「JAGAT印刷産業経営動向調査」より新技術、サービスの導入状況、満足度、導入意向を紹介する。
JAGATが毎年、会員企業を対象に実施している「印刷産業経営動向調査」の2025年度の調査結果から新技術/サービス/システムの導入状況、満足度、今後の導入意向についての結果を紹介する。本調査回答企業の平均従業員規模は115名、1社当たりの平均売上高は24.9億円であり、中堅クラスの印刷会社が中心である。
新技術、サービスの対象は以下に示す18項目である。経年変化を追いかけることを重視しつつ、状況の変化にあわせて少しずつ項目の入れ替えを行っている。今年度調査から協働ロボットという項目を一昨年度から生成AI(画像系)と生成AI(テキスト系)の2項目が追加されている。

設問内容としては、(1)現在導入しているかどうか、(2)導入している場合の満足度、(3)今後3年以内に導入予定があるかどうかの3つである。満足度については、A:大変満足、B:やや満足、C:普通、D:やや不満、E:非常に不満の5段階評価で回答してもらい、A:5点、B:2点、C:0点、D:-2点、E:-5点という重みづけで点数換算して満足度を数値化している。

図2は導入率が高い順に並べたものである。第1位は9年連続でバリアブルデータ印刷であり、導入率は67.4%(前年 65.3%)であった。第2位は動画制作で55.4%(前年 52.0%)、第3位は生成AI(テキスト系)の51.1%(前年33.7%)となっている。生成AI(テキスト系)は前年から約17%導入率が上がっている。ChatGPTの一般化やMicrosoft CopilotやGeminiの普及、そして会議の議事録作成などへの業務利用の浸透が背景にあるだろう。生成AI(画像系)は37.0%で前年同様9位であった(前年32.7%)。前年度から生成AI(テキスト系)の導入が大きく伸び、生成AI(画像系)が前年並みにとどまっている理由として、AIによる画像生成には意図せぬ著作権侵害や肖像権侵害のリスクがあり、ビジネス用途に慎重になっていることもあるようだ。法整備が現状に追いつかないという状況はしばらく続きそうであるが、先進的にAIに取り組んでいる印刷会社では、AI使用について独自に覚書のようなものをお客さまと取り交わしているケースも見られる。
今年度から追加された新項目協働ロボットは、導入率3.3%の最下位であった。協働ロボットとは、安全機能やセンサーを備えることで、従来の産業用ロボットに必要だった安全柵を置かずに人と同じ作業エリアで一緒に働くことができるロボットのことをいう。オフセット輪転機では、結束された印刷物をパレットに積み上げるロボットが広く導入されているので、それと区別する意味で協働ロボットとした。現状の導入率は低いものの、今後さらに加速していくであろう人手不足への対応策として導入が進んでいくことが想定される。今後の推移に注目したい。

図3は、2020年からの導入率の経年変化で上昇傾向にある項目を中心にピックアップしたものである。前述の生成AI(テキスト系)の伸びが目立つほかでは、RPAの導入率が7.8%から23.9%へと約3倍増、資材料発注の電子化で導入率が10.8%から23.9%へと倍増となっている。伸び率の高さはプロセスレスプレート、営業支援ツール(CRM/SFAなど)、動画制作と続いているが、伸びは鈍化傾向にある。

図4は今後3年以内に導入を予定しているとの回答が多い順に並べたものである。第1位は生成AI(画像系)で22.8%(前年も1位で24.5%)、第2位は生成AI(テキスト系)で16.3%(前年は3位で22.5%)、同率で並んで資材料発注の電子化(脱FAX)(前年も2位で23.5%)であった。上位3位の顔ぶれは前年と変わらないものの生成AI(テキスト系)と資材料発注の電子化の導入予定率は大きく下がっている。普及期から安定期を迎えつつある。導入意欲が低いバリアブルデータ印刷、オンライン校正、動画制作、自動組版、自動面付けは、いずれも導入率は4割を超え定着したといえそうだ。追加項目の協働ロボットは7位で8.7%であった。現在の導入率が3.3%であり高い導入意欲が感じられる。

図5は前述の重みづけで満足度を数値化し、高い順に並べたものである。0ポイントが中心(可もなく不可もなく)となる。満足度の点数が最も高かったのはプロセスレスプレートで2.08ポイント。第2位はバリアブルデータ印刷で1.45ポイント。第3位は自動面付で1.33ポイントであった。
満足度が急上昇したのが、第5位の生成AI(テキスト系)で前年の0.21ポイントから1.25ポイントとなった。「流行だから導入した」のではなく、「実際に使って成果を感じ始めている」ことを示す結果と考えられる。
生成AI(画像系)については満足度は前年より高まっているものの0.57ポイントの11位に留まっている。活用への慎重さがうかがえる。
第7位のデジタル加飾は、前年の0.69ポイントから0.90ポイントへ上昇、第14位の営業支援ツールは、前年の0.00ポイントから0.34ポイントへと上昇した。導入当初は満足度が低く、普及率の上昇とともに運用がこなれるにしたがって満足度が高まるという傾向に合致する結果となった。協働ロボットの満足度は最下位の▲3.00ポイントであったが、これについても普及が進むとともに満足度の上昇がみられることが予測される。
「JAGAT印刷産業経営動向調査」 結果をまとめた報告書は、10月に最新版が刊行予定です。
(研究・教育部 花房 賢)


