【資格者インタビュー】脳脊髄液減少症で療養中も次の仕事のために

掲載日:2019年2月14日
このエントリーをはてなブックマークに追加

渡辺 博一 氏 DTPエキスパート

第50期DTPエキスパートを取得した渡辺博一さんは現在、脳脊髄液減少症という病気に苦しめられている。この病気は脳と脊髄の周りを満たす髄液が少なくなることによって、頭痛・めまい・首の痛み・耳鳴り・視力低下・全身倦怠感などのさまざまな症状が現れる病気だ。渡辺さんも頭痛がひどく、集中力も続かない、長時間起きて居られないなどの症状があり、継続的に業務を行うことが困難だ。

「この病気はあまり知られていないし、また症状が表に出ずに、見た目では病気と判断しづらいために、やる気がないなどと根性論で片づけられてしまい、なかなかその辛さが理解してもらえないのです」という。

それでも、体調の許す限り体力を落とさないためにもリハビリを兼ねて興味あるセミナーやイベントに参加するなど、体調が回復した時に役立つようにと、高い意欲で知識習得に励んでいる。

実務を通してさらなるスキル習得の必要性を感じ資格取得へ

渡辺さんは大学で機械⼯学を学んだ後メーカーを経て、独学でDTP ソフトを習得して就職情報誌の誌面制作の仕事に就いた。同時期に専門学校でDTP を体系的に学習した。もともと学生時代には埼玉県の印刷会社でインターンシップを経験しており、印刷という仕事には親近感を持っていた。

仕事をしていく中で、さらなるDTP の知識やスキル習得の必要性を感じて2006 年にはDTP 検定II種を取得した。また、その頃に大手印刷会社の友人にDTP エキスパートを有する人が、社内でも一目置かれているという仕事ぶりを聞き、よりレベルの高い資格としてDTP エキスパートの資格取得を意識するようになった。その後、印刷会社に転職し、刷版業務を担当することになった。

実際に印刷の版作りを担当するようになると、Mac・Windowsで誌面制作していた経験だけでは、良い印刷物を作るための知識が足りないことを実感する場面が幾度もあった。

渡辺さんは、自分が担当する工程だけではなく、制作工程全般の知識がお客様の満足できる印刷物制作には不可欠だとの思いを強くする。さらにその職場では、いろいろと渡辺さんにアドバイスをしてくれる尊敬する先輩がDTPエキスパートだったことも資格取得意欲を高めた。しかし、脳脊髄液減少症を発症し、長期の傷病休暇を取り、治療に専念したが、期間内に回復せず退職して療養することになった。現在、頭痛などの症状に悩まされる中でも、回復後、仕事に復帰するために向上心、問題意識を持って勉強に取り組んでいる。

資格取得後もレベルアップを

「これまでの就職情報誌でのデザイン・DTP 制作、印刷会社での刷版と生産管理の経験、専門学校での学習の成果を整理し、自分の知識と技量を客観的に評価してみようと思ってDTP エキスパート試験を受験することにしました。体調面・体力面など不安な要素がありましたが、JAGATのスタッフによる試験当日のサポートがあったので、安心して試験に臨むことができました」(渡辺さん)

試験に合格したことは、復帰に向けての自信になっているとのことだ。また、DTP エキスパート試験に合格したことによって、改めて自分の知識をもっとレベルアップさせる部分も見えてきた。

「カラーマネジメントの重要性を再確認しました。以前はあまり意識していなかったグラフィックカードやモニターのキャリブレーションや写真撮影時の照明(色温度)、Color Checker の必要性を再認識しました。資格を取ったことで、仕事を再開するときには、資格にふさわしいだけのレベルで仕事ができるように、これからも体調をみながらセミナーやイベントに参加して勉強や情報収集をしていきたいと思います」

病気療養中にもかかわらず復帰を目指し、知識習得に励む渡辺さんには、一日も早く病気を克服し、活躍を期待したい。