製版技術者の活用について

掲載日:2015年7月1日
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どんな印刷会社も人材育成・活用には頭を悩ませていると思うが、DTPや製版の技術者の活躍の場は広い。そして、とても重要なのだ。

いつごろからだろうか?DTP部門は儲からないといって、人員を減らされ、印刷会社の部署の中でもお荷物部署扱いされてきたのが、最近の状況だと思う。

直接数字に結びつく営業は人員増を事業計画に盛り込んだり、印刷・後工程は最新式の設備導入ということで郊外に新設備の工場を新設する動きまであるのに、DTPとなると、本社においておくのか?郊外の印刷工場にあるべきなのか?その辺も定かではなく、各部署からパスされている状況である。

印刷会社の仕事内容やスタンス(営業主体、技術主体、元請け、下請け、等)によって状況はまちまちだが、郊外に生産部署が移転した会社は、DTP部門も工場と一緒にまとまって移転している場合も多い。対して都心の一等地に余裕を持った本社ビルを有している会社は、デザイン部門やDTP部門を本社に置き、営業と階が異なるだけという会社もある。

最近よく聞くことなのだが、DTP部門を印刷工場と同じ場所に持って行った場合には、営業と物理的に遠くなったという理由だけで、意思の疎通や協力体制が希薄になり、DTP部門の評価が益々下がる一方という評判をよく聞く。本社に営業とDTP部隊が一緒にいる場合には、今までと一緒なので効果が見えにくいのだが、営業部長が社交的で人の使い方が上手い会社は、DTP部隊の能力を営業展開にフル活用したりしている。ちょっとしたことをDTP技術者に相談して、きめ細かい提案を盛り込んだり、プレゼンに同行させ、肝心なときに同行した技術者に振ったりして、ボクトツな口調で説明させて信頼を勝ち取るという作戦だ。

特にプレゼン先が技術系の場合は、技術同士の共通キーワードも有り、効果を発揮することが多い。技術的な資料を作るのにもDTP技術者は最適である。「画像関係の知識」「デジタルの知識」「文字関係の知識」「デザインの知識」「色の知識」「コンピュータの知識」「印刷の知識」「HTMLやXMLの基礎知識」そして趣味で動画等まで知っている人も少なくない。世の中の平均的な人間と比べたら、遙かに広範囲に実践的な知識を有しているのが、DTP技術者である。

これだけの技術者を使わない手はないのだが、これも最近になってDTP(製版)技術者の再登用が見直されている。特に大手ではこの傾向が強い。
具体的には、DTP技術者は(売上げ)数字には余り強くないので、売上げ責任を果たすというよりは、ヘルプ的に動ける役回りが適しているだろう。ポジションとしては副部長や次長あたりが一番実力を発揮できると思う。

DTP技術者を営業に配置転換したりすることも行われているが、やはり直に営業というよりは、営業支援スタッフ辺りで活躍してもらうのが、一番だろう。

印刷ビジネスが印刷だけやっていれば良かった時代から、Webや電子書籍、様々なメディアを上手くハンドリングすることが必要になっている。現在、ロゴやイラスト等の部品は、Web用にRGBで作られていることがほとんどで、それらのハンドリングやCGや動画とのリンクなど印刷ビジネスが考えなくてはいけないことは多い。
そんな複雑な環境で冷静に考えていける人材というと、Web技術者よりはDTP技術者だ。DTP技術者の再活用が、印刷会社の活性化の鍵を握っているともいえる。真剣に考えてみていただきたい。

(JAGAT専務理事 郡司秀明)