頑張る印刷会社の実践事例から学ぶ新サービス開発への取り組み

掲載日:2019年8月16日

印刷会社では、今後のビジネスの展開を見据えて、中長期的な将来の柱となる新商品・新サービスの開発が求められている。企業の事業特性や強みを活かしつつ、新しいビジネスのアイデアを多面的に掘り起こすには何をすべきだろうか。 

JAGATが主催する「印刷ビジネス開発実践講座(全7回)」では、印刷ビジネスの創発に向けて、講師が1社1社直接フォローしながら、実際に自社の案件を素材として、講師と受講者が一緒に方向性を考えていくグループコンサルティングのスタイルをとっている。
JAGATでは、8/2(金)に、本講座のメソッドのポイントを紹介するとともに、実際に受講して新サービスを立ち上げた参加企業が実践プロセスを紹介する「印刷ビジネス開発手法と実践者が語る事例公開」セミナーを開催した。新しいビジネスの構築は、具体的な開発手法を知らなければ容易に実現できるものではないが、今回の実践事例では、印刷会社による開発プロセスの過程や社内全体でメソッドを共有し、浸透させるための取り組みなど、その後の展開についてもお話いただいた。

第1部では、「印刷ビジネス開発実践講座」の講師を担当する河島弘司講師(バリューマシーンインターナショナル代表取締役)が、100社を超える印刷会社の新サービス支援を行った実績にもとづき、新商品・新サービスを立ち上げるためのメソッドの基本を解説。印刷会社が取り組むべき考え方として、「隠された強みの発見」や「顧客視点アプローチの導入」、「新サービスのパッケージ化」などを取り上げ、要点を解き明かした。

■新サービス開発への取り組み
第2部では、昨年本講座に参加してその開発メソッドを体験し、終了後、実際に2つの新サービスを立ち上げた株式会社小西印刷所(兵庫県西宮市)の平野勝三氏(生産部次長兼システム制作課課長)と伊勢田順一氏(生産部東京制作課課長)にご登壇いただき、開発に向けた取り組みの過程を伺った。小西印刷所は兵庫県西宮市に本社があり、従業員数100名、大正15年創業以来93年の実績を持つ。社内一貫生産による印刷物製作以外にも、データベースを活用したシステム構築・WEB・動画作成や媒体制作などを手がけ、医療・食品・教育関連をはじめとして、多くのICT(情報通信技術)ソリューションサービスの導入実績がある。

お二人とも受講当初は、具体的な商材を用意していたわけではなく、講座の中でメソッドを学び、様々な課題に取り組むうちに、次第に方向性を固めていったという。
西宮本社でシステム開発の責任者として、データベース構築の提案と開発を担当する平野氏は、個人のノウハウを蓄積して、ナレッジベースとして一括管理するためのデータベース「ノウハウためる君」をリリースした。新サービス開発に取り組む上で、自社の強みと弱みを分析する手法によって、市場における自社のポジションやお客様のニーズを整理したことが役立ったという。大手競合に比べ大規模なシステム開発は難しいが、小規模でも用途を絞り込むことによって、逆にカスタマイズ化が容易になる。弱みを追求することによって、強みに変えることが出来ることに気づいた。またデータベース自体のコンセプトも「ノウハウためる君」という分かりやすいネーミングを設定したことによって、注目度が高まった。技術や機能優先で考えていた自社の商品をユーザー目線で見つめ直し、様々な角度から売れる商材としてどのように打ち出すかを考え抜いた体験は大きな収穫になったという。

東京支店でSP全般のディレクション業務を担当する伊勢田氏は、法人向けの名刺編集クラウドサービス「Oh! Meishi」を立ち上げた。受講する直前に名刺印刷を失注するという経緯があったものの、講座の中でフロントエンド(集客商品)からバックエンド(本命商品)につなぐという考え方に触れ、再度名刺印刷を掘り下げることに決めた。オンデマンド機が1台もない状態からスタートしたため、開発に取り組むかたわら、承認を得るところから生産体制づくりまで、社内調整が大変だったという。講座終了後、名刺サービスは、4月に正式にリリースして、現在までに6社受注している。そのうちの1社では、発注元である総務人事部がIRにも携わっている関係から、株主総会用の映像制作などの仕事が受注できた。フロントエンドの名刺で集客し、バックエンドへつなぐというシナリオがすでに形になりつつある。

■社内へのフィードバックが活性化につながる
受講中に、社内へのフィードバックの必要性を感じた二人は、講義が終了するたびに、研修で体験したワークを他の社員と共有する機会を作り、ひとりひとりへのフォローを続けた。受講した人間だけでなく、習得したメソッドを、出来るだけ社内に浸透させることが大事だと考えている。
「名刺サービスを受注した6社のうち、4社は2年目から5年目くらいの20代の営業が受注しています。若手が新しいサービスを創ってリリースするということに積極的になってきている。彼らのスピード感が、ベテラン社員にも刺激になる。こうした社内全体の活性化が、今回受講したことによって生まれた副産物かもしれません。」

10/11からスタートする実践講座では、参加企業が実際の自社の案件をもとに、全7回を通して、新しいビジネスへと作り上げていくプロセスを体験することになる。講師が1社1社フォローするだけでなく、同業他社の参加者同志による意見交換からも多角的な視点を得ることで、プランニングの精度があがる。各回のインターバル期間中にもメンバー専用のグループウェアを通じて、講師にいつでも相談可能など、長期にわたる取り組みをフォローする体制を用意している。

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