中小印刷会社こそOne to oneプリンティングをやるべきである

掲載日:2016年1月20日

印刷物にはITに負けない魅力があるのだが、その魅力もコストアップに繋がっては、魅力が半減どころか、印刷離れにつながってしまう。

どうも「マスという広告対象が絶対でなくなる」というのは、冷静に考えれば考えるほど正しいらしい。それが証拠に巨大広告代理店が、揃って「マスの穴をどう埋めるか?」について真剣に考えているのだ。マスが無くなると言っても、すぐに100%非マス的なモノに置き換わる訳ではないのだが、一割売り上げが落ちたとしても捨て置ける額ではないから大変なのだ(そしてその割合はもう少し大きいかも?)。

大手広告代理店の場合は、非マス的なターゲットに対して、きめ細かく丁寧に対処していくことは難しいので、プラットフォームを介して、且つIT技術できめ細かさをカバーするビジネスをすることを考えるのが順当なアプローチだ。例えばCF(コマーシャルフィルム、TVCM)にしても、動画配信用のサーバー&ネットワークというようなプラットフォームを構築して仕事を抱え込んだり、印刷関連では受発注システムと呼ばれるWeb to Printシステムをプラットフォームとしてビジネスの中核に持ってくることによって、常にビジネスの中心に居続けるという感じである。

ちょっと前だと、このプラットフォームという考え方には、かなりの説得力があった(今でも重要かな?)。しかし、一般的なマーケティングツールがどんどん力を付けてくると、出来合いのツールをちょっとカスタマイズすれば、イチイチ大金をつぎ込んで特注システムを開発しなくとも良いという状況が出来上がって来ているのだ。

こういう事を真剣に考えていくと、「非マス的マーケティングに大手が取り組むのは難しいのか?」と、逆説的なことを考えてしまう。今まではプラットフォーム開発に技術力だの資金力だのが必要なので、そのつぎ込んだ資金を回収するためには、莫大な売り上げが必要だった。つまりそれなりの規模がないととてもではないが、One to oneなどには手を出せなかったのだ。

しかし現在のMA(マーケティングオートメーション)ブームを見ると、DTPの時のように、安くて使い勝手の良いツールが揃ってきている時を感じさせる。ちょうどMac DTPが普及したのとオーバーラップしてしまう。これからWindows DTP(あくまで比喩)が普及しだして、コストは更に落ちてくるということである。

Windows DTPも最初はドライバーがどうのこうのとか、CMS(カラーマネージメント)がイマイチとか、WYSIWYGだとか、フォントのことを云々言っていたが、Adobeが本来OSに乗せるべき機能までアプリに内蔵してしまったおかげで、現在ではWindowsを特に意識しなくても問題なく使えているはずである。このようにマーケティングの世界ではこれからWindowsが出始めるという段階だ。

しかし、非マス的なものを対象とするとどうしてもコストがアップしてしまう。オフ輪で一挙に何万枚刷ってしまう方が安いに決まっている。宛名や番号を変えるくらいだけなら、オフ輪にインキジェットヘッドを付けて増し刷りすればいいのだが、ここでいう非マス的な対象ということで考えると、コストを上げずにバージョニングやBook of one的なことが出来なければいけないということだ。

そのためには大会社でシステムを考えるというより、中小印刷会社で社長自ら旗を振り、目的を明確化、例えば桶狭間のように効率良く大将首さえ狙えば、勝負に勝てるわけだ。中小ならではの高効率戦術を発揮できるということであり、全社的にコストを見直して非マス的なマーケティングに対処できるはずなのだ。ニッチ対象もこれに準ずるものであり、社長が先頭に立てば、コストの吸収も何とかなると考えられる。

普通の印刷会社にとっては、この先カタログ・パンフ類が100部を切るような小ロットビジネスが急激に増えるのは自明で、その対処としてカットシートタイプのPOD印刷機だけではなく、ロールタイプの高速インキジェット機+JOBギャンギング等のソリューションも必要になってくるはずである。このようなビジネスの場合、単なる品質や生産効率だけでは意味がない。マーケティングやアイディアが大きくものを言ってくるのだ。

(JAGAT専務理事 郡司秀明)

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