先日、ある製本会社に現場改善のサポートで長年お世話になっている講師とお伺いした。
昨今の印刷業界の話題は創注、多角化など新しい取り組みによる売上増や人手不足に対応する自動化などが中心で5Sをはじめとする地道な現場改善の話題は少ない。
しかしながら、久しぶりに改善の現場に立ち会うとその大切さを再確認することができた。
講師が大切にしていたのは、社員に「強制」するのではなく「納得」してもらうことだ。日々の清掃や整理・整頓は会社のためでもあるが、それをすることで自分たちにもメリットがあることを働く人の目線で丁寧に説明していたのが印象的だった。
例えば、朝出社して、さぁ仕事をしようと思ったら、刷り本を積んだパレットが置き場の奥の奥に置いてあって、前にあるパレットをどかすのに手間取ってなかなか仕事が始められないことがあるよねという感じだ。「あるある」というエピソードがちりばめられた話しをされるので非常に説得力がある。クラフトテープやスパナなどの共用品を使うときに取りに行くのが面倒なので、機長さんがそれぞれ自分の手元に置いておくことを「巣箱」にため込むという言い方もされていた。
また、現場がすべきことと経営者がすべきことの切り分けが明快で、経営者が「空いた時間に機械を整備しろ」というのはナンセンスであり、定期的にメンテナンス時間を確保するのは経営者の責任と明言していたのも印象に残った。
設備の予防保全の取り組みにおいて大事なのは継続することで、継続するためには仕組みが必要となる。仕組みとは、メンテナンス時間の確保(明確化)であり、メンテナンス項目の明示(マニュアル化・チェックリスト化)である。マニュアルは担当者本人にしかわからないようではダメで、写真などを入れて誰にでもわかるようにする。こうしたマニュアルを作る過程においても多くの気づきや学びが得られる。
5S活動においても継続が重要なので、無理な目標、できない目標は立てない。その代わり、立てた目標は必ず守るようにする。改善にあたっては、メンバー全員で現場をまわり、問題だと思ったら写真を撮る。全員でまわることで担当者では当たり前と思って気づかなかった点に気づける。写真を撮ることで改善のビフォア・アフターの比較ができ、継続の動機付けになる。
今回、訪問した現場の皆さんも心のなかでは働く環境をきれいにしたいと思っていたようで、講師のレクチャーの後、あそこをやろう、ここをやろうという声が聞こえてきた。働きやすい環境でイキイキした現場は離職防止にもつながるし、採用にも有利に働くだろう。活力ある製造現場が利益を生むということを再確認できた。
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(研究・教育部 花房 賢)