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フィールドワークを導入した印刷営業の人材育成事例

人材育成の効果的な学習方法としてアクティブ・ラーニングが注目されている。新人向けの印刷営業育成プログラムに導入した人材育成事例を紹介する。

 

学習効果を高めるアクティブ・ラーニング

人材育成の効果的な学習方法としてアクティブ・ラーニングが注目されている。アクティブ・ラーニングとは、学習プロセスの質を改善し積極的・能動的・対話的な授業や学びの機会である。知識・技能の習得、それを応用し主体的に考え活用できる人材を育成することを目的とする。つまり、講師から受講者への一方的な授業(受動的)だけではなく、ディスカッションやフィールドワークの体験授業を通して、受講者が主体的に参加する学習手法のことである。文部科学省が平成29年に公示した「新しい学習指導要領の考え方」にも、このアクティブ・ラーニングの視点を取り入れた授業の推進を掲げている。

 

【アクティブ・ラーニングのイメージ図】

アメリカ国立訓練研究所が発表した研究結果に学習の定着率と学習過程の相関関係を示した「ラーニングピラミッド」の考え方がある。その図からも理解できる通り、教える、ディスカッションする、体験することが学習プログラムに組み込まれることで、学習効果が高まる。

 

 

フィールドワークの導入で印刷、営業知識を生きたスキルへ

アクティブ・ラーニングの手法を取り入れた、新人・未経験者向けの印刷営業教育プログラムの事例を紹介する。

本プログラムは、新人、中途(印刷業界未経験)の営業職を対象に、20日間かけて、印刷営業に必要な基本スキルを習得できることを目的とする。
印刷営業に特化したプログラムのため、以下のような業界特有のカリキュラムがある。

 

【印刷営業育成に必要な基礎プログラム】

●印刷知識
①印刷物製作工程 ②文字処理・画像処理・デザイン ③DTP制作実習 ④印刷実習

●営業基本スキル
①営業活動の基本プロセス ②営業の役割と業務の流れ ③人間関係づくりのコツ
④情報収集+ヒアリング ⑤印刷見積り ⑥印刷仕様設計 ⑦デジタルデータ受発注
⑧デジタル×紙の視点 ⑨印刷の強みをマーケティングに活かす考え方

一般的な営業手法だけではなく、印刷技術知識から印刷営業の基本的な流れや見積もり方法、そしてこれから必要なデジタル×紙×マーケティングの視点まで網羅している。印刷営業に求められるスキルや知識も多様化し、それに合わせて学習する範囲も増えている。一方、業界未経験の新人は、印刷用語や営業の役割については、講師からの講義を通して学ぶことはできても、実体験が少ないためその講義内容を理解することが難しい。そこで2019年度から「講義×フィールドワーク」によるアクティブ・ラーニングを取り入れたプログラムを取り入れた。

大きなポイントは、実際に存在するクライアント企業に対して、ヒアリングから提案までの印刷営業の一連プロセスを実体験することである。架空の事例によるワークショップではなく、「リアル」「生」の体験をすることが肝となる。

 

【印刷営業×フィールドワーク事例】

 

 

前回は、東京中野区にある居酒屋をフィールドワーク先に選定し、集客における課題のヒアリングからスタートした。そこから販促計画の考案、集客用印刷物の企画デザイン制作、見積書及び印刷用データの作成、実際に印刷機で出力、プレゼンテーションまでの一連の流れを行う。講義で得た知識をフィールドワークで活用することで生きた印刷及び営業スキルを学べる。また、実際に2グループにわけて行ったが、発表したコンセプトは異なっており、ヒアリングした内容次第で提案内容は180度変わることも、企画提案における難しさを肌で感じてもらえた。

 

印刷業界の課題でもある、新人の早期戦力化として人材育成は重要である。その効果を高めるためには、印刷技術、営業知識を実務で活用できるところまで昇華していくことが必要だ。JAGATは、人材育成×アクション・ラーニングを取り入れた教育プログラムを強化することで、業界の発展の一助になれば幸いである。

JAGAT 塚本 直樹

■関連講座
第48期印刷営業20日間集中ゼミ(2020年5月11日~6月5日)

印刷新人教育に必要な体験型人材育成の重要性

新入社員のモチベーション向上、早期離職の防止、即戦力化を図る上で重要な体験型人材育成の重要性とは。

4月1日の朝、新調されたスーツに身を包まれた新社会人がいつもの満員電車に加わる。緊張、期待、挑戦、不安など様々な感情が車内を新鮮な風で彩り、また新たな1年が始まるなぁ~と実感し背筋もピンと張り直る時期が今年も訪れた。

■新人教育に力を入れる企業の増加

新卒採用市場は、依然として売り手(学生)優位市場が続いている。企業の人事担当者は、優秀な人材の確保、内定辞退、ミスマッチによる早期退職の防止に努める必要がある。
マイナビ調べ(2020年卒マイナビ学生就職モニター調査 2月の活動状況)では、企業を選ぶときに特に注目するポイントは「社員の人間関係が良い(43.7%)」が最も高く、次いで高いのが「自分が成長できる環境がある(39.2%)」だ。成長できる仕事やスキルアップのための人材育成の機会を与えることが、新入社員のモチベーション向上、早期離職の防止、即戦力化を図る上で重要なポイントとなる。

JAGATも4月より新入社員向けの研修を開催し、印刷業界の新たな仲間が多数訪れている。売り手市場のため、1社当たりの新入社員数は減っているが、ひとりに対する研修投資を増やしている企業が多い印象だ。中小印刷企業は、何年ぶりかの採用や、年間の採用数も数名であれば多い方であり、新入社員の入社は企業にとって特別であり育成に力を入れる企業が増えるのは当然である。

一般的には、ビジネスマナー、印刷基礎知識、自社の工場研修を4月中に行い、5月頃から現場に配属されるケースが多い。しかし中小印刷企業の現場は、ぎりぎりの人数で仕事をこなしているため現場での十分な新人教育の時間をとれないことや、毎年新卒社員を採用していない企業は教育慣れしていないなどの課題を持つ。そこで中小企業も外部の研修機関を利用しての新人教育を行うケースが増えている。また、大企業と違い採用人数が若干名のため、ひとり一人に集中して教育投資を行うことができる。4~6月を教育期間と捉えて、数カ月も外部の研修機関に新人を派遣するケースもあり、こうした新人向けの長期研修には厚労省の助成金「人材開発支援助成金」も活用しやすく利用ケースは増えている。

★人材開発支援助成金
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

■体験学習×新人教育

ただし、長期研修に派遣する上で課題となるのが受講する新人のモチベーションの維持である。昔は講義を一方的に聞く知識習得型のスタイルが主流であったが、時代の流れとともに変わり、今の新入社員に適した研修スタイルは「体験型」である。財務研修であればゲーム性の高いマネジメントゲーム、新規事業立案であればグループワークショップによる仮想企画コンテストなど、体験型コンテンツの人気が高い。体験型研修は、ただ面白いからモチベーションを維持できるのではなく、講義で学んだことを実体験して活用することで知識を血肉にしやすいメリットがある。また、架空の事例による体験ではなく、より現実的な体験であれば教育効果は高くなる。

★アクティブ・ラーニング「リアル体験×学習プログラム」が織りなす高い学習効果
https://www.jagat.or.jp/archives/57962

印刷営業であれば、印刷営業のプロセスとしてヒアリングから企画、見積作成、プレゼンテーション、印刷物の仕様書作成、デザイン依頼、データ入稿、印刷出力、納品までの一連の流れがある。印刷営業のプロセスは複雑であり講義を受けただけでは、実感が湧かないことが多い。実際に印刷物を発注してくれているクライアント企業に協力を仰いで、このプロセスを実体験しながら研修を行うことで、よりリアルな体験学習をすることができる。

JAGATも印刷企業の新人向けの長期研修として、「印刷営業20日間集中ゼミ」を開催し5月で47期目の開講を迎える。(今年は既に例年を上回る人数の参加を予定しており、長期に渡る研修への新人派遣で即戦力化を狙う企業が増えている。)
今回は、カリキュラムを大幅にリニューアルし、「知識×実践で体系的に営業プロセスを学ぶ」をコンセプトに、リアル体験学習として中野区にあるワインダイニングバー「I‘m Chicken(アイムチキン)」の集客用印刷物の制作を題材に、ヒアリングから企画、見積作成、プレゼンテーション、印刷物の仕様書作成、デザイン依頼、データ入稿、印刷出力、納品までの一連の流れを実体験するプログラムを加えた。

<印刷営業プロセスのリアル体験学習題材>

山梨ワインと鳥料理が主力のワインダイニングバーに対する営業支援の体験
 ●店 名  :I‘m Chicken(アイムチキン)
 ●住 所  :東京都中野区本町5-41-8 (中野富士見町駅から徒歩3分)
 ●営業時間 :18:00~翌1:00(LO:24:00)
 ●座 数  :24席
 ●業 態  :居酒屋、イタリアン、鳥料理

★ 知識×実践で体系的に営業プロセスを学ぶ流れ

印刷技術、営業知識を学び、その知識を実際のワインダイニングバーのフィールドスタディで活用することで、印刷営業のプロセスを肌感覚で理解してもらうのが狙いである。新たに印刷業界へと入る新入社員は業界としても重要な資産である。そうした人材のモチベーションを高め少しでも早く戦力にするための側面支援をしていくのは、JAGATの役割の一つと考える。こうした体験型学習のアプローチも増やしていきたい。

教育サポートチーム 塚本 直樹

●第47期 印刷営業20日間集中ゼミ(リニューアル)5月開講