社会動向とともに印刷ビジネスを捉える
印刷ビジネスの全体像を学べるeラーニング講座を開講します。
「DTP エキスパートカリキュラム」は、DTPの制作環境や関連技術の進化、また印刷を取り巻く環境の変化に応じて改訂を行っている。1994年の発行以降、2年に1度の割合での改訂を経て、現在第16版となっている。
カリキュラム改訂に見る人材像の変遷
以下は、過去10 年間に行われた改訂の概要である。
- 12 版(2016.11):印刷とマーケティングの関連性をカリキュラムに導入
- 13版(2018.11):提案型ビジネスモデルと価値を生み出す印刷物を前提に、「コミュニケーション」カテゴリに情報デザインとマーケティングを集約
- 14版(2020.12):2段階制の導入に伴い、印刷ビジネスを創る人材を想定して「マーケティングと情報デザイン」を強化
- 15版(2022.12):外部環境による印刷ビジネスの変化を踏まえ、「コミュニケーションと印刷ビジネス」カテゴリを拡充
- 16版(2024.12):社会動向とともに印刷ビジネスを捉える人材に焦点
印刷物の効率的な生産が求められた時代から、顧客が営む事業の中で印刷物がもたらす効果を重視する方向へと印刷ビジネスのトレンドが変化するのに伴い、人材育成プログラムの制度設計も進化してきた。
人手不足と人材不足
労働生産人口の減少という人口動態により、人手不足が深刻な課題となっている。さらに、付加価値を創造するようなビジネスモデルを担う人材の不足は、特に日本国内では教育の在り方や、働き方の変革を伴いながらさまざまな議論を呼んでいる。
「人手」とは、定型化された業務を行う労働者の人数、つまり労働の総量を表す。要するに「人手不足」とは、事業を稼働するのに必要なマンパワーが純粋に足りないため、業務が滞ってしまうような状況を指す。そのため、人手不足の問題に対する解決策としては、定型業務の自動化が適しているとされる。
一方で「人材不足」とは、スキルを持つ人材、あるいはスキルを身に付けるポテンシャルを持つ人材が不足している状態を表す。定型化し難い業務を担う人材が不足している場合、必要とされるスキルやポテンシャルについて正しく把握していないと、人材と必要スキルのミスマッチにより本来の課題は解決しない。
DTPエキスパートカリキュラムの改訂の変遷は、大量生産・大量消費社会における業務の標準化(≒定型化)から、印刷物の利用者に効果をもたらすような最適成果に向けた人材の確保といったビジネストレンドの流れに沿ったものであるといえる。今後も、このような社会動向を捉えることなくして印刷ビジネスを発展させていくことは、難しい。
近年の産業動向と印刷
近年、産業界には、持続可能な社会の形成に向けたパラダイムシフトがより一層求められている。限りある資源をもとに価値を創造していく方向への変化は、印刷物の製造工程をはじめ、印刷物のユーザーである企業や一般生活者の動向、印刷物が効果を発揮する文脈の構想など、印刷のビジネスモデルの在り方に大きな影響を及ぼすものとみられる。
さらに、サブスクリプションサービスの普及やAI(人工知能)の進展は、コンテンツ制作の着想自体に変化をもたらす可能性がある。制作側は、それらの技術をどのように活用していくべきかを俯瞰的に捉え、スキルの在り方を見直す姿勢が求められている。
第16版では、こうした社会動向および関連技術の進展を踏まえて追加・改編を行っている。DTPエキスパート認証制度の学習範囲は広範囲にわたり、全領域について理解を深めるためには一定の学習量を必要とするが、社会とともに印刷ビジネスが変化している現在だからこそ、あらゆる領域の知識が活躍の糧となる。
カリキュラム全項目を解説するeラーニング新講座を開講
DTPエキスパートカリキュラムの全範囲を44本合計17時間の動画で解説するeラーニング学科総合解説講座を開講する。
受講期間中何度でも繰り返し視聴できるため、見逃しや聞き逃しなく理解を深め、カリキュラム全体を基礎から総合的に学べる講座となっている。
インターネットに接続したパソコン、タブレット、スマートフォンなどからアクセスできるため、落ち着いて学習したいときはパソコンで、通勤途中に1項目のみ視聴したいときはスマートフォンで、など、受講者の学習場面に応じた利用が可能となっている。
社会動向の変化がビジネスのありかたに大きく影響する昨今、継続的学習姿勢は欠かせない。手軽に得られる知識やスキルが短期間で陳腐化してしまう現代、広範囲にわたる知識を総合的に習得する骨太な学習を土台にビジネスを展開していただきたい。
(JAGAT丹羽朋子)
(JAGATinfo 2025年1月号より一部加筆修正のうえ転載)