【マスター郡司のキーワード解説2021】郡司最終回の巻

掲載日:2021年5月31日

最近の私は「とにかく若い人を育てなくてはいけない」と強く願っている。「どういうふうに若い人を育てたら良いのか?」ばかり考えているのだ。

JAGAT 専務理事 郡司 秀明

郡司最終回の巻

 私の場合は縁あって、若い頃から業界誌やDTPの雑誌に連載を持っていたので、専門用語解説などを随分長いことやってきた。いろいろな現場を訪問させていただくことも勉強になったが、今にして思えばこのキーワード解説が、一番自分のためになった。若い頃の文章は、気持ちだけが先走って大上段に構えてしまい、肩に力が入り過ぎて、分かりにくい自分勝手な文章だったと思う。年を取ってからはその逆で、肩の力が抜け過ぎて、「細かいことは分かんなくていいや!」と大胆にカットしてしまっている。若い頃は調べたこと、知っていることは何でも書いてやろうと、随分稚拙な文章だったと反省している。文章を書き始めて5〜6年目くらいがちょうどバランスが良かったのではないかと思う。
 ということで、このキーワード解説の執筆を次回から若い人に譲り、私は指導役に回りたいと思っている。私が書くのはこれが最終回なので何を解説しようかと考えたのだが、最近まで間違った認識をしていたという、私自身の誤解をご紹介したい。それはイヤホンだ。ANAで配られているイヤホン(写真1)で、こだわりのある方は機内提供のイヤホンは受け取らずに自前のお気に入りを使用するのだが、私は必ず受け取ることにしている(根っからの貧乏性)。イヤホンは左右が分かりにくいのが欠点で、特にANAのものは分かりにくい。昔のiPhone(iPod)用のイヤホンには、右用にはRの小さな文字が入っていたり、右用のケーブルが少し長かったり、または形状が異なっていて左右が正位置でないとしっくりこなかったりするようになっているのが普通だった。他には、音量調整のボタンが付いている方が右用だったりする。
 しかし、ANA提供のイヤホンの場合は、形状も判別しにくいのだ。唯一の手掛かりが外音を取り入れる小穴が開いていることだけだ。イヤホンには密閉型などいろいろなタイプがあるが、少し外音が聞こえた方が自然なのでこういうタイプが好まれている。私の個人持ちでお気に入りの外音取り入れタイプのイヤホンは後ろ側に穴が開いている形状だったので、ANA提供のイヤホンも何のためらいもなく後ろ側に穴が来るように装着していた。本当に何の疑いもなかったのだ。
 最近のことだが、インターネットで別のことを調べていたときに、イヤホンの左右をチェックする動画が目に付いた(図2)。これは、本来はスピーカー用のようだが、イヤホンで聞けば左右が分かる。そこで、ANA提供のイヤホンをチェックしてみたところ、なんと左右は私が思っていたのと逆で、穴を前にするのが正解だったのだ。国内用のイヤホンが聴診器タイプから現在のタイプに変わって何年くらい経つのだろうか? ずっと間違って使っていたのだ。私は思い込みが激しい方だが、あまり自分を信じていないのでいろいろ確認することにしており、普通の誤解なら半年くらいで判明して、その度に関係方面に謝っている。しかし、このANAイヤホンを誤解していた期間は群を抜いて長かった。私はオーディオに関して変なプライドがあり、変にこだわっていたのだろう。変なプライドなど無い方が良い。今すぐにでもしっかりと調べて、しっかりと対処することが大事だ。キーワードに関しても「その通り」で、印刷人にとっては印刷に関するキーワードにこの傾向が強い。


 最終回だからと大上段に構えて小難しいことを言うつもりなど毛頭ない。「思い込みが強いと、とんでもない間違いを招くものだ」とサラッと申し上げて、私が書くキーワードの最終回にしたいと思っている。次回からは専務理事として「専務のつぶやき」という題名で、印刷業界回りの話題を取り上げたい。昔「マスターのつぶやき」という題名でエッセイを書いていたことがあるが、その専務版だと考えていただきたい。

 
 写真1 ANAイヤホン         図2 左右チェックアプリ

(JAGAT専務理事 郡司 秀明)