日本の形と色を描く

掲載日:2021年12月6日

会員誌『JAGAT info』の表紙デザインは現在「日本の形」をテーマにしている。制作の意図と手法を紹介する。

『JAGAT info』は、JAGATの会員誌であると同時に、印刷関連産業の総合情報誌でもある。だから表紙では、印刷の仕事に馴染みのあるものをテーマに設定している。特に印刷文化を語る上で欠かせない、色と形の魅力を表現してきた。

参考:
『JAGAT info』バックナンバー
Facebook「日本印刷技術協会(jagat)」
Twitter「JAGATの研究会」

「日本の伝統色シリーズ」(2012年6月号から2013年まで)

JAGAT info 2012年11月号表紙JAGAT info 2013年3月号表紙

左:2012年11月号「代赭(たいしゃ)、黄丹(おうに)、芥子色(からしいろ)」などで寄木細工風に。
右:2013年3月号「萌黄(もえぎ)、白緑(びゃくろく)、若竹色(わかたけいろ)」などで霞模様を構成。

「世界の色シリーズ」(2013年4月号から2018年12月号まで)

JAGAT info 2016年11月号表紙JAGAT info 2018年6月号表紙

左:2016年11月号「カンボジア王国」 ヒンドゥー教の寺院遺跡「バンテアイ・スレイ」のレリーフ。
右:2018年6月号「ロシア連邦」 FIFAワールドカップ開催に因んで。国花の一つであるカモミールなどをあしらう。

「日本の形シリーズ」(2019年2月号から現在まで)

世界各地を回ってまた日本に戻ってきたが、今度は色ではなく形をテーマにした。
当初は、伝統文様や工芸品をモチーフにと考えていたが、次第に対象が広がり、植物、動物、歳時に因むものなどを自由に選ぶようになった。
いずれも、本誌が発刊される毎月15日頃の時候に合わせたモチーフと色合いを心がけている。

直近の2021年11月号の表紙を紹介する。

JAGAT info 2021年11月号表紙

テーマは「吹き寄せ」。
さまざまなものが寄せ集まった状態を表す言葉で、工芸・料理・芸能などの世界で使われてきた。着物の文様では主に秋の風物が描かれるが、通年で着られるよう、他の季節のものを加えることもあるという。
今回は、銀杏・桜・楓の紅葉・黄葉、松葉、雪華文様、梅の花、桜の花をあしらってみた。

制作に当たっては、まず紅葉や花など素材の輪郭を鉛筆で描いて、スキャン。
Photoshop上で、輪郭線を白に変えた。
彩色には、Photoshopのブラシ機能を使う。
輪郭線をはっきり残したまま彩色したいので、Photoshopのレイヤー機能を利用し、描画の層を重ねて作業する。
下から、下地となる濃色のレイヤー、下地の上に塗り重ねる明るい色のレイヤー、白い輪郭線のレイヤーの順に、三層を重ねた。

カエデの描画

レイヤーを細かく分けると最初は手間であるが、後々の修正が楽になる。

素材の彩色が終わったら、構図に沿って配置していく。
一点一点が風に舞っている様子を表現するため、同じ素材が並ばないように、素材それぞれが違う方向を向くように。そして全体として一つの流れができるようにと考えながら、素材を配置していった。


日本の文化、自然の風物は多彩で奥深い。これからも、さまざまなテーマを見つけ、表現も磨いていきたい。

読者の方々には、難しいことは抜きにして、本を手に取った一瞬、和んでいただければ幸いである。

(JAGAT 研究調査部/『JAGAT info』制作担当 石島 暁子)

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