米百俵から学ぶ組織づくり

掲載日:2015年10月14日

人材教育にかかる費用は、コストではなく投資である。と、よく言われる。JAGATでは、企業内で実施するカスタマイズ型研修を行っているが、大阪西部支社にも研修の相談が寄せられるようになった。印刷業界では、設備による差別化はしづらいため、人材育成が見直されてきている。

生涯、勉強が必要な時代に

高度成長期は、設備投資が最も費用対効果が高く得られたが、現在の利益・生産性向上には、知恵や工夫が重要だ。まして、印刷業界はデジタルやITとの関わりも強くなっており、技術面の進化も著しく生涯学び続けなければならない時代になった。中学生でも学校以外の勉強時間は、平日1時間以上と言われている。われわれ社会人も負けてはいられない。

1人の年間教育費32,010円也

企業の従業員1人当たりの年間教育研修費は、32,010円である(2013年度、産労総合研究所調べ)。社員に対する教育訓練は、比較的手軽にできるOJT(On the Job Training、仕事上指導)を重視する企業が7割を超える。一方、OFF-JT(集合研修への参加など)を重視する企業は約25%であり、OJTが人気はある。教育訓練の実施方法については、「社内」を重視する企業は6割を超え、外部委託型(アウトソーシング)を重視する企業は3割強だ。

教育研修予算をみると、階層別研修で実施率の高いものとして「新入社員教育」が93.5%で最多。次に「新入社員フォロー教育」77.2%、「内定者教育」57.7%と新人対象の講座が中心になっている。

費用対効果をすぐ見るべきではない(米百俵からの教え)

広告宣伝用の印刷物は、費用対効果が求めづらい特徴だ。よって、デジタル媒体と比較されるケースもある。しかし、目先の結果にすぐには結びつかなくとも、認知度向上やその後のサービス・商品の購入などに寄与するケースも多い。人材育成も同様、実施・効果を考えながら、繰り返し実践することで、ボディーブローのように効いてくることに間違いない。

ここで思い出されるのが「米百俵」という故事だ。この由緒ある出来事では、幕末の長岡藩は戊辰戦争にて徹底戦闘を行い、その結果250余年をかけ築き上げた城下町長岡は焼け野原となった。食べるものにも事欠く長岡藩の窮状へ、見舞いとして米百俵が贈られた。しかし、当時の小林虎三郎は、藩士の反対を押し切り、米を売却して学校設立の費用とすることを決定する。

彼は藩士に向かい、「百俵の米も、食えばすぐになくなるが、教育にあてれば将来、一万、百万俵となる」「国がおこるのも、まちが栄えるのも、ことごとく人にある。食えないからこそ、学校を建て、人物を養成するのだ」と語ったという。結果として、救援米百俵をもとに国漢学校を設立し、その後、東京帝国大学総長の小野塚喜平次、解剖学医学博士の小金井良精、海軍の山本五十六元帥など、多くの優秀な人材を育て上げたのである。

これは、目先の利益にとらわれず、後に計り知れない価値をもたらした教育の重要性を示した話であり、人材育成を行う組織、企業にとって参考になる。
さあ、みんなで積極的に業界内でより成果を出す社員を育てましょう。

(西部支社長 大沢 昭博)

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