【クロスメディアキーワード】Webアクセシビリティー

掲載日:2016年11月28日
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コンテンツのデジタル化は、異なるメディアの融合や新たなメディアの開発へと可能性が広がっている。

Web コンテンツのデザイン

Web コンテンツのデザインに対し、多くの利用者は「視認性」や「可読性」、「判読性」などを求めている。Web コンテンツを制作する際には、奇抜なデザインだけを追求するのではなく、利用者が閲覧する目的の理解が必要になる。複数のコンテンツで構成されるWebサイトは、何度も利用してくれる「リピーター」の確保が重要視され、コンテンツの品質がそれを左右する。

ユーザビリティー

Web サイトやそのコンテンツが分かりにくい構成の場合、利用者は別のサイトを閲覧することを選ぶ可能性が高まる。感覚的に理解できなければ、「戻る」や「ホーム」をクリックしてしまう。利用者の視点を重視しないことは、「リピーター」を逃してしまうことにつながる。
「ユーザビリティー(Usability)」とは、「使える」「便利な」などの意味がある。また、製品やサービスの使い勝手は「ユーティリティー」と「ユーザビリティー」により構成されていると考えることができる。「ユーティリティー」は機能や性能を示し、利用者から見た製品の長所に関する程度を表す。一方「分かりにくさ」などの短所が、どの程度であるかを表すことができる。旧来の製品開発では、高い「ユーティリティー」の付与に力を注ぐ傾向があった。その結果、「ユーティリティー」の高さに反し、機能や性能を使い切れない事象も起きた。現在は、「ユーティリティー」の高さと共に、高い「ユーザビリティー」も求められるようになっている。
Web サイトやそのコンテンツに「ユーザビリティー」が不可欠となる理由の一つに、表示された直後に利用方法が理解できないことで、時間の浪費を招くため、価値のないサービスと判断し、別のWeb サイトを選択することが少なくないことが挙げられる。デザイナーが自身の欲求や利害関係者からの要求を優先することは、利用者の立場を考えず、「ユーザビリティー」を無視してしまう結果を生じる可能性がある。制作者側の欲求重視や組織構造を反映したWeb サイトを設計するのでなく、利用者の立場や視点を考慮したサイト構造の実現が望まれる。

アクセシビリティー

「アクセシビリティー」とは、「利用しやすさ」といった意味を持ち、すべての人が利用できる環境の構築を示す。障がいの有無に関係なくWeb ブラウザーを使用することで、Web サイトを構成するさまざまなコンテンツやサービスから、必要な情報の抽出やベネフィットを享受できるようにすることが重要である。目的としている情報への経路には、多くの問題が横たわっている可能性がある。その問題をできる限り解決する姿勢が、Web サイトの構築に必要であり、「アクセシビリティー」の向上につながる。「アクセシビリティー」は、障がい者や高齢者だけを対象としているだけでなく、健常者にも効用を与えることができる。

Web アクセシビリティー規格

メディアをコーディネートする際にWeb サイトを対象とするのであれば、「Web アクセシビリティー」の基本的な要件と内容を理解した上での、Web サイトの構築や運用に関する適切な提案が求められる。
「Web アクセシビリティー」とは、Web を利用するすべての人が、年齢や身体的制約や利用環境などに関係なく、Web サイトにより提供されている情報に問題なくアクセスし、コンテンツや機能を利用できることを指す。Web サイトの構築やリニューアルにおいても、「Web アクセシビリティー」を意識した企画や設計が必要となる。

JIS X8341-3

2004 年にJIS 規格化された「Web アクセシビリティー」『JIS X8341-3 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス-第3 部:ウェブコンテンツ』は、2010 年に改定が行われた。改定内容は、2008 年に勧告となったW3C(World Wide Web Consortium)のアクセシビリティー指針である「Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)2.0」に基づいている。改訂前のJIS規格は、日本の標準であるという位置付けであったが、2010 年度版は、世界標準に則した内容ということにもなる。

音声

音声の再生については、すべての人々に向けた「Webアクセシビリティー」の向上を実現するために、利用者による主導を優先させることが望まれる。2004 年版では、必須項目として「自動的に音を再生しないことが望ましい。自動的に再生する場合には、再生していることを明示しなければならない」とされている。
2010 年版ではさらに詳細を明示し、「自動的に音を再生しない。再生する場合は、3 秒以内に停止させる。またはWeb ページの先頭に停止できるコントロールを提供する」ことを求めている。
また、音声に対して付随する文字による情報の追加も求められる。さまざまな配慮により、初めてすべての人々の「Web アクセシビリティー」の向上が実現できると考えられます。

JAGAT CS部
Jagat info 2016年5月号より転載