【クロスメディアキーワード】近距離無線通信技術

掲載日:2016年9月12日
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近距離無線通信技術とは

無線通信におけるネットワーク技術は、距離により分類される。約100km 以上の距離で通信を行う「無線WAN(Wide Area Network)」、約100m から約100km までの「無線MAN (Metropolitan AreaNetwork)」、約20m から約100m までの「無線LAN(Local Area etwork)」、人間のまわりの機器をネットワークする範囲として10〜20m 程度をカバーするものを「無線PAN(Personal Area Network)」という。
近距離無線通信技術は厳密な定義はなく、一般的に、「無線PAN」などの通信距離が数10m くらいまでの近距離無線通信の技術をいい、その主な技術として、「ZigBee」「Bluetooth」「無線LAN」などがある。

技術の比較

近距離無線通信技術と類似技術には、「ZigBee」「Bluetooth」「無線LAN」「電子タグ」が考えられる。「ZigBee」は、伝送スピードがほかと比較して250kbpsとあまり高速ではない。さらに、消費電力は一番小さく、接続数は約6 万5000 個と一番多い。自律的にメッシュネットワークの構築が可能で、メッシュリンクとスターリンクを組み合わせたマルチホップネットワークの構築が可能である。「Bluetooth」は、伝送スピードが1Mbps とある程度の速さを有している。また、消費電力については120mW とほぼ中間であり、接続数は最大7 個と少ない。音声とデータのアプリケーションで利用でき、ネットワークへの参加・離脱が容易である。さらに、周波数ホッピングによる無線技術間の干渉を軽減する。「無線LAN」は、伝送スピードが、11、54Mbps と高速である。しかしながら、消費電力は3Wと一番大きく接続数は、最大32 個と少なめである。「電子タグ(パッシブタグ)」は、消費電力が0Wと電力が掛からず、接続数はタグのみのID などコードリーダーであり1 個のみである。リーダーとの間で、データの読み出し、書き込みが可能である。薄くて小さなタイプは、モノに埋め込むことができる。電源を内蔵しない「パッシブタグ」のほかに、電源を有し自ら電波を出す「アクティブタグ」がある。

NFC(ISO/IED 18092)

「NFC(Near Field Communication)」とは、ソニーとフィリップス(現NXP セミコンダクターズ)が共同開発した、近距離無線通信技術の国際標準規格である。「FeliCa」や、「MIFARE(ISO/IEC 14443)」などの非接触IC カードの下位互換性がある。使用周波数は、FeliCa」や「MIFARE」などと同様の13.56MHz である。「NFC」の通信規格を搭載している機器同士の双方向通信が可能で、携帯電話やパソコン、家電などの機器へ展開されている。今後も、アクセス制御やヘルスケア、情報の受発信、顧客維持、決済、物流など、幅広い分野での活用が見込まれている。
NFC活用のメリットは以下の通りである。①「NFC」による双方向通信は、「かざす」以上の複雑な操作を必要としない。②産業から環境まで、広範囲での利用に適している。③NFC技術はISO やECMA、ETSI標準を見据え、オープンかつ標準的である。④「NFC」は、「Bluetooth」や「Wi-Fi」などの無線技術において、機器のセットアップを容易にする。⑤NFC送信は短距離(数センチメートル)でありセキュリティーにおいて優れている。⑥既存の非接触カード技術と互角性がある。⑦「NFC」は、セキュアなアプリケーションをサポートするための機能が組み込まれている。

NFC の主な機能

①カードエミュレーション機能
「NFC」が搭載された機器は、さまざまな非接触ICカードやICタグの規格と互換性があり、それらと同等の機能を持つ。IC カードやIC タグのインフラを利用したアプリケーションの構築が可能である。
②リーダー・ライター機能
「NFC」が搭載された機器は、リーダー・ライターとして、さまざまな非接触IC カードやIC タグの読み書きができる。
③端末間通信機能<P2P>
NFC 通信規格対応のIC チップ「NFC チップ」を搭載している機器やカードを10cm 以内の近距離まで近づけると、106Kbps〜424Kbps の速度で双方向通信が可能になる。

ハンドオーバー

NFC 端末間ペアリング対応の機器間では、大容量のデータを送受信する際、通信手続き(ペアリング)だけを「NFC」で行い、「Bluetooth」や「Wi-Fi」など別の高速な規格に引き継ぎ、通信を行うことができる。これをハンドオーバーと呼ぶ。
①Bluetooth ハンドオーバー
大容量データを転送する場合、高速で通信距離も長い通信規格である「Bluetooth」を使用することがある。通信距離が長いワイヤレス通信規格では、その長い通信距離のため、盗聴や改ざんなどの危険性が大きくなる。そのため、「Bluetooth」のペアリングは非常に煩雑であり、一般ユーザーからは敬遠されることが多い。「NFC」は通信距離が10cm 以下と短く、機器同士をかざす(10cm 以下に近づける)という明示的
な行為をトリガーに、安全な通信を行うことができる。NFC 通信で、「Bluetooth」のペアリングを行うことで、容易に安全で高速なデータ転送が可能となる。
②Wi-Fiハンドオーバー
無線ブロードバンド(Wi-Fi)サービスの利用者が増加している。Wi-Fi ブロードバンドサービスの多くは、①あらかじめ月額のサービス利用料を支払い、サービス事業者により発行されるIDとパスワードで利用するもの、②フリーで利用できるものがある。①を利用する際は、利用するサービス事業者向けのアクセスキー(Wi-Fi接続に必要な情報)を端末へ設定しておかなければならない。「NFC」に対応したWi-Fiブロードバンドサービスが普及すると、サービス利用者はアクセスキー登録済みのIC カードをNFC 搭載携帯電話やパソコンにかざすだけで、サービスが利用できる。

JAGAT CS部
Jagat info 2013年2月号より転載