消費意欲向上のための新たなコミュニケーション手法とは~リアルとネットで売り上げをアップするには

掲載日:2017年1月26日

流通・小売業では昔からPOSによる販売情報を収集して、データ分析を行っていた。消費者の意思決定が変化していく中で、O2Oやデータ活用がますます重要になっている。

■リアルとネットの次世代コミュニケーション

デジタルメディアが浸透して、意思決定の仕組みが変化している。購買の目的が決まっていれば、利便性と価格が決定要因になる。その場合ネットによる購入に軍配が上がるだろう。しかし、だからこそリアルな店舗は、対面販売の利点を活かすやり方がある。販売担当には、当然プロフェッショナルな知識とコンシェルジェとしての役割が要求される。

生活者を取り巻く基本環境が変化したことによって、「O2O」「ローケーションベース(位置情報)」「オムニチャネル」などのキーワードが語られている。いずれもデジタル化されたデータをどのように分析し、活用していくか、新しいコミュニケーション手法の話である。

リアルな店舗の強みになるのは、思いがけない商品に出会えたり、イベントに参加できたりする、他にはないエクスペリエンスの提供であろう。売り場に価値を持たせる手法であり、対面型のコミュニケーションを通して、サービスや商品の最適な提供を行う。その店のファンになり、リピート率が上がり、やがて支持者(Advocator)に成長していく。提供側は、実店舗はこれだけ楽しいということをアピールしていく。

■デパートで遭遇したできごと

数年前のことだが、親戚の子供の卒業と就職祝いに何か贈り物をしようとデパートに行ったことがある。あれこれ物色をした結果、通勤用バッグを購入することにした。店の人に相談をしながらいくつか候補になるものを目の前に並べた。現物を手に取って見てアドバイスを受けるとさすがに薦め方が上手なのか、なるほど使い勝手がよさそうに思えてきた。

いざ購入しようとすると「ではただ今調べてまいります」と言って奥に引っ込んだと思ったら「申し訳ございません、この商品は品切れです。お取り寄せで4日ほどかかります」。これにはびっくりしたが、別の商品を頼んでみるとやはり4日かかりますとの返事であった。さらに別の商品を頼んでみたらやはり同じであった。3商品とも在庫切れだったのである。なぜ老舗のデパートともあろうものが在庫のない商品を平気で陳列しているのか理解できなかった。

少々意地になって、今度は別のデパートに行って同じことをしてみた。ところがそこでも店員のセリフまでもが全く同じ。「申し訳ございません、この商品は品切れです。お取り寄せで4日ほどかかります」とのことであった。

取り寄せるのに4日かかるのがスタンダードだということはわかったが、せめて在庫の有無を明示しておいてほしい、それがホスピタリティではないか。品物さえ決まっていればネットで買ったほうが早くで確実だ。

卒業・入学シーズンにバッグは売れ筋なのだろう、だから品薄になっている。人気商品で売れ行きが好調なのかもしれない。だったらそれを上手に利用する手段を考えるべきではないか。実店舗の優位性をもっと生かした展開だって可能なはずだ。

■できることを考える

コネクトムの「toSTORE(トストア)」では、ユーザーの現在位置情報をもとに、最寄店舗・取扱い商品・在庫状況などの情報を配信している。バッグが欲しいという店頭購入ニーズに対応し、どこに行けば在庫があるのかも教えてくれる。さらに予約取り置き機能もあるという。

こういったサービスが出てくるのもデジタルならではの強みである。リアル店舗にどのように送客促進するか、どのように購買意欲を高めるか、ITを駆使し、お互いの利点を上手に展開していけば、相乗効果的に販売促進に役立つ。

ネットと実店舗のハイブリッド型でいくことも一つの選択であろう。特に百貨店などは、書店と同じようにリアル店舗で、探していたもの以外に目に飛び込んでくる魅力的な商品に出くわすことがある。いわゆるシャワー効果が見込めるのも立地条件に優位性があるからだ。

それはレコメンドとも違うリアルならではの出会いの場であるはずだ。だから人はわざわざ時間をかけて実店舗を訪れて、実物を手にしてから購入する。その長所をうまく生かさない手はないはずだ。

本屋さんのように手書きPOPを作ってもいい。あるいは、本屋大賞のような「デパート店員が選ぶ社会人一年生に贈る通勤バッグアワード」などを百貨店業界全体として考えてみてもいいのかもしれない。

どこ(だれ)に対して何をどう売っていくべきなのか、印刷会社がトータルソリューションをしていくならば、販売促進のお手伝いは重要だ。自分がその店の客として訪れた時にどう思うか? O2Oなども真剣に考えてみる必要がある。顧客と一緒になって知恵を絞っていくべきであろう。

(JAGAT 研究調査部 上野寿)

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