最新調査による印刷会社の経営動向2019[業績・戦略・設備]

掲載日:2019年8月15日

本調査は印刷会社の(1)業績(2)戦略(3)設備を総合的に調べている。業績と戦略を同時に調べることで、どのような戦略が業績を高めるのか、好業績企業はどのような設備・技術・サービスに取り組んでいるかも明らかにできる。

印刷会社の経営~収支・財務造・戦略・投資の観点から


業績の概要
印刷会社の売上高は4年連続の減少。そしてその減少幅は3年ぶりに縮小、加速度的な売上高の減少には一定の歯止めがかかった。営業利益率は5年連続の1%台と低迷が続く。経常利益率は9年ぶりの1%台に低下、印刷経営は金融危機時以来の水準に立たされる。しかし劇的に受注が減少した当時とは異なり、生産性は3年ぶりに改善、わずかながらも自己資本の増強は続き、設備への過度の依存からの脱却も確認される。苦境にあっても経営構造の改善はコントロールされている点に、過去とは違う可能性を見出せる。


収支構造と売上高
売上高の分野別には、包装の好調、総合・出版の復調気配、商業の微減、事務用の続落といった構図になっている。商業の下げ幅は小さく、総合は3年ぶりの増加。出版は16年連続の減少ながら、ほぼ前年並みといってもいい小幅な減少幅にとどまった。事務用はマイナンバー需要など特需剥落が継続。売上高が過去と比べて全般にそれほど悪くないのは、数量要因の悪化を価格要因の改善が補完していることによる。一方で、材料の安定調達や外注マネジメントといった課題が顕在化、採算性の新たな足かせとなっている。


財務構造、人的資源と設備投資
従業員の平均年齢は史上最高。非正規従業員割合は史上最高を記録した昨年と同様の水準。そして従業員1人当りの機械装置額は史上最少に。各社で働き方改革への対応が進む様子もテレワークの導入状況や導入意向の高さとして現れる。長期化する採用難も背景に、外国人の在籍する印刷会社が一定程度あることも明らかになった。従来の設備型とは異なるビジネスモデルの構築に向けて、あらゆる経営資源を動員しなくてはならないが、デジタル印刷機の導入に頭打ちの兆しが見えるなど、明確な投資対象がなく蓄積した自己資本を活用しきれていない一面も浮かび上がる。


戦略面と業績良好企業のかたち
現時点で業績良好企業の概要は以下のようになる。BPO(業務受託)・ワンストップサービスなど、印刷にとらわれることなく顧客の課題解決を支援する経営スタンス。営業面では新規の技術・サービスを既存の顧客に投入するパターン。足を運ぶプッシュ型から工場見学や自社サイトに来てもらうプル型へのシフト。生産面では、品質の向上・多能工化・標準化を重要テーマと認識。そして強化を重視する工程は加工と企画・マーケティング。100以上に及ぶ戦略・設備に関する調査の結果についてはさらに分析を進め、9月下旬のセミナーと報告書で全体像を明らかにする。

(JAGAT 研究調査部 藤井建人)

関連セミナー&レポート

・9/25・26・30開催セミナー 最新調査にみる印刷経営と戦略、設備2019【東京・大阪・愛知】
・報告書「JAGAT印刷産業経営動向調査2019」(2019年9月下旬発刊予定)