DTPエキスパート認証試験の出題範囲より、キーワードを解説する。 今回は、[コミュニケーションと印刷ビジネス]カテゴリより、『受発注者間の合意形成におけるコンセプトの言語化』を取り上げる。
出題のポイント印刷ビジネスのありかたが変化し、受発注者間の合意形成と信頼構築の重要性が高まる。抽象的な概念と具体化のプロセスにおける言語化の役割について理解を深める。
キーワード:コンセプト 抽象化 具体化 合意形成 意味の共有
印刷物の企画は、印刷物の種類によってどの段階から印刷会社が関わるかが異なる。
しかし、いずれの場合でも受注段階において、印刷物によって達成したい目的、すなわちゴール設定を共有することが求められる。 さらに近年のビジネス環境では、発注者の目的が印刷物単体で達成されるケースは減少している。特に生活者とのコミュニケーションが求められる広告・販促物では、SNSをはじめとしたデジタルメディアの効果が高まっており、印刷物のみで課題解決を図るケースは稀になっているといっても過言ではない。
このような状況のもと、印刷の「発注者→受注者」という一方向の関係から脱し、協業者としてパートナーシップを強める必要がある。そのためには、専門用語を使いこなせるというだけでなく、「かたちになっていない概念」を共有できることが重要である。具体物の制作に取り掛かる前に、プロジェクト全体を貫く観点について共通認識を持つことで、一貫した価値の提供が見通せる。例えば広告・販促物や雑誌のレイアウトデザインでは、発注者であるブランドオーナーや編集者が持つ世界観、つまり抽象化された概念を共有することで、レイアウトデザインだけでなくコピーライター、撮影者、イラストレーター、またWebバナーやSNS用アイコンに至るまで、各要素作成を担うスタッフ間の認識合わせにつながる。一体感のある精度の高いデザインは、ターゲットである生活者・読者への訴求効果を高める。
出典:『新版DTPベーシックガイダンス』を参考に作成
概念の共有が不十分な場合、発注者が求めるイメージを的確に捉えないままデザインが進行してしまうことがある。デザインカンプの段階、あるいはそれ以降に認識の齟齬が明らかになると、制作工程や納期に影響が出るなど、取引上のトラブルに発展する可能性がある。初期段階で調整ができていないことで、印刷物以外のメディアに展開する際にも逐一デザイン要素の詳細にわたって発注者の指示を仰がざるを得なくなれば、円滑な関係を築き信頼を獲得するのは難しい。
抽象的な概念を共有するためには、言語化が効力を発揮する。言語化とは「人の脳内にある思考やイメージを、他者に理解可能な形で言葉として表現すること」を指す。関係者との対話により相互理解と関与を深めるだけでなく、自身の思考整理にもつながるなど、コンセプトそのものをよりよくするフィードバックも期待できる。
デザインカンプは具体物として共通認識を確認する手段ではあるが、そのデザインが持つ「意味」を共有するには言語化が欠かせない。受発注者間の信頼関係を構築するうえでも、「意味」の共有は極めて重要である。
(JAGAT 丹羽 朋子)(JAGATinfo 2026年4月号より一部転載)
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