2月の売上高は△10.3%。12月から3カ月連続のマイナス10%前後で横ばい。 続きを読む
「JAGAT info」カテゴリーアーカイブ
『JAGAT info』2021年5月号
特集
page2021 開催報告
色評価用LEDガイドライン プレセミナー〜日本印刷学会協力〜 大日本印刷株式会社 技術開発センター 主席研究員/工学博士 杉山 徹 氏 一般社団法人日本印刷学会 標準化委員会 笹沼 信篤 氏 公益社団法人日本印刷技術協会 専務理事 郡司 秀明
特別企画
page2021オンラインカンファレンス
デジタル時代のローカルマーケティング〜withコロナ時代のクロスメディア〜 株式会社ライドオンエクスプレス デジタルマーケティング部 グループマネージャー 正木 伸繁 氏
連載
■印刷界OUTLOOK 出版 研究調査部 藤井 建人
■Recreating the future―印刷の現在とこれから― 第4回 デジタル化による企業変革の推進 山口 実
■専務のつぶやき 2 ジャパン・アズ・ナンバーワンの頃 専務理事 郡司 秀明
■デジ印奏論 24 粉体トナーEPを活用していますか 星 輪太郎
■マーケティング情報 通販業界の最新動向 2020-2021 コロナ禍を追い風に成長と革新がさらに加速 研究調査部 藤井 建人
■技術トレンド グラフィックス デジタル印刷機活用のポイントはビジネスのデジタル化(DX) ~日印産連デジタルプレス推進協議会「印刷業界におけるデジタル印刷に関するアンケート調査」報告書より〜 研究調査部 花房 賢
■デザイン・トレンド 「ライゾマティクス_マルティプレックス」展 デジタル技術と表現と人との関係を示す 研究調査部 石島 暁子
■キーワード2021 LED(後編) 研究調査部 松永 寛和
■Education 入社2年目社員の印刷知識再確認と応用力アップを図る CS部 伊藤 禎昭
■デジタル印刷最前線 油性インクの採用で高速乾燥を実現し、新たな価値を提案する 理想科学工業株式会社
■ワールド・プリント・サテライト ZIPCONによるオンライン印刷価格指数 ほか 研究調査部 丹羽 朋子
■西部支社便り 人間はなぜ判断を誤るのか 西部支社長 大沢 昭博
■森 裕司のデジタル未来塾 110 意外と知られていない便利なアドビのツール
■エキスパート資格 DTPと印刷工程デジタル化の到達点 資格制度事務局 千葉 弘幸
■DTPエキスパートのための注目キーワード プロセスインキの濃度と色 研究調査部 千葉 弘幸
■クロスメディアエキスパート試験でも役立つ課題解決入門 リモート営業時代のコミュニケーション手法 影山 史枝
■ニュースラウンジ ギンザ・グラフィック・ギャラリー第382回企画展「TDC 2021」開催 ほか
■印刷経営ウォッチング
■ニューメンバー・消息
■JAGAT事業のご案内 『みんなの印刷入門』のご案内/オンラインセミナー「新聞界・フリーペーパーの動向と事例2021」開催のご案内/JAGAT印刷総合研究会のご案内/入社2年目・印刷基礎の4講座開催のご案内/『印刷経営動向調査2020』のご案内/『新版 DTPベーシックガイダンス』のご案内/図書のご案内
2021年5月15日発行 A4判64ページ
多方式のテキスタイルプリンティングを武器にデジタル展開を図るパイオニア
JAGAT info 2月号ではテキスタイル印刷でデジタル展開を進める堀江織物株式会社の事例を紹介した。 今回はその一部を抜粋して紹介する。
堀江織物の成り立ち
堀江織物は愛知県北西部の一宮市に位置している。染色業は水の豊かな土地に集積してきた歴史があり、一宮市にも木曽川・長良川・揖斐川の木曽三川が流れている。これら尾州エリアの河川は尾張工業用水として整備されており、かつては染色業専用の排水設備も作られるなど、地域の繊維業を支えていた。
堀江織物は元々撚糸業を営んでいたが、1950 年には合繊維物製造業に進出。しかし、アパレル関係の売り場に中国製品が進出してきたことで一度は廃業を経験することになった。
しかし、廃業の翌年、1975 年のぼり旗や紅白幕の印刷に参入。1988 年にいち早くオートスクリーン捺染機の4色機を導入し、機械化・効率化に力を入れていくことになった。捺染業の世界では、どのような技術が使われているのか。今後の課題や展開をどのように考えているのか。堀江織物株式会社の取締役マーケティング部部長であり、家業に入る前は広告代理店に勤め、伝統的な染物に留まらない発想を持つ堀江賢司氏にお話を伺った。
複数の印刷方式が生んだ機動力
紙と同じようにテキスタイルにおいても、印刷する対象や用途によって印刷方式を使い分けていく必要がある。では、堀江織物は、どのようにさまざまな印刷方式を使いこなしてきたのだろうか。のぼり旗製造業に参入した同社が最初に導入したのが、紙の印刷で言うところのオフセット印刷にあたるオートスクリーン捺染機であった。インクは主力製品がのぼりであるため、顔料インクを使用している。
現在の堀江織物では、オートスクリーン捺染機は6色機と8 色機が置かれている。機械のスケール感は、輪転機をイメージするとかなり近い。実際に機械を見るとイメージしやすいが、ロールに巻かれた布をセットし、巻き取りながら染色していく。印刷が終わった布はそのまま乾燥部へと移動していく。なお、堀江織物では特色を自社で作成している。グラデーションなどは苦手だが、コーポレートカラーの再現などは得意としており、発色の良さも手伝って現在も主力印刷システムとして活躍している。
堀江織物がインクジェットプリンターを初めて導入したのは2000 年である。当時の主要な取引先にはパチンコ関係が多かった。曜日ごとに催し物が変わり、それに合わせてのぼりも切り替えるため、多種類の注文が入ったという。2010 年にはインクジェット工場を増築。その2 年後には工場を移転し、設備増強を行った。現在ではダイレクト印刷機が10 台と、昇華転写印刷機が15 台稼働している。近年では、昇華転写印刷の品質を生かして、アニメや芸能人のグッズなども作成している。
ラテックスインクプリンターを導入したのは2014年と、比較的最近である。堀江織物ではシルクスクリーンやインクジェットプリントはポリエステルに絞っていたが、塩ビ系のターポリンのニーズもあり、当初は溶剤プリンターを導入していた。だが、ラテックスインクプリンターを導入したことで、塩ビ系以外のさまざまな素材への印刷が可能になった。アイデア次第で気の利いた商品を作れるのが利点である。
また、堀江織物では、比較的小型の機械を使い、DTG(Direct-To-Garment)も行っている。これは、無地のT シャツなどすでに縫製が済んでいるものに印刷を施すというものだ。今後、世界的にデザインの細分化や在庫レスなどの動きが進むことでデジタル印刷の割合は増えると考えられており、堀江織物でも投資を続けてきた分野である。そういった準備のかいもあり、コロナ禍においてはオンデマンドのオリジナルT シャツプリントが一気に伸びた。インクジェット印刷でも、急きょ製作した布マスクが大きな売り上げを生んだそうだ。自由に印刷方式を選べることが、商品展開の機動力を生んでいる。堀江織物では昇華転写印刷やダイレクト印刷を含め、売り上げの約50%をデジタル印刷で作っている。同社はこの動きをさらに加速させ、T シャツをはじめとしたさまざまな製品をオンデマンドで製造する新工場を、本社前に建築中である。
印刷会社のテキスタイル導入
堀江氏いわく、最近、紙の印刷会社がテキスタイル印刷に興味を持ち、相談を持ち掛けてくることが増えているという。その際には、ラテックスやUV であれば可能ではないかと勧めるそうだ。求められる設備投資や技術が比較的少なく、印刷対象も自由度が利く分、ノベルティ的な小物やDTG にも適したラテックスやUV が、投資としては成功しやすいのではないかとのことだ。
ビジネスモデルとして考えられるのは、販促企画を一括して受注した際の+ αとしてテキスタイルを導入するというパターンである。テキスタイルの業者からすると、印刷会社の多くが校正刷りのやり取りや納品でラストワンマイルを握っている点はうらやましく見えるそうである。
もう一つ考えられるのが、テキスタイルの印刷会社とアライアンスを組むという方法である。発注時に紙の販促物と布の販促物を同時に頼めれば、顧客としても利便性が高い。実際、堀江織物では、直接間接をまとめると、印刷会社からの外注は売り上げの大きな割合を占めるそうだ。
印刷媒体を超えたウェブ連携へ
紙と布の印刷会社の境界線は、デジタル印刷によるスキルレス化やIT の連携により、これまでより薄くなっている。堀江織物も変化を体現している会社の一つである。
堀江氏は2013年に株式会社OpenFactoryを設立した。OpenFactoryは現在、製造工場1社だけではまかないにくい個別製造の発注プラットフォームを作るべく紙の印刷会社とも協力してデジタルプリントのプラットフォーム「Printio」というサービスを立ち上げている。これは、ユーザーと工場とを仲介する小ロット印刷のBtoB サービスである。ユーザーがウェブサイトやバックオフィスなどでPrintio に発注すると、内容に合わせてPrintio が適切な工場に注文を行い、必要な個数が生産、納品されるという仕組みを目指している。
Printio が構築しようとしているビジネスモデルについては、「page2021」のオンラインカンファレンスにて2 月22 日開催のセッション「デジタル印刷で切り開く新規ビジネス」で詳細に語られる予定だ。
テキスタイルの印刷では、紙とはまた違った技術が使われているが、適切な印刷方式を選ぶことが事業の幅を持たせ、会社を強くしていく点では同じである。堀江織物も積極的に新しい方式や技術に挑戦し、経営を前進させてきた。デジタル印刷機の活用にも先進的に取り組んでおり、デジタルの強みを生かす事業を構築するため、紙の印刷会社とも協力しながらオンデマンドのWeb to Printを強化しようとしている。
(研究調査部 松永 寛和)
適切な基準を設定し、適切に評価する 〜『JAGAT info』2021年5月号のご案内
日常生活において、例えば朝焼けや夕焼けのときには周囲一面が黄色く、あるいは赤く染まって見えるし、日没後のブルーモーメントでは辺り一面が青や藍色に沈んで見える。では、そのときに見たリンゴの色と、日中の太陽光の下で見るリンゴの色は、果たして同じ「赤」であろうか。 続きを読む
『JAGAT info』2021年4月号
特集
page2021 開催報告
オープニングセッション 「コロナで変化した世の中の新常識について語り、対策を考える」 株式会社マーケティングサイエンスラボ 代表取締役・所長 本間 充 氏 公益社団法人日本印刷技術協会 専務理事 郡司 秀明
特別企画
印刷ビジネスの動向と展望 2020-2021―with/afterコロナ時代を考える―
公益社団法人日本印刷技術協会 研究調査部長 主幹研究員 藤井 建人
■巻頭言 専務理事 郡司 秀明
連載
■印刷界OUTLOOK 広告市場 研究調査部 藤井 建人
■マーケティング・ナウ 第3回 デジタル×紙×マーケティングを実践してみよう 本間 充
■専務のつぶやき 1 永久なんてものなどない 専務理事 郡司 秀明
■デジ印奏論 23 デジタル印刷に関する勘違い? 星 輪太郎
■マーケティング情報 アメリカの印刷需要と日米比較の試み 「2020年度印刷産業経営力調査」へのお誘い 研究調査部 藤井 建人
■技術トレンド グラフィックス RFIDの活用による業務改善と付加価値創出 研究調査部 花房 賢
■デザイン・トレンド 2020年度東京ビジネスデザインアワード 新規ビジネスと企業価値、二つの方向をデザインする 研究調査部 石島 暁子
■キーワード2021 LED(前編) 研究調査部 松永 寛和
■Education 印刷会社のQCサークル活動 教えることで理解が深まり、社員の主体性を育てる CS部 古谷 芸文
■デジタル印刷最前線 インクジェットロール機の生産性を最大化する発注方式を開拓 株式会社廣済堂
■西部支社便り フリーランスを後押しするスキルシェア市場 西部支社長 大沢 昭博
■ワールド・プリント・サテライト Canvaがモック制作と画像修正AIスタートアップ企業を買収 ほか 研究調査部 丹羽 朋子
■page2021オンラインを終えて分かったこと page2021オンライン詳細報告 CS部 堀 雄亮
■森 裕司のデジタル未来塾 109 クラウドを活用していこう!
■エキスパート資格 クラウドサービスの活用と業務の最適化は進む 資格制度事務局 丹羽 朋子
■DTPエキスパートのための注目キーワード ページレイアウトソフトの機能と役割 研究調査部 千葉 弘幸
■クロスメディアエキスパート試験でも役立つ課題解決入門 フードデリバリーサービス 市場拡大と生活者の変化 影山 史枝
■ニュースラウンジ 東洋美術印刷 リンテックサインシステムとコラボレーションし、アートギャラリー「ii-Crossing」をオープン ほか
■印刷経営ウォッチング
■ニューメンバー・消息
■JAGAT事業のご案内 『みんなの印刷入門』のご案内/『新版DTPベーシックガイダンス』のご案内/JAGAT印刷総合研究会のご案内/図書のご案内/『印刷経営動向調査2020』のご案内/印刷営業20日間集中ゼミのご案内/よくわかる印刷技術・基本コースのご案内/印刷業のための新入社員コースのご案内
2021年4月15日発行 A4判68ページ
【マスター郡司のキーワード解説2021】エコーチェンバー
今回は「エコーチェンバー」について考える。 続きを読む
印刷業定点調査 各地の声(2021年3月度)
1月の売上高は△8.8%。再度の緊急事態宣言が発出されてマイナス幅は12月(△9.5%)よりやや縮小した。5月に未曾有の落ち込みを記録して以降、回復傾向にはあるものの、この3カ月間は△8%前後で推移している。
続きを読む
「リセットする」ためのヒントを得るには
2021年度も始まり、JAGATでも新入社員向けの講座が連日のように開催されている。昨年、コロナ禍にあっても情報発信を続けるべく、オンラインへの取り組みを続けてきた“成果”というべきか、今年度の新入社員向けセミナーには、従来型の会場でのリアル受講または昨年より急速に普及したオンライン受講とを選択できるものも用意している。機材をはじめ、配信などのノウハウに関わる部分も全てJAGAT側で準備しているのだが、少なくともコロナ禍の前、一昨年の春にはこのような運営体制になるとは思いもしなかったし、緊急事態宣言下で身動きの取れない状態であった昨年春においても、まさかリアル&オンラインセミナーを自分たちで設営できるスキルがこの1年間で蓄積されていくことになるとは、想像できなかった。
想像できないといえば、例えば「with/afterコロナの時代なので、今まで描いてきた未来をいったんリセットしよう」と、その必要性が頭ではなんとなく分かっていても、それをいざ始めてみようとすると、具体的に何から手を付ければ良いのか分からないという読者の方もおられよう。3カ月後、半年後、1年後の自らの姿を想像することが、この不確実な状況下では以前よりもさらに難しくなっている。
では、これからの時代を生きていくためのヒントを得るには、何が必要なのだろうか。おそらくそれは、さまざまな情報をえり好みせずに吸収していくことであろう。そこで注意すべきは、「さまざまな」である。印刷業界のみならず、隣接する関連産業、あるいは一見すると全く関係のなさそうな業界の動向に関しても、無駄かもしれないと思いつつも定期的に知識・知見をアップデートしていくこと。JAGATでは、その支援していきたいと考えている。
さて、そのヒントが詰まった『JAGAT info』最新号の内容を簡単にご紹介しよう。詳細な内容は誌面にてじっくりとご覧いただきたい。また、同誌のほかに、印刷総合研究会のリーフレットも同梱して会員企業の皆様にお届けしている。こちらもぜひ、参加をご検討いただけると幸いである。
●特集 page2021開催報告 オープニングセッション
「コロナで変化した世の中の新常識について語り、対策を考える」
株式会社マーケティングサイエンスラボ代表取締役・所長 本間充氏
公益社団法人日本印刷技術協会専務理事 郡司秀明
page2021のテーマ「リセット・ザ・フューチャー」には、with/afterコロナの時代は従来思い描いていた未来をいったんリセットして、新たな未来や価値を創出していこうという意味が含まれている。コロナ禍で価値が多様化しており、だからこそ紙の印刷物ならではの良さを再定義するべきであると、マーケティングが専門の本間氏が分かりやすく具体的な事例を交えながら講演したpage2021オンラインカンファレンスでの議論の要旨を収録する。
そして、それを受けて繰り広げられた郡司専務理事とのディスカッションのエッセンスも掲載。さまざまなメディアが変革期を迎えている今日、印刷メディアや印刷物に求められているものは何なのか、議論を提起している。
●特別企画 印刷ビジネスの動向と展望 2020-2021
-with/afterコロナ時代を考える-
昨年一年間を振り返ると、コロナに始まりコロナに終わったと評することができるだろう。2021年も、不透明な状況が当面続くと推測される。だからこそ、これからのことを考える際に、指標を基に各種情勢を確認しておくことは決して無駄ではあるまい。
そこで、去る1月に開催された印刷総合研究会における、恒例のJAGAT研究調査部長による昨年の総括と今年の予測を報告したセミナーの要旨を収録している。印刷会社が「負けない戦略」を取るためのヒントを、具体的な数値や事例とともに考えていく。
(『JAGAT info』編集部)
■印刷総合研究会の詳細はこちらから → https://www.jagat.or.jp/pri
■『JAGAT info』最新号の目次はこちらから → https://www.jagat.or.jp/magazine
BPOと高付加価値のデジタル印刷で新規市場とビジネスモデルを開拓する
JAGAT info 1月号では取引先の業務に深く関わり、BPOとして仕事の一部を請け負うことで成長を続ける研文社の事例を紹介した。 今回はその一部を抜粋して紹介する。
BPO を得意とする印刷会社
研文社は1946 年に、現社長である網野勝彦氏の祖父が大阪市で設立した。まだ活版印刷が主流だった時代に日本で2 番目にオフセット印刷機を導入(1952 年)した会社であり、新しい技術を積極的に取り入れてきた歴史がある。大きな転機となったのが、得意先の銀行が軸足を東京へと移すのに合わせて、東京進出を勧められたことである。文京区にあった印刷会社と現在でいうところのM&A を行い、1960 年に東京研文社というグループ会社を立ち上げることになった。
研文社の特徴の一つが、顧客の仕事の一部を改善や効率化を含めて請け負うBPO(Business Process Outsourcing)が成果を結んでいる点である。元々は印刷だけを請け負っていたが、徐々にテキストの作成や配送業務など周辺の業務を含めて受注するようになっていった。同社では、BPOのために人材の育成や配送センターの設立などの投資を行っている。
このBPO は、印刷業務だけではなく関連する業務も合わせて一括受注している。そのため、印刷需要が減少する時代にあっても、売り上げを伸ばすことが可能である。また、業務に深く関わり、他の印刷会社では提供が難しいサービスを行っていることから、クライアント側も別の印刷会社に業務を移管することは簡単にはできなくなる。結果的に価格競争を免れることから、印刷会社が生き残るための一つの戦略と考えられよう。
研文社がデジタル印刷分野に進出したのは、網野勝彦氏の父である現会長・網野博氏がスクリーン社のロールタイプのインクジェット機、Truepress Jet520 を、2012 年の尼崎工場新設時に導入したのが始まりだった。
もともとはフォーム印刷用として想定したものだったが、網野勝彦氏の代になり、尼崎への工場集約を機にデジタル印刷を軌道に乗せるため編み出したのが、デジタル印刷ならではのサービスを提供・販売していくことだった。その最たるものが、現在もデジタル印刷の主力製品となっている福祉用具のカタログである。
福祉用具は、自治体によって補助率などの制度が異なるため、価格が自治体ごとに変わってくる。個別かつ細かな仕様変更が必要であり、小ロット・バリアブルの極みともいえる印刷業務である。これら福祉用具カタログの業務の仕組みやZ 折の機体構成については、過去にも本誌2013 年8 月号や2017 年11 月号で詳細に紹介している。
この福祉用具カタログを中心に、尼崎工場では利益の半分をデジタル印刷が生み出すようになった。アナログ印刷よりも少ない業務量で同規模の利益を稼ぎ出せており、デジタル印刷の特徴に合致したビジネスモデルのケースといえる。
東京の本社工場をデジタルに特化
尼崎工場が軌道に乗り、デジタル印刷のビジネスモデルが分かったことで、現在改革に着手しているのが新宿区の本社工場である。建物の地上部分には本社機能や営業部門などがあり、地下1 階と地下2 階が工場となっている。
地下2 階部分では、主にメインクライアントの一つである銀行の印刷部門から移管された業務を行っている。地上2階部分にはコールセンターを設置、全国の銀行支店や担当部署から受注が随時集まる仕組みができている。
地下2 階の設備は、リコーのデジタル印刷機、RICOHPro C7210Sが2 台とRICOH Pro 8320Sが1 台置かれており、その他に製本機や折機、断裁機が一式そろっている。
そして、本社地下1 階にはオフセット印刷機2 台を売却して、同じ場所にImpremia IS29とJETvarnish 3Dを導入した。Impremia IS29 は1200dpi の解像度を持ち、585mm × 750mm までの大きさの紙に印刷できる。幅広い用紙適性と、パッケージ印刷にも対応可能な紙厚適性を持つ。
これに加えて、JETvarnish 3D で箔やニスを装飾することができる。研文社では現在、8 種類の箔を用意している。価格は高くなるが、他社との差別化が可能な、高級感のある印刷物の制作が可能となる。実際に目で見て触ってみれば、その差は歴然であり、提案営業をしていく糸口の一つとなっている。
また、地下1 階では、デジタル印刷の特性を生かし、顧客が立ち合って実際の刷り上がりを見ながらデータを修正し、再度その場で印刷することもできるようにした。大きな修正の場合、オフセット印刷では、また後日の確認ということになりがちだが、デジタル印刷であれば、データを修正した後は印刷・箔押しまで含めてもその場で修正された印刷物が出来上がる。刷り上った印刷物とサンプルをお互いに見比べながら、イメージを共有していく場となる予定である。
アライアンスでIT を強化
研文社は、(株)グーフと2020 年8 月に資本業務提携を締結した。グーフはパーソナライズされた印刷物を最短24 時間で発送可能な印刷プラットフォーム、Print of Things®を展開しており、その生産部分や付帯サービスを同社が担う格好だ。こちらでもImpremiaIS29、JETvarnishの活用が検討されている。
研文社では、グーフのようなIT を得意とする企業とアライアンスを結ぶことで最先端のサービスを提供している。今回はその連携を一歩先へ進めた格好であり、同社としてもこれまで培ってきた自社の技術、ノウハウが生きる業務提携となっている。もちろん、個人情報を取り扱うためセキュリティーなどには注意が必要だが、古くから銀行と仕事をしてきた同社にとっては、むしろ得意分野だろう。また、配送センターを複数運用してきた実績もあることから、印刷から発送までを迅速に行うことも可能だ。
つまり、ここにImpremia IS29 とJETvarnish 3Dを組み合わせていくのが、研文社の狙いである。Printof Things® では定型のハガキ類を送ることで成果を上げているが、絞り込みの条件によっては、より確度の高い見込み客を抽出することも可能である。送付対象が多い場合は通常のDM、少ない場合は高付加価値印刷のDM といったように、幅広い選択肢が作れるようになれば、サービス強化につながる。このアライアンスでは、IT と広色域+ 加飾の組み合わせで、印刷の新しい可能性を広げようとしている。
販促企画のBPOで案件単価を上げる
また、Impremia IS29の活用については、他社との協業だけではなく、もともと強みとしてきた営業を武器に、自分たちからも仕掛けていくつもりである。そこでもメインの商材の一つとして考えているのが、高級DM である。
研文社の関連会社には、事業開発部クリエイティブ室を移管した(株)ケンズがあり、広告・販促物の制作やプロモーション戦略の立案、プロデュースなどを行っている。Impremia IS29とJETvarnish 3Dで印刷するプロモーションメディアは、企画段階からケンズとともに起案している。企画から編集、制作、印刷までトータルで売り込むことで、一つのBPO として案件の単価を上げていく考えだ。
まだ手探りの段階であるが、大ロットの印刷物が減少していくなかで、印刷物+ αの価値を提案していくことは、今後ますます重要となる。原価から値付けを決めるのではなく、広告効果や付加価値をアピールし、利益率の高い商品に育てていく戦略だ。 研文社は、印刷業務を核としつつ、IT の活用やBPOで業務領域を広げ、売り上げを伸ばしてきた。高単価・高付加価値のデジタル印刷は研文社にとっても新たな挑戦となるが、新しいアライアンスや販促企画などを含めた営業活動で利益率の高い事業を開拓しようとしている。
(研究調査部 松永 寛和)
【マスター郡司のキーワード解説2020】ハイレゾ
今回は「ハイレゾ」について考える。 続きを読む




