出版業界でのICタグへの取り組みはどうなっていますか

掲載日:2014年8月17日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:出版業界でのICタグへの取り組みはどうなっていますか

A:出版業界では過去にも様々なかたちで議論・検証されています。製本工程でもICタグを装着しやすいものやしにくいものがあり、すべての本に均等に装着するのが難しい状況は変わっていません。また、コスト面からもその運用にはまだ課題があるようです。
そうした中で最近の検証例では2007年2月に経産省からの委託を受けて業界団体が流通実験をしました。内容は店頭での立ち読みが実際の販売に繋がるかた流通システムの中での検証がおこなわれました。 
  立ち読みの検証はいくつかの大手書店で実施されました。棚にアンテナを仕込み本にICタグを付けて、陳列場所によって立ち読みの回数がどう変わるのか、タイトルによって立ち読みの回数と実際の売れ行きの関係がどう違うのかなど客が手に取った回数がわかるという実験を行ない、ここでは手に取った回数が多いから必ずしも売れるとは限らなかったという結果が出ています。
  ある雑誌に10万部のICタグを装着したときに製本作業上の問題は特になかったようです。流通は、多様な販売/取引条件ということで、同じ本でも買取か返品可能かといった条件をICタグに入れられるので、書店や流通にとしては便利です。
ある新聞に掲載されていた記事の中で、ドイツでは返品が10%だが日本は40%とありました。これはどの業種でも同じだが、返品するには伝票で確認するという手間がかかります。返品を減らせるだけでも手間やコストを減らせる。結果として、業界の課題である返品率の減少へも繋がります。
  万引き防止への期待も大きい。万引きは年間400億円あり、国内売上の約2%に達します。普通の小売だと2%万引きされると利益がなくなることもあります。日本の小売のロスは1兆1,000億円あり、そのうち57%は万引きだという。比率からでは世界1位です。

  出版業界でのICタグの本格導入はまだまだのようですが、確実に進捗しているようです。これからもより多くの実証実験を繰り返し、何らかのかたちで実用化に向けていくことが期待されます。

  

(2008年6月9日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)