『<考察>日本の自費出版 』

掲載日:2014年8月18日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

 
書評:『<考察>日本の自費出版』
発行所 東京経済
渡辺勝利著 B6判 199ページ 1050円 

 

近年本が売れなくなったとか,若者の活字離れが嘆かれているが,出版社側の反省や努力が足りないことも批判されている。その反動として今や自費出版の全盛時代であるが,自費出版と商業出版はどう違うのか。本書により改めて認識させられる。

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つまり自費出版と商業出版との違いは,採算ベースに乗るかどうかであろう。しかし最近「e-Book」とか電子書籍が注目を浴びているが,これらの利点は商業出版のような過剰な売れ残りによる在庫問題や品切れの問題などの心配がないことである。

パソコンの普及から10年の間に,電子出版と呼ばれる分野は飛躍的進歩を遂げている。一般人がパソコンを利用して,容易に文章作成が可能になったからだ。従来出版物と言えば「紙としての本」を考える時代が長く続いていた。それが「紙としての本」とは全く別の出版が行われるようになった。それが紙以外の「モノ」であるFDやCD-ROMと呼ばれる出版物である。

著者いわく「ベストセラー作りの本」という本があるが,ベストセラー作りのノウハウがあるならば,出版不況というものはないと言う。自費出版ブームと言われているが,「売らない自費出版」と「売りようがない自費出版」があるからだ。

自費出版の受注側は出版社を始め新聞社,印刷所,または印刷団体などと,窓口は幅広くなっている。自費出版を志す人は,本書を読んで自費出版とは何かを認識することである。それは自費出版であって自費出版でないという実態もあるからだ。安易に自費出版に走ることへの危険性を示唆している。

 

 

(2005年4月4日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)