電子写真方式の印刷でのトナーの耐性について

掲載日:2014年8月17日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:電子写真方式の印刷でのトナーの耐性について

A:トナー1粒の大きさは数ミクロンあり。このうち印刷インキは顔料が全体の約20%を占めていますが、接着樹脂というバインダーが80~90%を占めています。電子写真の場合、顔料は5~10%で接着樹脂が多いことがトナーの特長です。その他に裏移りを防止するために離型剤も入っていますが、ワックスが入っているものと入っていないものもあります。 
  電子写真方式は静電気を利用して画像を形成する方式のため、帯電が大きな特性要因となります。それを達成するためにいろいろな工夫がされており、例えば帯電制御剤なども入っている場合もあります。最近は流動性や転写性・ドラムのクリーニング性を確保するために外部の添加剤が入れられており表面に細かいチタン等が着いています。

  平版インキはいろいろな分野で使われ様々な耐性がありますが、電子写真方式では主に社内利用と普通の文書等を想定しているため様々な耐性には対応していません。電子写真のトナー像を保つには耐光性と可塑性とドキュメントオフセット性の3つの要因があります。
  耐光性とは、オフセットインキと同じように紫外線で劣化することをいい、通常のトナーよりも劣化しにくいものをいいます。トナーの耐光性はインクジェットのそれより性能が良く、オフセットインキのそれと同等以上です。これはポリマーが入っているためです。しかし、長期間、外に出しておいて使えるというものではありません。例えば、屋外に放置しても数ヵ月は褪色しないことをメーカーでも試験していますが、これはあくまでも実績ベースです。
  可塑性とは、塩化ビニールやアクリル樹脂に含まれている可塑剤とトナーの大部分を占めているバインダーの樹脂がミクロに混ざり合うことによりトナーの樹脂が軟化することです。トナーが軟化すると、トナー像が接触している物質に付着して汚くなってしまうことがあります。可塑剤は、主に塩ビを中心としたプラスチックを軟らかくするために用いられ、大部分の可塑剤は酸とアルコールを合成したエステル化合物です。塩ビの書類フォルダーやデスクマットにも使われていて、これらとトナーで作られたプリントが直接触れるとトナー像が軟化して付着してしまいます。
したがって、トナーを使ったプリントは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等、可塑剤を含まないものや塩化ビニールでも可塑剤を制限して付着を防止した製品を使うことが勧められています。
 可塑剤の他に、有機溶剤がトナー像を溶かすことがある。もともとバインダーがポリマーのため溶かすおそれがあり有機溶剤で出力物を擦ったり有機溶剤にさらしておくと、同じようなことが起こる。保存するときには、可塑剤や有機溶剤など化学的な影響に注意しなければなりません。
  ドキュメントオフセット性とは、何枚も重ねて荷重をかけていたり暑いところに置いておくと、トナーが軟化して色移りすることです。例えば車の中などは夏場になると60℃とか70℃になります。そうした場所に放置すると、ばりばりと音がしてトナーが移ることがあります。最近では電子写真で写真アルバムを作ることがありますが、そうした負担に注意しないとドキュメントオフセットが発生することがあります。長期保存するためには、高温多湿を避けて荷重がかからないようにするということが必要です。

 

(2009年6月1日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)