注目が集まるミドルマネージャーの経営幹部への育成

掲載日:2019年6月11日

働き方改革、入管法改正等の社会環境の変化。デジタルの波、マーケティングとの連携等ビジネス環境の変化に伴い、印刷業界の経営環境は大きな変換期を迎える。トップダウンの意思決定だけでは、変化に対応しきるのは難しくなり、近年注目されているのが、ミドルマネージャーを社長の右腕となり次世代を担う経営幹部へと育成することだ。

■不足する次世代の経営幹部人材

2020年には団塊世代の経営者が70歳代に突入し、経営層の世代交代を迎える過渡期となり、事業承継、後継者問題が迫る。そして、後継者の多くは、まだ経験の浅い若手経営者であり、今日の変化の激しい経営環境を乗り越えるための幅広い経験と能力が不足しているケースもあるだろう。よって、後継者に加えてそれを支える右腕の存在が大きな鍵となる。

リクルートマネジメントソリューションズの人材マネジメント実態調査によると、組織・人材マネジメントの問題として、「次世代の経営を担う人材が育っていない(82.7%)」が8割を超えた。次いで「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている(78.4%)」が続き、若手人材の早期戦力化によるミドルマネジメントの負担減とミドルマネージャーを経営幹部へ育成することが課題となっていることが浮き彫りになった。

一方、日本能率協会による経営者に求められる資質に関するアンケートで、社員を対象に「ビジネスパーソンとして最終的に目指したい姿」を調査したところ、「社長を支える参謀として貢献する役員を目指す」との回答が半数を超えている。つまり、人材マネジメントをする上で、会社が経営幹部へキャリアアップするための明確な道筋と、それをサポートする教育訓練の機会を設けることが、社員のモチベーションアップに繋がることがうかがえる。

■経営幹部に求められる資質とスキル

経営幹部に求められるものとして重要なのは、社長の思いを社員全体へわかりやすく伝え、社員の思いを汲み取り社長へ伝えること。つまり、経営と社員を紡ぐ接着点になることである。そのためには、社長と共通言語で話ができるための経営全般の知識スキルとマインドを身につける必要がある。また、社員と共通言語で話すためには、管轄している事業部だけではなく、営業、制作、製造、総務等、各部門のマネジメントの大枠を理解することも必要だ。
また、変化の時代に対応するためには、イノベーティブな志向とそれを実現するための実行力が伴う必要がある。各種調査レポートを見ても、次世代の経営幹部に求められることとして、新規事業の開発や改善による効率化が挙げられている。そのいずれを行うにも革新性や実行力が不可欠な能力になる。

これらの能力を習得し、社長の右腕となる経営幹部になるためには、実践で経験を積むのはもちろんであるが、基本的な経営知識やノウハウを学習した上で、経験を重ねることでその効果は何倍にも高まる。ミドルマネージャーを経営幹部として早期戦力化を図るには、幹部研修のような機会を設けるのもひとつの選択肢だ。また、外部の研修機関を利用すれば、同じ経営幹部候補生と横のつながりを持つこともできる。社外の風に当たることで新しい価値観や考え方を得ることができるのは大きな利点となる。印刷業界も世代交代の波が押し寄せている中、次世代の経営幹部の育成について考えてみてはどうだろうか。

JAGAT 塚本直樹

<関連講座>
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https://www.jagat.or.jp/archives/61871