デジタル印刷活用のポイントはICT活用と顧客メリットのアピール

掲載日:2018年4月9日


日本印刷産業連合会(日印産連)の活動の一つであるデジタルプレス推進協議会では、毎年「印刷業界におけるデジタル印刷に関するアンケート調査」を実施している。3月29日に開催された調査報告会から調査結果の概要を紹介する。

アンケート調査は、印刷業界9団体から抽出した707社に調査票を郵送し、180社から回答を得た(回答率 25.5%)。回答企業の85.0%(153社)で608台のデジタル印刷機を保有、1社平均4.22台(保有企業で台数未回答の企業を除いて計算)であった。方式別の内訳は、トナー(粉体)が371台、トナー(液体)が12台、大判インクジェットが157台、枚葉(高速)インクジェットが27台、連帳インクジェットが37台、オフセット機搭載インクジェットが4台であった。

受注品目の上位は、1位が事務用印刷、2位が報告書、論文、議事録など、3位がチラシとなっている。注目されるのはDMで、現状の売上では6位であったが、成長率が高い順、将来性が高い順ともに2位となっており、今後の飛躍が期待される。

デジタル印刷機の活用度が高い企業にはどのような特徴があるのか、月間印刷枚数が多いグループとそうではないグループとで回答結果を比較した。月間印刷枚数がカット紙で30万枚以上、ロール原反で5万平米以上の企業を「月間印刷枚数が多い」グループと定義した。該当する企業は35社で、デジタル印刷機の保有企業の23%にあたる。
両グループの回答が明確にでたのが、デジタル印刷の仕事を受注するにあたり顧客に訴求できているポイントは何か、という設問である。

ほぼすべての項目で印刷枚数が多いグループの回答がそれ以外の回答を上回った。唯一、逆転したのが「一部単価の安さ」である。「印刷枚数が多くはない」グループが16.9%に対し、「印刷枚数が多い」グループは8.6%と倍以上の差となった。「印刷枚数が多い」グループは「安売り」によって受注量を確保しているのでないことが明確になった。

回答者から寄せられたフリーコメントのなかにも、「印刷業界側で自ら、(悪い意味で)オフセット印刷とは違うことをPRしてしまう。小ロットに短納期で対応できるが、品質的には劣り、価格は安く出来るのだという価値基準にとらわれ過ぎており、それが普及の足枷になっている」という意見があった。安易な値下げ対応ではなく、顧客にデジタル印刷ならではの価値を認めてもらい、その価値に対する対価をいただくという意識、取り組みが必要であろう。

アンケート結果においても、それは明確にでており、「在庫レス(印刷枚数多:42.9%、それ以外:21.2%)」「エコロジー(無駄な廃棄がない)(印刷枚数多:20.0%、それ以外:10.2%)」、「豊富なバリエーション(印刷枚数多:20.0%、それ以外:9.3%)」といった項目で大きな差がでている。また、短納期、即納対応も印刷枚数が多いグループの方が重要視している。

また、自社での実施施策についても両グループの傾向を比較してみた。もっとも特徴的に差がでたのは、「IT力の強化」である。印刷枚数が多いグループが40.0%、それ以外のグループが22.9%と二倍近い差となった。また、「Web入稿システム」、「面付け/出力データ作成の自動化」、「自動組版」、「リモート校正」という項目で明確な差がみられる。

前述の訴求ポイントのところで、印刷枚数が多いグループは短納期、即納対応を重視していると述べたが、これらの項目は、短納期、即納を実現するための施策でもある。デジタル印刷のオンデマンド性をさらに強化するIT活用や自動化は普及促進のための大きなポイントといえそうだ。

フリーコメントにおいても「Web、ITとの融合により顧客の業務支援サービスを展開する。結果として、受注シェアの拡大、関係性の強化を図る。単なる印刷物の受発注にとどまらないお互いに相乗効果があるような関係を築く。そのために、まず自社がIT、クラウドを使いこなさねば、説得力が持てない」という意見が寄せられている。

なお、報告書については日印産連のホームページからダウンロードが可能である。

(JAGAT 研究調査部 花房賢)