「応援している気持ち」を伝える

掲載日:2016年4月13日

企業では2016年度の入社式も終わり、大阪の桜も残りわずかになった。この春、昇進や異動、家族の方の入学や就職など環境変化が伴った方も多いことだろう。印刷業界を取り巻く環境は依然厳しいが、だからこそ職場の力、チーム力の発揮が必要だ。仕事は一人では成り立たない。組織の力は個人+個人以上の力を発揮するために存在する。しかし昨今、仕事の専門性が進み、またコミュニケーション手段も変わってきた。上司がすべてを把握することが困難になり、また部下も孤立してしまうことが数多くある。

意外と重要な心の環境整備

一つのことわざがある。ラクダの背中に荷物をいっぱい背負わせる。もうこれ以上重たくて無理だという状態のとき、一本の藁(ワラ)のように軽い物なら大丈夫だと判断して載せてしまうと、ラクダの背骨が折れラクダが潰れてしまい、結局すべての荷物が運べなくなるという話だ。限界の状況では、ほんの些細なことが大事故を引き起こす原因になるという戒め、教訓である。

企業に置きかえると、許容量を超えた仕事を部下に与えると部下が潰れてしまうから、それに気をつけなさいという例だろう。ラクダがつぶれた瞬間を見ると、私たちはつい最後の藁がその原因だと思ってしまいがちだ。しかし、その手前に、さまざまな負荷の要因があることも考えなければならない。栄転や結婚、新築など慶事のできごとも、大きな変化であれば心の負荷、ストレスになる。プライベートな変化でストレスがあるところに、仕事で厳しい状況が加わると「この程度のことで」と、本人も周りも思っているようなことが、「最後の1本の藁」になってしまう場合もある。

職場の管理職は、部下の長時間労働や仕事でミスをしてしまい気落ちしているとき、気遣うことはもちろんだが、結婚や引越し、家族が増えたり減ったりするといったプライベートな変化もできるだけ把握して気にかけることも重要なのだろう。

なぜなら、仕事自体を減らすことはできなくても「応援している気持ち」が伝われば、本人にはこの上ない助けになるからだ。

成果が上がる全員リーダーシップ

これからの上司は「背中を見てついてこい!」というタイプではなく、自分と部下の力量を見極め、他者を最大限に活かすリーダーシップが重要だ。

従来、リーダーシップは人を惹きつける能力やカリスマ性をもった一部の人に限られたものであり、才能の一つと思われていた。しかし現代のリーダーシップは、誰でも身につけ、発揮できる能力であるとされ、仕事の一つと認識されつつある。

過去の偉大な経営者も、最初からリーダーシップを持っていたのではなく、育った環境や人との関わり、仕事上の成功と失敗など、多くの経験を積むなかでリーダーシップを身につけ、発揮してきたのだ。

リーダーシップとは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で確立することである。リーダーとは目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者であるという考え方もある。

組織のトップに立つリーダーがリーダーシップを身につけることは不可欠だ。また、リーダーの頭が良いというだけでは芳しくない。本人は、人は1聞けば10動くと思ってしまうからだ(本当は10聞いて1動くケースが多い?)。目標を伝えれば、部下は理解し行動すると思ってしまうのだ。しかし、そんなことはなく目標を腹に落とすことが重要だ。

また、リーダー以外の人はリーダーシップを身につけなくて良いわけではない。組織やチーム内において自分の責任を明確にして業務を遂行することはもちろん、メンバーと協力し合う、的確な判断を得るための指示を仰ぐ、優先順位を明確にする、結果を残す、などのことは全員が行うべきだ。

これらの積み重ねの一つ一つがリーダーシップの糧になり、自らがリーダーになったとき、業務遂行のために発揮する能力の源になる。

(西部支社長 大沢 昭博)

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