新サービス開発に必要な捨てる勇気

掲載日:2018年4月6日

ターゲットを絞ることはリスクではなく、新たな見込み客を獲得できる機会である。

何でもできるの曖昧さ
JAGATは、印刷企業向けの新サービス開発支援として「印刷ビジネス開発実践講座(全7回)」を2017年10月から2018年3月までの6か月間で実施した。同講座は講師からの一方的な講義ではなく、参加している印刷企業のビジネスを題材に、講師と受講者が一緒に方向性を考えていくスタイルをとっている。

そこで必ず課題としてあがるのが、ターゲットの選定である。新サービスの開発や販売に関わる当事者は、「自社の印刷サービスを広く全般に利用してもらいたい」といった心理が働く。その結果、全方位的なコンセプト、サービス開発、プロモーション展開に陥ってしまい、いったい誰に対するサービスなのかがボヤケてしまう。

例えば歯医者を探すためにWebで検索する際、「歯医者」で検索する人はあまりいない。仮に、インプラントに興味があるユーザーは、「インプラント 専門 歯医者 新宿」など、インプラントが得意で通いやすい地域にある歯医者を検索する。検索ワード自体は、ユーザーのニーズであり、それに合致した検索結果で表示されたなかで、「インプラント専門歯科医院~実績3,000本~」のメッセージを訴求している歯医者のWebページがあれば、ユーザーがインプラントに対して抱く、不安や期待に応えてくれそうだと思わせることができる。「歯科治療を全般に提供しています。インプラントもできます」よりは、選ばれる可能性が高まるのは言うまでもない。つまりターゲットを絞ることで、ユーザーからの共感が得やすくなるのである。

「スキャンサービス」から「大きいサイズのスキャン専門店」へ
今回、受講者の一人が自社のスキャンサービスのプロモーションをテーマにしていた。従来は「スキャンサービスができます」と情報発信をしていた。しかし、自社のスキャンサービスの特長、競合がメインとする分野、顧客が潜在的に求めている領域を分析した結果、同社のスキャンサービスコンセプトを「大きいサイズのスキャン専門店」に変更し、メインターゲットは大きいサイズのスキャンに困っている顧客に設定した。

同社はこのメインコンセプトを武器に、展示会へ出展したところ「大きいサイズのスキャン専門店って面白いね」と、関心の高い来場者から声をかけてもらえ、高い確率で見込みを獲得し効率的な営業活動ができたようだ。

また、「絵画、キャンバスなどの厚みのある原稿」「習字の長い半紙など長さのある原稿」「古地図など傷んだ原稿」「マンション図面などA1サイズの原稿」など、原稿の種類や用途など、大きいサイズのスキャンから更に、ユーザーの細かいニーズごとにターゲットを絞ることで顧客とのコンタクトポイントを増やしている。

ターゲットを絞ることは、見込み客を失うリスクが生じるのではなく、自社のサービスに合致した見込み客を獲得できるチャンスである。逆に広くとることで、どのユーザーにも響かずWebページにすらアクセスしてもらえない。
ただし、絞ることの重要性を頭では理解していても、新サービスの開発や販売に関わる当事者になると拡げたくなる心理に陥る。その時は、第三者に意見を聞くなどして客観的な判断が求められる。

今回、「印刷ビジネス開発実践講座」は4社7名の少人数制で実施した。全7回を通して受講者7名がお互いのビジネスに対してアドバイスを行うことで、より客観的に自社のビジネスを見つめ直せていた。JAGATとしては、こうした機会を提供することで印刷業界を盛り上げていきたい。

(JAGAT 塚本直樹)

[関連セミナー]
印刷ビジネス開発実践講座2018
 日 時:2018年10月~2019年2月(全7回)