印刷業定点調査 各地の声(2021年5月度)

掲載日:2021年6月24日

3月の売上高は△3.8%。昨年3月のコロナ禍が本格化して以降では最高値になった。ただし、平日の日数が昨年3月と比べて2日増というカレンダー要因があることを割り引いて、冷静に見る必要がある。

地域別では、首都圏(+4.5%)は2020年1月以来のプラス。名古屋圏(△2.4%)は3カ月連続でマイナス幅が縮小して、回復基調が続く。一方、感染拡大が続く大阪圏(△14.6%)は期末需要も限定的だったようで、1月からの低調さが続いている。

業種・業態別では、商業印刷(△1.6%)が急回復して2020年2月以来の高さ。他の業種と比べても需要が抑制されていただけに、期末の駆け込み予算消化が活発だったようだ。出版印刷(△6.4%)はいち早く昨年10月にプラスを回復したが、以降はこの水準で落ち着いた感じになってしまっている。総合印刷(△2.5%)は2月(△2.1%)に相当戻して3月も堅調といえる水準だった。紙器・事務印刷(△6.2%)は低いが、昨年3月(+0.4%)に健闘していた反動減要因がある。

規模別では、29人以下が(△6.0%)が回復傾向。30~49人(+8.4%)と100~299人(+0.9%)はプラスに回復。50~99人(△4.0%)も徐々に回復。300人以上(△11.2%)は、昨年3月がまだ高かった(+0.9%)反動減もあろうが、もたついている。

 

【印刷会社経営者の声】

茨城:商業
 3月の繁忙期も過ぎ、現場の慌ただしさも一段落しました。同時に、コロナの影響が出て丸一年経ちますので、それを踏まえた新たな数値目標や営業戦略を検討しています。

 

東京:事務
 東京近郊の印刷・製本・加工業者の廃業の知らせを多く聞くようになってきた。お客様への価値の提供を常に問い続け、行動・実践し続けられる企業・組織しか存続できない厳しい時代だ。だからこそ自社の意義を再定義する好機なのだろう。Never Stop!

 

長野:総合
 コロナの影響で多くの印刷需要が消失しました。一方で、人の生活がある限り必要とされる新しい需要も生まれています。変化の時代、改善力、営業力と提案力を考え、受注力強化を図り、目標に向かって挑戦して成果を出すことが求められます。

 

大阪:商業
 3月の売り上げは下がったが、利益率は高かった。しかしこれから夏に向かうと、またコロナの感染拡大から受注が落ちるだろう。それでも昨年の4・5月よりコロナ慣れし、学校も授業が止められないので、昨年よりは仕事が増えると予想する。

 

和歌山:商業
 コロナ禍で市場は回復しないことを前提に、新たに東京で中途経験者2名を採用した。縮小した市場でいかに受注できるかで考えた場合、機械よりも人材に投資する方が賢明と考えた結果である。

 

熊本:商業
 昨年に続き、今年もイベントからの印刷物受注は難しそうです。イベントがそもそもないか、もしくは極端な縮小傾向です。ウェブを使った新たなイベントは増えているが、印刷にはなかなかつながらない。そして、ウェブ制作依頼が増えていく。

 

(『JAGAT info』 2021年5月号,印刷経営ウォッチング,p60-61より抜粋して要約)