第23回東京アビリンピック開催報告
弊会で競技専門委員を務める東京アビリンピックのDTP競技について報告する。
2025年2月15日、令和6年度第23回東京障害者技能競技大会(東京アビリンピック 主催:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 東京支部)が東京障害者職業能力開発校(東京都小平市)にて開催された。今大会では、全13種目に対して事前にエントリーした99名が競技に臨んだ。
2013(平成25)年度より東京大会で採用されているDTP競技には、毎回10名ほどの参加者がエン
トリーしている。今回は9名のエントリーがあり、隣接する職業能力大学校のDTP制作設備を使用して実データの制作に取り組んだ。
DTP 競技では、制作条件を記載した制作課題が当日に示され、各競技者のPC に用意された使用素
材(画像・イラスト・テキストなど)を基にデザインと印刷用データの制作を行う。競技時間の1時間45分以内に全体のデザインレイアウトから素材の加工まで段取りよく行う必要があるため、相応の経験値が求められる競技である。
また、課題の設定と評価基準は、各都道府県大会や全国大会の課題と大きく異なることがないように設定されている。東京大会では、デザイン制作技能とDTP制作技能をできるだけ均等に評価するように調整しているが、地域によってはデザインの比重がかなり大きい大会もあるようだ。そうした地域の優秀競技者の作品を拝見すると、要素を自ら作り込むなどの高いデザイン性を持った作品も多く、実務におけるデザインの豊富な経験がうかがえる。
課題のテーマは「食育」
今回の題材は、食育の啓蒙普及のためのイベント告知ポスターであった。使用素材は、開催当日に
会場で主催者から支給される場合と、事前課題として画像やイラストなどを各自で用意してもらう場合がある。
昨今、ストックコンテンツの利用が一般化しつつある傾向を踏まえ、今回は例年よりも多様な素材を支給することとし、事前に支給素材の利用規約を確認したうえで臨んでもらうよう各競技者に案内を行った。
制作者の取り組み姿勢と結果
JAGAT 主催のDTP エキスパート・マイスター実技試験は各自の制作環境で取り組んでもらうため、制作者の実際の取り掛かりの姿勢までを見ることはできない。アビリンピックでは、緊張した面持ちで会場入りしながらも、実際に競技スタートとなると物おじすることなく(その暇もなく、ともいえるが)、各自が集中して制作に取り掛かる様子が見て取れる。
制作与件を読んだ後に全体像のラフスケッチから入る人や、素材の選定に比重を置く、あるいは素材の加工に比重を置く人など取り組み方はさまざまであるが、1時間45分という限られた時間をフルに活用し、段取りよく制作を進める姿が見られた。
そして、出力紙をパッと見た各競技委員の第一印象での意見が即一致した作品が金賞を受賞した。
訴求力があり、なおかつバランスの取れたデザイン表現が特徴で、デザイン制作技能で高得点となった。また、デザインは高評価にもかかわらずデータ制作技能の面で減点が重なる人が毎回多いのだが、この受賞者はデータ制作力もほぼ満点に近い出来映えであった。
こうした基礎力に加えてデザイン力も発揮した方が受賞したことは、印刷用データ制作のプロフェッショナルを追求するDTP エキスパート認証試験の主催側としても喜ばしい限りだ。この経験が今後の活躍の一助となることを願っている。
(JAGAT丹羽朋子)
(JAGATinfo 2025年3月号より一部加筆修正のうえ転載)