人材育成はどうする?効率化できる?~RPAに対するQ&A

掲載日:2018年7月30日

先日開催したRPAセミナーでは参加者から操作スキルを持った人材育成、コスト、効果などについて多くの質問が出た。今回はその内容を一部紹介する。

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2018年7月3日、JAGAT印刷総合研究会で「RPAによる業務効率化の可能性を知る~ロボットによる自動化はビジネスにどんな影響をもたらすか」を開催しました。RPA導入支援を多数行っているアビームコンサルティング安部慶喜氏と、国内シェアNo1のRPAツール「ビズロボ」を提供するRPAテクノロジーズの大角暢之氏がRPA普及の背景や国内の導入状況、今後の可能性などについてデモを交えて紹介しました。

今回、講演の最後に行われた質疑で多くの質問があげられていました。そのなかから3つ、紹介します。

Q:RPAに興味はあるが、ツールを使いこなす人材が社内にいなければ意味がないように思う。
どれくらいのスキルの人であればツール操作スキルを取得できるか。

ツールの操作はそれほど難しくはない。目安としては、コーディング経験やExcelマクロ作成経験がある方であれば十分操作可能だ。そのような経験がなくてもRPA開発専任の担当者を立てれば1カ月もあれば開発できるようになる。大手企業はコンサルなどを雇って開発を外部委託することも多いが、300名規模のある企業では、若手の経理担当者が2名ロボットを作っている。ほか多くの企業が自社でロボットを作成している状況だ。

ツールベンダーは大体操作研修を提供している。Webサイトから情報を抽出したりループで繰り返しするような基本的なロボットであれば2~3日で開発できるようになる。メールソフトを起動してメールを送ったり、外部システムを起動したりする応用的なロボット作成は少し難易度が高い。ただロボット作成は「習って終わり」ではなく、OJTトレーニング的に実際にいくつか作成しながら教えてもらうことが必要になる。

現在、地方で説明会を行ってはいるが、限られたエリアだけになってしまうという課題がある。1人の技術者が個別の意向を聞きながら教える形の10名程度の規模での定期開催も検討している。

Q:クラウドで提供しているサービスについて知りたい。通常のビズロボとの違いは何か。また従量課金制となっているが、具体的に何に対する課金なのか

クラウドサービスの「BizRobo! DX Cloud(以下DXクラウド)」は、ビズロボとして初めて提供するクラウド型サービスになる。通常のビズロボは長期契約前提で1年ごとに契約する。DXクラウドは利用環境が整ったサーバをレンタルする形なので契約すればすぐに利用することができるし、半年で不要になれば解約もできる。

基本的にオンプレ(自社サーバ型)で使える機能は全て利用できるが、処理能力に一定の制限がある。

他社製品でRDAと呼ばれるデスクトップ型のRPAツールも存在するが、ログは個別のPCに保存されるため管理することが難しい。サーバ型はログを管理できロボットも集中管理できるというメリットがある。操作者の不正などのリスクを考えるのであればサーバ型のほうが適している。

従量課金については、操作のステップ数に対する課金になる。あるロボットが10ステップで作業する場合、3回稼働すると10×基本金額×3となる。働いた分だけもらうという意味では人間の派遣と一緒である。

Q:OCRの精度が高くなったといっても読み取り制度が100%というのはありえない。OCRを使ったドキュメントRPAを導入しても、人間がチェックする必要がでて効率化にはならないのではないか。

OCRツールは、認識精度を数値で表している。例えば98%の精度であれば「みなし」で100%とし、データとして登録してしまう。後から別のロボットがエラーチェックしてカバーする運用を取ったりする。
またOCRの認識制度が80%以上だったらそのまま、70~80%であればオレンジ、それ以下であれば黄色にするなどの設定にして、色が付いたところだけ人間が見ていけばよい。

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RPAは大掛かりな投資が不要なほか、既存システムをいじらずに済む、大掛かりな開発が不要といったメリットがあります。操作スキルを持った人材の確保・育成や、自社業務に沿ったロボット作成に対するハードルを越えてしまえば導入は比較的容易で、効率化の手段として大きな可能性を感じました。

最近ではRPAロボットを売買できるマーケットプレイスも登場しています。1から作らなくてもロボットを利用できる仕組みや、何社かが一緒にロボットを作成してシェアするという選択肢など、普及に向けて徐々に整備が進むことが期待されます。

(JAGAT 研究調査部 中狭亜矢)

関連イベント(次回の研究会)

「AI×ビジネス」創出を考えるカンファレンス2018

2018年8月23日(木) 16:30-18:00

これから不可欠になるAI(人工知能)について。企業はどうAIを活用していけばよいか、人材育成はどうするかなどを議論する。(参加費:5000円/JAGAT会員・印刷総合研究会会員:無料)