際に提案書を作成する記述試験から構成されています。
合格を目指して学習することで、デジタルメディア活用に必要な知識と提案能力を身に付けることが可能です。
このたび、より実践的でハイレベルな提案書を作成出来るよう、試験時間を変更することになりました。
従来の「学科試験(120分)、記述試験(120分)」を「学科試験(100分)、記述試験(140分)」 に変更します。
試験時間変更は、2017年2月26日(日)に実施する第23期試験より適用されます。
❏ 次回エキスパート認証試験の実施予定
次回の第23期クロスメディアエキスパート認証試験は、2017年2月26日(日)に実施します。
受験申請期間は2016年12月13日(火)~2017年1月25日(水)となっており、同サイトの申請フォームから申込むことができます。
認証試験は年2回、実施しており、次々回は2017年8月を予定しています。
公益社団法人日本印刷技術協会 公益社団法人日本印刷技術協会(Japan Association of Graphic Arts Technology:JAGAT)は、印刷に関する技術の開発・向上により、印刷および関連産業の発展、貢献を目的として1967年に創立しました。
【本書の内容・リリースに関するお問合せ先】
〒166-8539 東京都杉並区和田1-29-11
公益社団法人 日本印刷技術協会 広報担当まで
TEL 03-3384-3113 FAX 03-3384-3168
第22期クロスメディアエキスパート認証試験と出題意図
第22期クロスメディアエキスパート認証試験は、2016年8月21日(日)、東京・大阪を始めとした全国8ヶ所の会場にて実施した。126名(うち第1部学科試験免除者45名)の申請者があった。
【クロスメディアキーワード】メディアリテラシーとフィルタリング
現代のような高度情報化社会では、多くのメディアに接触する生活者にメディアリテラシーの向上が求められる。情報発信側にもメディアリテラシーへの理解が欠かせない。以前も取り上げたが、改めて解説する。
メディアリテラシー
メディアリテラシーとは、メディアを介した情報の受信者が、主体的に内容を読み解いた上でメディアを活用する能力を指す。リテラシーとは読み書きに関する能力を指すが、さまざまなメディアの持つ個別の様式にはメッセージ性があることから、マーシャル・マクルーハンは「メディアはメッセージである」とし、メディアリテラシーの重要性を喚起した。現在ではメディア特性を踏まえた情報に対する判断と活用が受信者に求められるため、メディアリテラシーの重要性が高まっている。メディアの多様化により、マスメディアだけでなくミドルメディア(インターネットメディア)やパーソナルメディアなど、さまざまなメディアから情報を取捨選択する能力が受信者には必要になる。
受信者は主体的かつ批判的にメディアに接触する能力が求められるが、発信者はさまざまなメディア特性を理解した上で情報を展開する能力が求められる。
情報の信憑性
テレビ放送の情報なら「正確」で「事実」という安易な判断は、メディアリテラシーに欠ける。発信された情報については、作成された意図を酌み取る必要がある。広告としての情報に関する表現は、利害関係や編集意図が介在することで、中立的な情報が必ずしも発信されているとは限らない。しかしながら、メディアリテラシー向上の目的は、広告を否定するものではない。広告の信憑性は、情報を正確に捉えるためにその役割やバイアス(偏り)を認識する必要がある。
メディア特性
情報技術の発展により、パソコンやスマホ(スマートフォン)、タブレットなどのさまざまな端末が生活者に普及した。テレビ放送や新聞、雑誌などの直感的に理解しやすいメディアと比べ、インターネットに接続することで閲覧できるさまざまなメディアは、そのメディアごとの特性を捉えることに困難が伴う。
ブログとSNS(Social Networking Service)のように、使用法が異なるものの機能は共通点が多い場合、技術やサービスの名称によりメディア特性を区分することに意味を持たないことがある。メディアが、すべて同質のメディアであるとは限らない。それぞれのメディアに対する情報の受発信の特徴を考察し、その役割と評価などの特性を熟考することが必要になる。
高度情報化社会
メディアリテラシーが向上することで、高度情報化社会を正確に捉え、充実したコミュニケーションを図るきっかけを得ることが期待できる。ビデオカメラとインターネットによる市民チャンネルのようなインターネット放送が一般化し、情報の受信者が発信者でもある社会が到来している。
フィルタリングサービス
メディアリテラシーが未発達の可能性がある未成年者を対象とし、健全な育成を目的とするフィルタリングサービスが提供されている。ケータイ(フィーチャーフォン)やスマホの未成年者による利用が拡大したことから、配信される情報への規制が求められている。インターネット上には、犯罪につながる情報や未成年者に有害な情報も存在する。したがって、それらのコンテンツやコミュニティーサイトに対する接続を制限する「フィルタリング」が実施されている。日本の「フィルタリング」は、総務省の要請により移動体通信事業者が実施するサービスである。「フィルタリング」は利用者ごとに、有効や無効の切り替えが可能で、一般的には、保護者が未成年者の利用する端末の設定について判断するので、移動体通信事業者は保護者に対し「フィルタリング」に関する意思の確認を行う。
フィルタリングの種類
「フィルタリング」には、「ホワイトリスト方式」と「ブラックリスト方式」の2 種類がある。
・ブラックリスト方式
特定のカテゴリーに属するWeb コンテンツやWebサイトをリスト化し、接続を制限する方式。一律でカテゴリーの分類を行うため、健全なWeb コンテンツやWebサイトに接続できない可能性もある。
・ホワイトリスト方式
一定の基準を満たしたWeb コンテンツやWeb サイトのみをリスト化し、リストに入っていない場合に接続を制限する方式。無数に存在するWeb コンテンツやWebサイトの極めて部分的なものとなるため、利便性が損なわれる傾向がある。
フィルタリングの課題
「フィルタリング」用のリストは、その提供事業者がWeb コンテンツやWeb サイトの情報を収集し、移動体通信事業者へ提供している。リストの内容は、詳細な解析が行われた上で分類されているとは限らない。正確な「フィルタリング」が行われない可能性が残っている。有用な情報を提供しているにも関わらず、接続が制限されてしまう事象もあり、コンテンツ提供事業者から問題視されることもある。
フィルタリングの動向
現在では、未成年者が利用する端末に対するフィルタリング使用の原則化が完了している。今後は更なる普及促進とともに、機能のカスタマイズ化といった画一的な現行モデルの改善策の検討も進められている。一部の地方自治体では、未成年者に対する「フィルタリング」を実質的に義務化する動きもある。
メディアリテラシーとフィルタリング
「フィルタリング」はメディアリテラシーの向上に対する阻害要因となる可能性もある。未成年者も情報の選別ができるように、メディアリテラシーの向上を考慮した取り組みが必要になる。
JAGAT CS部
Jagat info 2015年2月号より転載
2016年8月21日実施試験合格発表掲載予定日
第46期DTPエキスパート/第22期クロスメディアエキスパートの合格者の受験番号は、
2016年10月28日(金) 9:00
に掲載予定です。
発表まで今しばらくお待ちください。
JAGAT資格制度事務局
【クロスメディアキーワード】カウンセリングとコーチング
カウンセリング(Counseling)とは、相談者の抱える「問題」や「悩み」などに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる「相談援助」を指す。
一般的な定義
一般的に、カウンセリングを行う者を「カウンセラー(Counselor)」と呼び、カウンセリングを受ける者を「クライアント(Client)」「カウンセリー(Counselee)」などと呼ぶ。カウンセリングでは、「援助的対人間関係」「行動変容」「クライアントの自律性尊重」が重要視される。問題を抱えている「クライアント」に対し「カウンセラー」がコミュニケーションを重ねることで人間関係を形成し、「クライアント」自身の自律性により行動変容を促す。これがカウンセリングの概要となり、さまざまな理論や技法が提唱されている。
カウンセラーの条件
適切なメディアによるコミュニケーションを目指すメディアのコーディネートでは、情報の受発信を行う主体となる人物をカウンセリングする心構えが必要であり、その知識と能力は重要なものとなる。
カウンセラーには「自己一致」「共感的理解」「無条件の肯定的尊重(受容)」といった3 つの条件が必要であると、アメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャーズが提唱している。「自己一致」とは、クライアントの前で自身が感じていることや経験していることを否定したり歪めてはならないといった態度を指す。「共感的理解」では、クライアントの私的な世界を自身のことであるかのように感じ取る性質を指す。「無条件の肯定的尊重」では、「あいづち」といった単純な行為ではなく、相手の深層に対する受容である。
コーディネーターとして
メディアのコーディネーターは、コンサルティング能力が求められる。
コンサルティングには、カウンセリング能力のほか、自発的行動を促すコーチング能力や精神的な支えとなるメンタリング能力も必要となる。
カウンセリングの技法
カウンセリングの技法は、さまざまな理論に基づき、理論の種類分けが存在する。「精神分析療法」や「来談者中心療法」「ゲシュタルト療法」「論理療法」「行動療法」などが代表的な技法である。カウンセリングでは、クライアントの「考え」や「思い」が最も重要視される。クライアント自身も分析に参加し、理解し、認知する必要がある。しかしながら全ての問題に対し、カウンセリングにより十分な満足感が期待できる解決方法や解答があるわけではない。カウンセリングはさまざまな理論と技法を用いることで、クライアントの「安心感」や「安全感」を誘発するための一つのアプローチであると考えられる。
コーチングとカウンセリング
コーチングとは比較的新しい概念であり、主に一対一の状況で「モデリング」「問題解決」「カウンセリング」などにより、さまざまな技術を教えることを指す傾向がある。特定分野において能力の向上を期待する人物を対象として、コーチングは実施する。将来志向を強く持ち、目標を達成するための道筋を示し、クライアントが求める成果を実現するサポートを行う。
一方カウンセリングでは、問題を抱えているクライアントが対象の中心となる。やや治療的な意味合いもあることから、カウンセラーはパートナーと一致せず、過去から将来といった広範囲に及ぶ内面変化による行動変容を実現する。
コーチングの技術
コーチング技術は複数存在するが、「傾聴」「承認」「質問」「要約」「フィードバッグ」は代表的な技術となる。
・傾聴
特に相手との関係性を確立する段階で重要視される技術は、「傾聴」である。「傾聴」はカウンセリングでも使用されるが、クライアントの「話したいこと」や「伝えたいこと」を「受容的」かつ「共感的」な態度で聴く技術である。意識的に耳を傾ける状態で、偏見や先入観、固定観念を排除し、客観的な姿勢で聴く。さらに、「はげまし」や「うなずき」を加え積極的な姿勢で、クライアントのためにクライアントの立場を考慮して聴くことが重要である。「傾聴」は、「心構え」が必要になり、受容的な態度が最も重要視される。
・質問
コーチングは、「質問」によりクライアントが関心を持つように促す過程を指すこともあり、「質問」技術が重要視される。「質問」は「ポジティブな質問」や「ネガティブな質問」で構成される。「ポジティブな質問」とは、「正解が複数ある質問」や「将来のことに対する質問」「否定形のことばを含まない質問」であり、クライアントの能力を最大限に発揮できるよう使用され、コーチングの本質として重要視されている。
・要約
「要約」技術は、クライアントの抱える課題を整理する「チャンクダウン」を指す。「要約」により解決すべき「問題」と「原因」を明確にすることで、解決へ向かう大きなステップとなる。「要約」技術は、自身の解釈を押し付けず、クライアントが答えを持たせることが注意点となる。
・フィードバック
「フィードバック」とは、クライアントに対し「反応」や「感想」「意見」を率直に伝える技術である。自身の「考え」であることがクライアントに伝わることが大切であり、自身をマネジメントする技術も求められる。あくまでもクライアントの立場を重要視することが求められる。
JAGAT CS部
Jagat info 2015年1月号より転載
第46期DTPエキスパート認証試験/第22期クロスメディアエキスパート認証試験は、10月末の合格発表予定です。発表に先立ち、今期試験の傾向をまとめました。
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