DTPエキスパート認証試験の出題範囲より、キーワードを解説する。 今回は、[コミュニケーションと印刷ビジネス]カテゴリより、『情報デザインにおけるリサーチとコンセプト』を取り上げる。
出題のポイント
情報デザインは既存の印刷物制作の工程に留まらず、初期段階や実施後の段階にも視野を広げることで、新たな事業領域の展開が期待できる。そのために必要なリサーチとコンセプトの重要性について理解を深める。
キーワード:デザインリサーチ 定性的調査 定量的調査 ペルソナとシナリオ コンセプト化 アイデア コミュニケーション設計 VUCA
情報デザインの目的は、「情報をあるコンテクストの中に置くことにより、価値のあるかたちへ可視化し、再構築すること」である。
代表的なプロセスとして、以下が挙げられる。
情報の視覚化を主な業務とする印刷物制作者は、「④コンセプトの検討と視覚化」「⑤詳細デザイン仕様」が主な業務領域である。
本来デザインプロセスは「要件指定された受注案件を印刷物として制作する」工程のみで完結するものではない。情報デザインの目的を明確にし、それを実現することを検討するには、プロセスの初期段階にある「①デザイン計画」「②デザイン情報の収取と整理・分析」「③ペルソナ・シナリオと目標の設定」、さらにデザイン制作後の「⑥デザイン評価とフィードバック」にも理解を深め、課題解決に向けた効果をもたらす視点を持つ必要がある。
ユーザー行動のシナリオ設定を行うことで、ユーザーとの情報接点を考慮したコミュニケーション設計が可能となる。情報の活用場面によっては、印刷物だけでなく各種デジタルメディアも含め、特性を生かしたメディア選択も検討できる。
近年、過去の事例を基にしたビジネス展開が適用できない場面が増加している。VUCA、つまり消費者ニーズが短期間で変化する変動性(Volatility)、気候変動や地政学リスクやIT技術の急速な変化等を背景とした不確実性(Uncertainty)、高度なグローバリゼーションによるサプライチェーンの複雑性(Complexity)、そして立場や価値観の多様化により解釈が多数存在することによる曖昧性(Ambiguity)がその背景にあるとされる。論理的思考は重要であるものの、過去の実績に基づいてデータと論理で解決策を求めるだけでは限界があるともいえる。
そうした中、製品やサービスをデザインする際に、生活者や社会が置かれている状況に対し、データに顕れていない潜在ニーズへも理解を深め、価値創出の機会を発見するデザインリサーチが注目されている。情報産業においては、「情報を価値のある形へ可視化するデザイン」に対し、「どのような情報を提示し可視化することが生活者や社会に価値をもたらすかを問題定義するデザイン」といえる。
このように、広義のデザインにも視野を広げ、コンセプトとリサーチの手法を知っておくことは、今後の情報産業の新事業創出にも重要なスキルとなる可能性がある。
(JAGAT 丹羽 朋子)
(JAGATinfo 2025年9月号より一部転載)
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