マーケティング」タグアーカイブ

印刷顧客を生むメディア展開のヒント

印刷会社からこれまでになく、印刷営業におけるメディア展開の話を聞くようになった。容易に訪問営業できない時代の新規受注はどうするか。足で稼ぐことも重視しつつ、一方ではメディアによる接点創出の模索が活発化している。

 

テレワークによる新規営業の変化

メディアの使い方が変わっている。いままでは生活者や印刷発注者の動向を見てきたが、いま変わりつつあるのは印刷会社自身のメディア活用である。発注者がテレワークで自宅勤務になってしまい、気軽に訪問できなくなった。彼らにどのようにリーチすればよいのか。印刷会社がこれまでになく様々なメディアによるアプローチを試み始めている。

印刷におけるBtoBマーケティングの難しさ

そもそも、印刷会社の顧客はどこからどのように生まれるのか。仮説であっても、この問いへの答えを持っておくことが必要なように思われる。印刷ビジネスはBtoCではなく法人営業なので、どうにも一般的なマーケティング理論を適用しにくいのが難しいところだ。BtoBは消費財と違い、個人の選好や感情に左右されて取引されることは少ない。その購買プロセスは秘匿性が高く公開されるような成功モデルは少ないのである。とはいえ、自社なりの顧客創造シナリオをつくってみなければメディア設計ができない。

地域商圏での事例を広域発信

今までは訪問営業が絶対的な存在感だったが、コロナ禍によって大きく変わった。遠方への営業が難しくなり、地元商圏に回帰せざるを得なくなった。他方、情報発信に秀でた印刷会社では、ウェブサイト経由などで遠方の見知らぬ顧客から引き合いが舞い込み、受注にまで発展する例が増えている。つまり、オンライン体制を整えつつ地元商圏を重視すれば、地域での成功例を広く発信することで、商圏を広域に広げる手法が可能な時代なのである。

対面以外のチャネルを確保する

多くの受注が続々と飛び込むことを期待するのではなく、顧客が自然流入するようなメディアの導線をつくる。元々、飛び込み営業の打率はとても低いのだし、既存顧客の一定数が失注する分を補える仕組みができれば充分だ。コロナ後に向けて、いわば顧客が自然発生的に生まれるメディアの組合せをいくつ持つかが成長性を分けていく。そしてウェブサイトに来てもらうにもまず自らの発信が必要になる。

人的営業は依然強いがデジタル移行も確実

JAGATの調査では、コロナ前、印刷会社の顧客の6割強は訪問営業から生まれていた。しかしコロナ禍以降は5割強に低下、約1割がデジタル手法に移行した。独自製品開発志向や地域活性化志向の高かった企業は発信コンテンツに事欠かないが、従来型の受注スタイル企業において苦戦が顕著になっている。自社の強みや独自性がないと、注目を集めようにも発信するものがない。メディアに乗せる以前にコンテンツの制作から議論を始めることになる。

自社の強みとメディアで創注する

ただし、現代まで存続したすべての印刷会社には他社と違う何かがある。印刷会社が自社のウェブサイトなどのメディアを見直していくことは、自社の強みや独自性を再発見し、明確化していくことになる。コロナ禍で加速したデジタル化によって、メディアの全体動向はどのように変わり、自社はどのように対応していくべきか。印刷会社は顧客のデジタルメディア化に対応してきたが、自社のメディア展開を考えるべき局面になっている。
(研究調査部 藤井建人)

■関連セミナー

2022年3月30日(水) 14:00~16:40
広告と通販、印刷営業に見るメディア最新動向2022
-印刷顧客を生むメディア展開のヒント-

 

『JAGAT info』2022年2月号

JAGAT info 2022年2月号表紙

特集

アメリカのダイレクトメール事情と、日本の印刷ビジネスへの応用

―JAGAT大会2021の基調講演を改めて読み解く― 株式会社マーケティングサイエンスラボ 所長 本間 充

特別企画

JAGAT Study Session OMO(Online Merges with Offline)を実現するマーケティングDXソリューション

講師:富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 グラフィックコミュニケーション事業本部 システムエンジニアリング部 DX推進グループ グループ長 荻野 賢 氏

連載

■印刷界OUTLOOK 印刷生産額 研究調査部 藤井 建人

■マーケティング情報 印刷通販の成功要因 サービスの立ち上げから成長への20年間を振り返って 研究調査部 藤井 建人

■経営情報 フレームワークの活用(上) 外部環境と内部環境を正確に把握するために 株式会社GIMS 佐藤 穣

■マーケティング・ナウ 第8回 「人」中心のマーケティングの勧め 本間 充

■技術トレンド グラフィックス 標準原価を活用した部門別収支管理 研究調査部 花房 賢

■デザイン・トレンド 「2121年 Futures In-Sight」展 未来に向かうための視座を考える展覧会 研究調査部 石島 暁子

■キーワード2022 リターゲティング広告 専務理事 郡司 秀明

■デジ印奏論 33 「いいね」を作ろう 星 輪太郎

■デジタル印刷最前線 トピック技術セミナー2021を振り返る

■専務のつぶやき 11 マーケティングに関わる印刷会社/印刷業へ 専務理事 郡司 秀明

■ワールド・プリント・サテライト EFIの事業再編と今後の展開 ほか 研究調査部 丹羽 朋子

■Education ビジネス環境の変化に対応した新入社員研修 CS部 加治 寛子

■特別レポート アビリンピック全国大会、初の東京開催 影山 史枝

■西部支社便り メタバース、できることは何? 西部支社長 大沢 昭博

■森 裕司のデジタル未来塾 119 変わるフォント環境

■エキスパート資格 PDF/X-4はPDF入稿のスタンダードとなったか 資格制度事務局 千葉 弘幸

■DTPエキスパートのための注目キーワード 画像の解像度とデータ量 研究調査部 千葉 弘幸

■クロスメディアのトレンドワード コロナ禍で変わるオンラインイベントとファンマーケティング 影山 史枝

■ニュースラウンジ ギンザ・グラフィック・ギャラリー第386回企画展「ソール・スタインバーグ シニカルな現実世界の変換の試み」開催 ほか

■印刷経営ウォッチング

■消息

■JAGAT事業のご案内 『JAGAT印刷産業経営動向調査2021』のご案内/『みんなの印刷入門』のご案内/「JAGAT印刷総合研究会」のご案内/「JAGAT新入社員セミナー2022」のご案内/印刷総合研究会「page2022から/読み解く印刷業の未来」のご案内/『新版 DTPベーシックガイダンス』のご案内/図書のご案内

2022年2月15日発行 A4判60ページ

JAGAT info 最新号

JAGAT info バックナンバー

コロナで変わる新規開拓営業と創注・造注

コロナ禍以降、印刷会社の方とディスカッションすると、次の3つが課題に挙げられることが多い。

 

・リードが取れない
・コンテンツがない
・オリジナルがない

従来、印刷業の見込み客は訪問営業や紹介、展示会から生まれていた。しかしこれら対面の機会がなくなって新規開拓が難しくなった。「リード(見込み客)」が取れなくなってしまったのである。訪問できない代わりに、ウェブサイトやメルマガなどの発信を強化する方向に向かうが、今度はコンテンツがない、という話になる。

印刷業は、基本的に顧客側で原稿を作ってから需要が発生するという、いわゆる受注型産業である。自社オリジナルの製品と技術がない会社が多い。そうすると発信するにしても、「年賀状が早割で20%OFF」といったコンテンツになってしまう。いったい、まだ見ぬ見込み客は、これを見てコンタクトを取ってくるだろうか。

原点に戻って考えると、一つは営業企画機能がないこと、もう一つは研究開発機能がないという、組織論、機能論に行き着く。製造業として、事業創造のこの2大機能がなければ、今の時代は手詰まりになってしまう。右肩上がりの時代が長かったし、縮小期に入ってからも、訪問営業が可能な時代はまだ良かった。

つまり、リード、コンテンツ、オリジナルは一体で機能する。これらがないまま、デジタル施策に大きな投資をしてもたぶんうまくいかない。逆に、印刷会社の強みは、印刷機という設備、工場という場所、技術者という人、の3点である。これら強みと困っていること、そしてウェブや地域社会との組合せから、新たな取り組みができないか。

Indigo7kを活用する中本本店(広島)の「ライツ・ラボ」、「インサツビト」による「印刷Lab.」の取り組み。朝日印刷工業(群馬)の口コミ情報サイト「ぐんラボ」、JetPress、Iridesse、imagePRESSなどを有し、商店街に2号店を出したオンデマンド印刷ショップ「DiPS.A」の取り組み。たとえばこの2社は自社に人と情報が集まり、最終的に需要や事業を生むラボの運営に秀でている。こうして、各社に聞くと創意工夫を凝らした展開をしていることがあって興味深い。

1月31日から2月10日にかけて、オンラインで開催されるpageカンファレンスは、全国どこからも参加できる。勝ち残るマーケティング戦略、インサイドセールスの役割、新事業開発の経験、ウェブ活用と地域活性化、ビジネスのタネの見つけ方など、アフターコロナに向けた売上高創造に向けた創注、増注に向けた多くのヒントが提供される。2月2~4日にかけて開催されるpage展示会にも多くのヒントがあると思う。

(研究調査部 藤井建人)

■創注・造注関連page2022カンファレンス・セミナー(1/31~2/10)

2022/1/31 【プレセミナー】今こそマーケティング!(基礎解説編)
2022/2/7  新事業開発でぶち当たる壁をいかに乗り越えたか
2022/2/8  インサイドセールスの機能と役割
2022/2/8  勝ち残る印刷会社のマーケティング戦略
2022/2/9  webと地域活性化による事業創造
2022/2/10  ビジネスのタネの見つけ方、つくり方、育て方


page2022オンラインカンファレンス・セミナー 計12本
基調講演・プレセミナー 2本
カンファレンス・セミナー 10本

関連レポート
2022年1月20日 page2022カンファレンスセミナーの副題は「造注」
2022年1月19日 コロナで変わる印刷営業とその体制
2021年11月24日 マーケティングの潮流、BtoCとBtoBの視点から

コロナで変わる印刷営業とその体制

コロナ禍は営業を変えた。需要水準は切り下がり、発注者の価値観は変わり、訪問営業しづらくなり、オンライン会議システムとオンライン校正は急速に普及した。JAGAT調べでは印刷会社の約3/4は外勤営業しかいない。これからの営業はどうすれば良いか。

 

長引くコロナ禍の影響

コロナ禍以降、初回の緊急事態宣言の発出を経て急減した印刷需要は、20年5月に未曾有の落ち込みを記録した。以降は感染の縮小と拡大に合わせて一進一退となっている。全体には持ち直しつつあるが、コロナ前の水準には戻らないだろう。さらにオミクロン株によって不透明感が増すなど、悪材料が出るたび観光業界などへの打撃を通して商業印刷に影響する繰り返しだ。

コロナ禍は施策の差が業績差に現れやすい

市場縮小とは裏腹に、売上高の落ち込みが軽微、むしろ増えた企業もある。現在のように売上高が大きく変動する局面は、施策の差が業績の差として表れやすい。そこでこうした企業の戦略を分析して、ニューノーマルに向けた手がかりをひとつでも多く得ようと試みている。市場は企業にとっての戦場なので、現状や方向感を掴むことはまず何より基礎である。

対策は売上高構築に求める必要

次に施策をどうするかである。コストダウンでは追い付かないほどの変化である以上、対応の中心を営業・売上高対策に置かざるを得ない。一般に印刷会社の損益分岐点比率は95%程度なので、売上高が5%落ちればほとんどの企業は赤字化してしまう。とはいえ従来型の訪問営業を活発化させるわけにはいかない。売上高構築には新たなアプローチが必要である。

営業担当者を経由しない仕事が増えている

コロナ禍以降の印刷会社を見ると、営業のあり方が大きく変わっている。インサイドセールスと呼ぶべき内勤営業がウェブサイトやメルマガ、SFA/CRM/MAなどのデジタル施策を駆使する例がある。顧客要請もあって制作がオンライン校正を活用し始めた例もある。webを充実しておいたおかげでコロナ禍以降は新規引き合いが増えた印刷会社も少なくない。こうして、従来はすべての業務が営業部門を経由したが、各部門が顧客と直接につながり始めた。

変わる顧客との接点、営業からマーケティングへ

したがって印刷会社と顧客の接点は、営業担当者と印刷発注者のクローズドで線的なもの、ではなくなった。多様な接点のそれぞれが顧客とつながる面的なものに移行した。そしてそれは、見込み客の創出において、もっと顕著になっている。地域社会あるいは自社の得意な業界と複数の接点を持つ必要性の有効性が高まった。コロナ禍でも堅調な企業は、将来の見込み客が持続的に生まれるフィールドの育成に長けている。営業の役割はどのように変わるのか。

受注・顧客創造企業へ、工場見学など自社拠点を活用

JAGATは中小印刷業を対象に「顧客・地域接点実態調査」を行い、顧客創造の仕組みの解明に取り組み、分析は『JAGAT info』2021年11・12月号に掲載した。企業経営は短期的な受注獲得を重視せざるを得ないが、持続成長のためには、各方面から相談や受注が流れ込む関係性の構築が欠かせない。たとえば「工場見学」の実施有無は最も大きな業績差の要因だった。

受注・顧客創造企業へ、研究所・ラボの展開

下記セミナーに登壇する1社は「訪問営業すれば価格競争になってしまう、来てもらう仕組みが大事」と語る。次に大きな業績差は「研究所・ラボ」の有無だった。下記セミナーに登壇する2社がノウハウを持つ。ほとんどの印刷会社は営業企画機能や研究開発機能がないので参考になる。一見して非財務の様々な活動が、実は背景的に長期の財務を形づくる。

訪問から発信へ、営業からマーケティングへ、線から面へ

堅調な企業の分析から、営業の潮流は、訪問から発信へ、営業からマーケティングへ、線から面へのシフトが確認される。デジタルチャネルの開設も重要だが、デジタル施策はアナログ施策と両輪になって初めて機能する。単体ベースで比べるなら、デジタル施策よりはインサイドセールスや研究所・ラボ運営のような人的施策の方が優位で、さらには工場見学や地域活性化のような背景的施策の方がもっと有意なことも明らかになった。

ニューノーマル時代の営業を議論する

これら変化の一要因は、印刷業が基本的にBtoB業態であることによる。コモディティ化した製品を除けば、産業材の取引は基本的に長期固定的であり、新規開拓は容易ではない。たとえば最後の刈り取りは営業の属人的スキルに頼るところが大きいが、持続的な成長性は先述のフィールドにどれだけ有形無形の投資をしたかによる。研究会とpageカンファレンスは、こうした印刷業ならではの特性と調査結果を踏まえた営業とBtoBマーケティングによる造注、創注に焦点を当てる。
(研究調査部 藤井建人)

■関連セミナー、関連レポート

2022年1月26日(水) 15:00~17:00
広告とメディアの動向と展望 2021-2022

2022年2月8日(火) 10:30~12:00
インサイドセールスの機能と役割
マーケティング部長2人が語るニューノーマルの営業

2022年2月9日(水) 13:30~15:00
webと地域活性化による事業創造
自社拠点を生かして事業を継続的に生む仕組み

2022年1月31日(月)~2月10日(木)
page2022オンラインカンファレンス・セミナー 計12本
基調講演・プレセミナー 2本
カンファレンス・セミナー 10本

関連レポート
2021年11月24日 マーケティングの潮流、BtoCとBtoBの視点から

 

『JAGAT info』2021年12月号

JAGAT info 2021年12月号表紙

特集

ニューノーマルに向けたマーケティング戦略変容の解明

―印刷会社の顧客・地域接点実態調査から―(後編) 公益社団法人日本印刷技術協会 研究調査部長 主幹研究員 藤井 建人

営業環境の変化について経営者の声

―印刷会社の顧客・地域接点実態調査から―(後編)

特別企画

『印刷白書2021』を読み解く

CS部 吉村マチ子

連載

■印刷界OUTLOOK 印刷会社の経営資源 研究調査部 藤井 建人

■キーワード2021 BNPL 専務理事 郡司 秀明

■マーケティング・ナウ 第7回 アメリカ流マーケティングを日本で活用するには 本間 充

■専務のつぶやき 9 これからは意味のある印刷物を 専務理事 郡司 秀明

■デジ印奏論 31 新入社員に夢を語ろう 星 輪太郎

■経営者に聞く 地域のコネクターハブ企業を目指して ―人材を育み、地域戦略・デジタル戦略に取り組む― 真生印刷株式会社 代表取締役社長 河内 克之 氏

■技術トレンド グラフィックス 生活者のデジタルシフトに対応するDM 研究調査部 花房 賢

■デザイン・トレンド SPREAD by SPREAD 明日は何色? 色と光で人の心を動かす展覧会 研究調査部 石島 暁子

■デジタル印刷最前線 デジタル印刷でアルバム製作のワンストップサービスを ―グループ企業の強みを生かし、アルバムコンテンツを多方面に展開― 株式会社遠藤写真工芸所

■マーケティング情報 ポートフォリオ分析からの近未来示唆 ⑤PPM-生産方式編 ―需要調査結果と日米比較から― 研究調査部 藤井 建人

■page2022 新企画ゾーンを活用して、新たなチャレンジを CS部 堀 雄亮

■Education 印刷の品質管理を工程でつくり込む ―鍵を握るのは教育と人材育成、コミュニケーション― CS部 古谷 芸文

■西部支社便り いよいよ年末、準備と過ごし方 西部支社長 大沢 昭博

■ワールド・プリント・サテライト 第6回国際ポスターコンテスト授賞式 ほか 研究調査部 丹羽 朋子

■森 裕司のデジタル未来塾 117 Adobe MAX 2021

■エキスパート資格 第56期DTPエキスパート試験、学科試験の出題傾向 資格制度事務局 千葉 弘幸

■DTPエキスパートのための注目キーワード Photoshopの基本操作 研究調査部 千葉 弘幸

■クロスメディアのトレンドワード 小売店舗のパーソナライズサービス 次世代型ショールームでメーカーと消費者をつなぐ 影山 史枝

■ニュースラウンジ 大日本印刷 DNPプラザを拠点に複数のプロジェクトを展開 ほか

■印刷経営ウォッチング

■ニューメンバー・消息

■JAGAT事業のご案内 「page2022」開催のご案内/「JAGAT トピック技術セミナー2021 オンライン」開催のご案内/『JAGAT印刷産業経営動向調査2021』のご案内/『印刷白書2021』のご案内/「JAGAT印刷総合研究会」のご案内/図書のご案内/「page2022」新企画ゾーン/出展相談会のご案内/JAGAT新入社員研修2022のご案内/『新版 DTPベーシックガイダンス』のご案内

2021年12月15日発行 A4判60ページ

JAGAT info 最新号

JAGAT info バックナンバー

『JAGAT info』2021年11月号

JAGAT info 2021年11月号表紙

特集

ニューノーマルに向けたマーケティング戦略変容の解明

―印刷会社の顧客・地域接点実態調査から―(前編) 公益社団法人日本印刷技術協会 研究調査部長 主幹研究員 藤井 建人

営業環境の変化について経営者の声

—印刷会社の顧客・地域接点実態調査から—(前編)

特別企画

印刷会社の新卒採用・教育に関する実態調査 2021

公益社団法人日本印刷技術協会 CS部長 塚本 直樹

■印刷界OUTLOOK 従業者数 研究調査部 藤井 建人

■Recreating the future―印刷の現在とこれから― 第7回 顧客データを扱うことで、印刷会社のビジネス変革を 山口 実

■キーワード2021 レストアサービス(G-SHOCK) 専務理事 郡司 秀明

■デジ印奏論 30 最近の製品開発でのデジタルアプローチ 星 輪太郎

■経営者に聞く 創業100周年を迎え、未来永劫に続く会社へ ―「運」を呼び込み、着実な成長を目指す― 山口証券印刷株式会社 代表取締役社長 山口 明義 氏

■専務のつぶやき 8 高い品質とレストア 専務理事 郡司 秀明

■技術トレンド グラフィックス 次世代スマート工場とMESの役割 研究調査部 花房 賢

■デザイン・トレンド 次世代に残る紙媒体を育てる 「第92回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2021」に見る紙と印刷の提案 研究調査部 石島 暁子

■デジタル印刷最前線 「Horizon Smart Factory 2021」視察レポート 株式会社ホリゾン

■page2022 2年ぶりの開催に向けて準備が進む CS部 堀 雄亮

■Education 通信教育を活用して、内定辞退防止や入社前準備に有効なフォローアップを CS部 橋本 和弥

■ワールド・プリント・サテライト 10月12日から15日までFESPA開催 ほか 研究調査部 丹羽 朋子

■マーケティング情報 ポートフォリオ分析からの近未来示唆 ④PPM-製品編 ―最新調査結果と日米比較から― 研究調査部 藤井 建人

■森 裕司のデジタル未来塾 116 オンラインミーティングを改善する

■エキスパート資格 第56期DTPエキスパート認証試験講評 DTPエキスパート認証委員会

■西部支社便り 指名される存在になる 西部支社長 大沢 昭博

■DTPエキスパートのための注目キーワード デジタルサイネージの進化 研究調査部 千葉 弘幸

■クロスメディアのトレンドワード BtoC-EC市場を牽引するインスタントEC 影山 史枝

■ニュースラウンジ 光村印刷創業120周年記念展「perspective 阪本トクロウ」開催 ほか

■印刷経営ウォッチング

■消息

■JAGAT事業のご案内 『印刷白書2021』のご案内/『JAGAT印刷産業経営動向調査2021』のご案内/「JAGAT大会2021」開催のご案内/「page2022」新規出展社募集相談会のご案内/図書のご案内

2021年11月15日発行 A4判60ページ

JAGAT info 最新号

JAGAT info バックナンバー

マーケティングの潮流、BtoCとBtoBの視点から

対面営業のような人的接触の存在感はまだ大きいが、ニューノーマルに向けた顧客創造のマーケティング戦略が大きく変わると思われる。

 

BtoBマーケティングの必要性

BtoBビジネスではマーケティングは不要と考えられてきた。それは、業種、顧客、製品ごとに市場が大きく異なり、その特性を理解することに明け暮れてしまいがちだからである。BtoBはBtoCと異なって選好的、感情的に選ばれることが少なく、AIDMAのようなファネル型モデルを適用しにくい。顧客は法人だから、購入の関与者が多く、意思決定は分岐が多く行ったり来たりの経過をたどる。だからマーケティングが不要なのではなく、だからこそ必要なのである。ちなみにBtoBマーケティングを考える際はBtoCモデルを基礎に考える形で良いと思うが、違いが相当にあるのでその点はまたの機会に触れたい。

BtoCとBtoB

長期継続的な取引が中心となるBtoBビジネスでは、信頼とブランド、サービスが大切になる。多少の安さよりは供給や品質の安定性、面倒見の良さが重視される。スイッチングコストを高めておくことが肝要だ。取引の長期化によって製品がコモディティ化すれば価格は必然的に落ちていく。製品周辺のサービスも合わせて包括的に提供するサービスマーケティングの流れになることは多くの業種の事例が物語る。卑近な例でいえば、コピー機を販売するのでなく、コピーの利便性のみを売って所有権は移転せず、メンテナンスは売り手が担うモデルである。

サービスマーケティング化

ところで経営でいう場合のサービスはもちろん無償奉仕を意味しない。そして顧客のバリューチェーンの一部を肩代わりするようなサービスを想定するようにしたい。「印刷産業経営動向調査2021」が初めて調べた需要調査(製品26種・生産方式8種・付帯サービス10種)を読むと、とりわけ印刷製品とサービスの相性は良いことが理解できる。BPO(Business Process Outsourcing)と言っても良いが、本業の印刷周辺に何か手伝えることはないかと、顧客を研究して自社の強みとの整合を検討することの有効性が高い。顧客業務へのカスタマイズが一つの価値になる。

イノベーションと組合せて

前述のコピー機の例でいえば、これは販売方法のイノベーションを伴った。ドラッカーはマーケティングとイノベーションこそが企業の2大機能と述べた。コロナ禍でも堅調な中小企業を見ると何気ない小さなイノベーションによる事業を複数持っていることに気づく。顧客の声をあまり聞き過ぎても、ありふれたサービスになって市場をさらに飽和させてしまうという、BtoBの難しさはこのバランスにある。まずは小さくても顧客の潜在需要を探り当ててサービス設計する視点が望ましい。11/14放映NHKスペシャルでのホンダのスタンスは、変化が速いのでもはや変化対応型では後手を踏むというものだ。自ら変化を起こす側からの提案が価値を持つ時代になった。以下の研究会とセミナーでは、本稿での視点から発表と議論を展開する。  (研究調査部 藤井建人)


■関連セミナー、関連レポート


2022年1月26日(水) 15:00~17:00
広告とメディアの動向と展望 2021-2022

2022年2月8日(火) 10:30~12:00
インサイドセールスの機能と役割
-マーケティング部長2人が語るニューノーマルの営業-

2022年2月9日(水) 13:30~15:00
webと地域活性化による事業創造
-自社拠点を生かして事業を継続的に生む仕組み-

2022年1月31日(月)~2月10日(木)
page2022オンラインカンファレンス・セミナー 計12本
基調講演・プレセミナー 2本
カンファレンス・セミナー 10本

関連レポート
2021年11月24日 マーケティングの潮流、BtoCとBtoBの視点から

印刷白書2021

印刷白書2021
印刷産業の現在とこれからを知るために必携の白書『印刷白書2021』
第1部「特集 with/afterコロナの印刷ビジネスを考える」
第2部「印刷産業の動向」「印刷トレンド」「関連産業の動向」
第3部「印刷産業の経営課題」
ご注文はこちら発行日:2021年10月22日
ページ数:144ページ
判型:A4判
発行:公益社団法人日本印刷技術協会
定価:9,900円(9,000円+税10%)
JAGAT会員特別定価:8,300円(7,545円+税10%)

解説

印刷産業のこれからを知るために必携の白書『印刷白書2021』。
印刷・同関連業界だけでなく広く産業界全体に役立つ年鑑とするために、「印刷白書」は3部構成となっています。
印刷業界で唯一の白書として1993年以来毎年発行してきましたが、2021年版ではSDGs/ESGなどの項目を追加しました。
印刷関連ならびに情報・メディア産業の経営者、経営企画・戦略、新規事業、営業・マーケティングの方、調査、研究に携わる方、産業・企業支援に携わる方、大学図書館・研究室・公共図書館などの蔵書として、幅広い用途にご利用いただけます。

第1部「特集」では「with/afterコロナの印刷ビジネスを考える」をテーマとしています。
コロナ禍で生じたトピックを整理し、with/afterコロナの時代に対応していく印刷ビジネスとは何か、ニューノーマル時代のビジネスの現状分析と課題解決に取り組んでいます。
第2部「印刷・関連産業の動向」、第3部「印刷産業の経営課題」では、社会、技術、産業全体、周辺産業というさまざまな観点から、ビジョンを描き込み、今後の印刷メディア産業の方向性を探りました。
印刷メディア産業に関連するデータを網羅、UD書体を使った見やすくわかりやすい図版を多数掲載し、他誌には見られない経営比率に関する調査比較などのオリジナルの図版も充実させました。

CONTENTS

第1部

第1章 特集 with/afterコロナの印刷ビジネスを考える
アフターコロナの印刷ビジネスを考える
情報産業として印刷業界は何を目標にすべきか
新時代の出版ビジネスとは
新型コロナが開けたパンドラの箱
アメリカのダイレクトメール・マーケティング事情から読み解くDM戦略
コロナ禍と印刷業界の2020年を振り返る

第2部
第2章 印刷産業の動向
[産業構造]生産性向上と付加価値創出で印刷ビジネスの可能性はさらに広がる
[産業連関表]産業連関表で印刷産業に関わる全産業の取引を見る
[市場規模]印刷ビジネスの変容と方向 受注から価値共創へのリセット
[上場企業]新たな収益柱の確立に向けて変革を進める上場印刷企業
*関連資料 産業構造/産業分類・商品分類/規模(1)/規模(2)/規模(3)/
産出事業所数(上位品目)/産出事業所数・出荷額/調達先と販売先/
産業全体への影響力と感応度/最終需要と生産誘発/印刷物の輸出入額と差引額/
印刷製品別輸出入額/印刷物の地域別輸出入額/印刷物の輸出相手国・輸入相手国/
経営動向/上場企業/生産金額(製品別)/生産金額(印刷方式別)/
売上高前期比・景況DI/設備投資・研究開発/生産能力/紙・プラスチック/
印刷インキ/M&A

第3章 印刷トレンド
[デザイン]製造技術とデザインを掛け合わせ印刷の新たな価値を創る
[ワークフロー]顧客起点でワークフローを考える
[オフセット印刷/デジタル印刷]印刷ビジネスの潮流とオフセット印刷機、デジタル印刷機の現状と今後
[用紙]地球環境と紙にまつわる価値を再考する
[後加工]コロナ禍で加速する後加工ベンダーのDXと製本業界の実態
*関連資料 デジタル印刷/フォーム印刷業界

第4章 関連産業の動向
[出版業界]ニューノーマルで変わる読書と出版ビジネス
[電子出版]コロナ禍で成長が続く電子出版ビジネスと拡大する電子図書館サービス
[新聞業界]新たなビジネスモデル構築が急がれる新聞業界
[広告業界]インターネット広告の拡大に印刷メディア広告が貢献
[DM業界]BtoBとデジタル連携にも有効なDMメディアの新たな役割
[折込広告他]コロナ禍が変える地域メディアと地域コミュニケーション
[通信販売業界]コロナ禍で初の10兆円市場を達成
*関連資料 出版/電子出版/コンテンツ/新聞/広告/通販

第3部
第5章 印刷産業の経営課題
[SDGs/ESG]経営課題としてのSDGsに印刷会社はどのように取り組むべきか
[地域活性化]アフターコロナに向けて変わるまちづくり
[経営管理]本当の印刷原価をMQ会計の考え方で考察する
[デジタルマーケティング]インフルエンサーが与える影響とインフルエンサーマーケティングが注目される理由
[デジタルイノベーション]アフターコロナにおける真のデジタルイノベーションとは
[人材1]印刷会社の新サービス開発における課題
[人材2]顧客ビジネスのDXと人材
*関連資料 クロスメディア/デジタルマーケティング/人材

●巻末資料
DTP・デジタル年表/年表/『印刷白書』年表/印刷産業&関連団体アドレス

『JAGAT info』2021年2月号

JAGAT info 2021年2月号表紙

特集

JAGAT大会2020オンライン 特別講演報告

顧客とつながる時代のマーケティング戦略 優れた場の設計の重要性 オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員 COCO/株式会社顧客時間 共同CEO 取締役 奥谷 孝司 氏

特別企画

JAGATトピック技術セミナー2020オンライン 開催報告

専務理事 郡司秀明

お知らせ

■まだまだ間に合う! page2021オンライン展示会の楽しみ方

連載

■マーケティング・ナウ 第2回 マーケティング・コミュニケーションを理解する 本間 充

■デジ印奏論 21 デジタル印刷で「RGB印刷」? 星 輪太郎

■経営情報 コロナ時代に求められる印刷会社の「営業」とは(上) 佐藤 穣

■マーケティング情報 コロナ禍でも堅調な印刷会社に共通する戦略 インバウンドマーケティングの有効性と手法 研究調査部 藤井 建人

■技術トレンド グラフィックス 印刷機の時間コストとシリンダ充満度 研究調査部 花房 賢

■デザイン・トレンド トランスレーションズ展−『わかりあえなさ』をわかりあおう コミュニケーションの多様性を体感する展覧会 研究調査部 石島 暁子

■Education コロナ禍によって変化した新入社員の企業意識 CS部 加治 寛子

■デジタル印刷最前線 多方式のテキスタイルプリンティングを武器にデジタル展開を図るパイオニア 堀江織物株式会社

■森 裕司のデジタル未来塾 107 オンラインセミナーの勧め

■エキスパート資格 従業員側から見るコロナ禍の研修・スキル向上 資格制度事務局 丹羽 朋子

■DTPエキスパートのための注目キーワード ユニバーサルデザイン 研究調査部 千葉 弘幸

■クロスメディアエキスパート試験でも役立つ課題解決入門 ショート動画共有アプリTikTokのビジネス活用 影山 史枝

■印刷界OUTLOOK 市場規模 研究調査部 藤井 建人

■キーワード2021 エコーチェンバー 専務理事 郡司 秀明

■西部支社便り 長時間労働、助け合い、疾病就業は労働生産性に影響する 西部支社長 大沢 昭博

■ワールド・プリント・サテライト 2021年ビジネスの主テーマは「ブランディング、信頼、真の人間性」 ほか 研究調査部 丹羽 朋子

■ニュースラウンジ 欧文印刷「Voice-it QRコード音声シール」発売 ほか

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2021年2月15日発行 A4判60ページ

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コロナ禍でも堅調な印刷会社に共通する戦略-インバウンドマーケティングの手法と有効性-

コロナ禍によって対面営業が難しくなった。多くの印刷会社が困難な状況にあるにも関わらず、状況の悪くない印刷会社がある。

 

「コロナ禍で変わる印刷営業」

本稿で紹介するのは、page2021に登壇する企業の事例であり、共通するのはデジタルや工場を使い、引き付けるタイプの営業、つまりインバウンドマーケティングに取り組んでいる点である。

ウェブサイト

ある印刷会社は、コロナ禍以降に自社ウェブサイト(WS)のアクセス数が急増、積極的な新規開拓をしていないのに受注が堅調だ。実はコロナ前からWSの制作・運用を見直していた。その過程で、自社のサービスを棚卸して、WS上にすべて展開、そしてアクセスを分析、弱みを削ぎ落していく作業を進めていたのが功を奏したのである。分析からは、自分たちでも気づかなかった強みが明らかになった。そして全国の潜在的な顧客からの電話やメールでの引き合いが目に見えて増えた。印刷発注者としては、営業に来られても困るが、発注はしたい。

コロナ禍で生まれた、検索してヒットした、信頼できそうな印刷会社にとりあえず問い合わせる、そんな図式が追い風になった。経験者はわかると思うが、WS制作は意外に難しい。上述のように、まず自社サービスの客観的な把握と整理が簡単ではない。業績の堅調なもう1社によると、サービスの棚卸と言っても印刷会社の事業領域は膨大で途方に暮れてしまう。そこでベテラン営業担当者に同行し、営業トークを分析してWSの記載内容との乖離を分析して差を縮めていったという。

工場見学

WSの目的はあくまでも関心喚起に過ぎない。潜在顧客にとって気になる存在になり、問い合せたくなり、話を聞きたくさせるまでが役割だ。次の段階は直接の接点を持つこと。工場見学に招き、WSで見たものを実地に体験させてあげれば不安や疑問は安心に変わる。こうしたデジタルとリアルの連携という意味で、WSと工場見学は印刷会社のマーケティング戦略において連続的に考えるべきものだ。コロナ禍では動画を活用した相当に楽しいオンライン工場見学も生まれた。印刷産業に限らず、工場見学は地域活性化と結びついて相乗効果を高める場合も多い。動画の活用も含め工場のマーケティングにおける役割は相当に広がってきている。

オンライン校正

コロナ禍ではオンライン校正の顧客側での受け入れも進んだ。印刷会社からは活用の巧拙が受注の明暗を分けるとの声も聞かれる。顧客にとって画面上での校正指示は紙より面倒な面もある。しかし感染防止メリットとテレワークとの相性が、面倒さ・煩雑さによるデメリットを上回るケースが増えてきた。ただし画面上での操作習熟には多少の時間と手間を要するし、操作者の方のスキル差もある。したがって普及ではここをいかに手厚くサポートするかである。

これからのマーケティング

本稿で取り上げたウェブサイト・工場見学・オンライン校正は、現代印刷会社におけるインバウンドマーケティングの重要な構成要素といえる。これらオフラインとオンラインをどのように組合せて顧客獲得から顧客維持までの導線を作るか。下記のpage2021オンラインカンファレンスを通して、実際の事例発表と今後の展開を議論する。          (研究調査部 藤井建人)

2 /17(水) 14:00~15:30
〔C5〕Webと地域活性化で顧客を創る
   ~実践! インバウンドマーケティング~

2 /19(金) 14:00~15:30
〔C6〕営業と生産の溝をどう埋める?
   ~ものづくりコミュニケーションの改善手法~

2 /24(水) 14:00~15:30
〔C8〕デジタル時代のローカルマーケティング
   ~withコロナ時代のクロスメディア~

2月はまるまるpage月間!!
2/8~2/28 <オンライン展示会>
2/8~2/26 <オンラインカンファレンス>