『標準DTPデザイン講座 基礎編』

掲載日:2014年8月18日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

 
書評:『標準DTPデザイン講座 基礎編』   
発行所 翔泳社
生田信一・板谷成雄共著 B5判 224ページ 2520円 

 

本書はグラフィックデザインを主体としたDTPの基礎知識の解説で,内容はグラフィックデザイナーを対象としている。グラフィックアーツの視点から印刷技術を捉え,図版を豊富に使いDTPの基礎を理解しやすく構成されているが,内容の間口が広範囲になっているため,基礎知識として焦点が絞りにくいきらいがある。

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しかも基礎的知識として,必要な内容が不足している感がある。また一般の印刷業界用語で表現したほうが理解しやすいと思える個所が散見される。

例えば,印刷に重要な「トラッピング」の知識や処理テクニック(チョーク,スプレッド)について,表面的な解説で終わっているのは物足りない。

また,カラー画像処理のテクニックなどについて,印刷製版に関連した基礎知識なども解説を加えたほうが親切であろう。従って,本書は基礎編となっているが,DTPの上位を目指す中級ユーザクラス向きと言える。

気になるのは,「文字の基本知識」の章の書体見本に,標準DTPで使えない写研書体(本蘭明朝,ナール)が挙げられているが,これは誤解を招く。そして,グラフィックアーツとして重要なタイポグラフィについて,もう少し深く触れてほしかった。多くのDTP関係者には,アナログ時代の印刷技術の継承が欠乏しているからだ。

そのほか,多くの解説書がそうであるが,製本に関する「面付け」の中で,ほかの製本様式と異なる中綴じの面付け方法について,具体的に解説があったほうが良いと思える。

 

 

(2004年6月28日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)