「第二の創業」に向けて

掲載日:2014年8月21日

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:「第二の創業」に向けて 

 

富士フイルム株式会社 グラフィックシステム事業部 商品技術戦略グループ 技術担当部長 森本恭史氏に聞く

 

「第二の創業期」と位置付け新たなグループ経営体制に移行し、グループ全体の戦略立案機能の強化、経営資源の全体最適配分、コラボレーション領域の拡大などさらなる連結経営の強化を進める富士フイルムに今後の展開を伺った。

--第二の創業期とは?

森本 グラフィックシステム事業も富士フイルム全体の第二の創業に従い変わっていくということだ。本年2月、持ち株会社の富士フイルムホールディングス、事業会社の富士フイルム・富士ゼロックスの本社機能を東京ミッドタウン(以下、TMT)に集結させた。そして、現在、施策展開の質とスピードを向上させて、より高度なシナジー効果を追求しているとともに、戦略的なグループ経営を強力に推進している。その全社的な動きをブレークダウンし、グラフィックシステム事業でもデジタル印刷分野などで富士ゼロックスとのコラボレーションを本格的に開始した。

--基本的な戦略と事業展開は?

森本 中期経営計画を2004年2月に策定し、2006年4月に再策定した。その中に3つの基本戦略がある。それが、「経営全般にわたる徹底的な構造改革」「新たな成長戦略の構築」「連結経営の強化」だ。富士フイルムグループには3つのセグメントがあり、1つ目はカラーフィルムやデジタルカメラなどのイメージングソリューション部門、2つ目は印刷システム機材や医療画像機材、フラットパネルディスプレイ材料などのインフォメーションソリューション部門、そして3つ目は富士ゼロックスが担うドキュメントソリューション部門である。

--構造改革について

森本 イメージング分野を中心に2005~2006年度で集中的に実施した。デジタルカメラとカメラ付き携帯電話の普及により、カラーフィルムの需要が減少していく中で、既に需要に見合った事業体制の最適化を完了させた。他社がカラーフィルム事業から撤退している状況だが、当社はきちんと写真文化を守っていくということを力強く申し上げたい。写真の価値、その素晴らしさを引き続き伝えていくことが使命と考えている。

--新たな成長戦略について

森本 5つの重点事業がある。それは、[1]液晶ディスプレイ用の偏光板保護フイルム「フジタック」などの高機能材料、[2]メディカル/ライフサイエンス、[3]グラフィックシステム、[4]ドキュメント、[5]関連会社のフジノンが中核となる光学デバイスである。これらの事業に対して、積極的な設備投資、研究開発、M&Aを実施している。設備投資に関しては、九州に「フジタック」の新しい生産工場が稼動し、さらに今後、第2、第3の工場が立ち上がる。M&Aに関しては、グラフィックシステムやメディカル/ライフサイエンスの事業分野などを中心に、スクリーン印刷用インクや産業用インクジェット用インクメーカーのセリコール社(英国)やインクジェットプリンタ向けインク染料メーカーであるアビシア社(英国)、産業用インクジェットプリンタ用ヘッドメーカーのダイマティックス社(米国)、放射性医薬品メーカーの第一ラジオアイソトープ研究所(日本)などを買収した。富士フイルムの強みや技術を生かせ、シナジー効果が発揮できるM&Aを行っている。研究開発に関しては、2006年4月に「富士フイルム先進研究所」をオープンさせ、先端基礎研究、新規事業や新製品の基盤となる要素の研究開発をさらに強化している。

--連結経営の強化について

森本 2006年10月に、社名を変更するとともに、富士フイルムホールディングスを中心に、富士フイルムおよび富士ゼロックスの2大事業会社を傘下に束ねた新たなグループ経営体制に移行し、本年2月には、別々にあった本社機能をここ(TMT)に集結させて、連結経営の強化をさらに加速させている。この新体制の下で、富士ゼロックスとのコラボレーションを推進し、グループの技術力の強化も図っていく。

--グラフィックシステム事業の展開は?

森本 富士フイルムグループの売上高は約2兆7千億円で、グラフィックシステム事業はその約10分の1を占めている。現在の主な製品はCTPで、ワールドワイドに展開している。販売戦略はエリアごとに異なるが、全体の傾向として言えるのは、省力化、環境対応などを考慮したCTPのプロセスレスやケミカルレスという商品の開発、販売に注力している。国内では、既にET-Sというサーマルプロセスレスの商品を販売中。さらにバイオレットのケミカルフリーを来年投入することを発表した。その先には、デジタルプリンティングの市場が拡大してくる。M&Aでインクやヘッドのメーカーを買収したのはそういう背景もある。もちろん、この分野での研究開発にも注力している。特にdrupa2008では、デジタルプリンティングに重きをおいたコンセプトを強く打ち出していく予定。

--オフセットの置き換えと新たな市場は?

森本 近年、書店などの陳列でお気づきだと思うが、雑誌など印刷物の種類が増え、動向としては少量多品種化の傾向であり、高耐刷を必要としないデジタル印刷には有利な環境になってきている。その中で、デジタル印刷のキーとなる高画質化などが達成されれば、オフセット印刷からの置き換えも進んでくると予測される。また、デジタル印刷は必ずしも雑誌といったメディアだけでなく、新たな市場として商業印刷以外の産業用印刷分野、いわゆる、サイングラフィック、スクリーン印刷などにも拡大していくと思われる。

--デジタル化でグラフィックシステム全体はどう変わるか?

森本 あるアンケート調査結果ではコストダウン、環境対応、省スペース化の観点で印刷会社は中間材料が少ないほうがよいという意見が多く出ている。その意見に対する提案の一つがデジタル化(廃棄物削減、スペース減などのメリットがある)である。この影響により従来の印刷方式は徐々に減少する可能性がある。ただ、新聞印刷などのオフ輪分野は高耐刷が必要であるため、デジタル化には課題が多い状況である。従って、今後のグラフィックシステムの市場ではこれまでのアナログ・コンベンショナル対応とデジタル化対応の両方が必要とされるだろう。今後、グラフィックシステム事業は富士ゼロックスとのコラボレーションを拡大していくとともに、市場の将来予測と日常の市場動向をよく注視しながら、市場への最善的なサービスを目指していくことを考えている。

--これからのグラフィックシステム事業の使命は?

森本 お客様に最大、最善のメリットを与えることであり、われわれは、業界の数年後がどんな状況になっているかを想定し、その時々にお客様が何を考え、何を求めているかを的確に判断していく。そして、求められている価値を創造する商品化を進め、提供していくことこそが、われわれの使命だと考えている。 既にお話ししたとおり、この使命を全うするためには、市場の将来予測(仮説)とその検証を1歩ずつ行う(日常の市場動向の注視)ことが大事だと考えている。

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富士フイルム株式会社
東京ミッドタウン本社
〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-3
TEL 03-6271-3111(大代表)

 

 

(2007年7月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)