デジタル時代に再評価される印刷メディアとしてのDM

掲載日:2016年9月12日

デジタル時代を迎えて各方面で顧客リストの蓄積が進むことはDM通数の増加に有利に働いていくだろう。

DM 需要は安定推移

DM の市場規模は3923 億円、テレビ・インターネット・新聞・折込に次ぐ5 番目の広告メディアである(電通調べ2014 年)。近年のピークは2007 年(4537億円)、金融危機後に4 年連続で減少したが、印刷メディアとしてはいち早く2011 年に下げ止まった。

以降は2014 年まで3900 億円前後で安定して横ばい推移している。戸別送付される印刷メディアとして折込チラシと双璧だ。折込チラシの市場(4920 億円)はDMより25%大きいが、2005 年には1.5 倍以上の開きがあったのである。

折込チラシとDM の市場規模はこの10 年で相当に近づいてきた。折込チラシは新聞の発行部数に左右されやすいが、DM は通数を独立的に決められる。むしろ、デジタル時代を迎えて各方面で顧客リストの蓄積が進むことは通数の増加に有利に働いていくだろう。

再評価されるDM

日本の年間1 人当たりDM 受取通数は、米国の約1/8、欧州各国と比べても約半分にとどまる(DDCレポート2005 より)。国際比較から見て日本におけるDM の伸びしろは大きいが、国ごとにメディア環境は異なるので単純比較はできない。

しかし、特定された個人に届けられること、物体として残ること、レスポンスを測定しやすいなど、DM の強みが現代社会に適したもので、DM が増えやすい条件が整いつつあることは間違いない。デジタル時代に入っても、Web や店舗までどのように誘導すればよいか?といった課題は積み残されたままである。

行動喚起を促すメディアとして、物体である印刷物を届けるインパクトは大きい。開封して、内容物を見る。E-mail と違って物理的な動作を伴うことは、心を動かし、購買につながる何らかのアクションを起こさせる確率を高める。

行動喚起のインパクト

DM に関する調査結果を見てみよう(2014 年12 月)。1 週間の受取DM 通数は5.8 通。年収と受取通数の相関性は高く、年収が高まるほど受取通数が増え、年収900万円以上は平均を5 割上回る。受取DM のタイプは、はがき(45%)、封書(24%)、大型の封書(14%)、A4サイズはがき(10%)と、この4 タイプで全体の93%を占める。

DM の内容は、「新商品・サービスの案内(30%)」、「特売・セール・キャンペーンの案内(22%)」、「商品・サービスの利用明細・請求書(15%)」、「イベントの案内(10%)」の4 種で全体の77%。

開封・閲読されたのは家族宛も含めた全体の62%。自分宛は79%と高率だった。このうち、何らかの「行動」を「喚起」したのは16%。「行動」とは「ネットで調べた(6.6%)」「購入・利用した(3.0%)」「家族・友人等との話題にした(1.7%)」「店に出かけた(1.4%)」「会員登録した(1.1%)」「資料請求した(0.7%)」「ネット上の掲示板等に書き込んだ(0.5%)」といったものを指す。

調査を通じて、従来、レスポンスとして把握していた「資料請求」「購買行動」以外にも多様な行動を喚起していることが確認された。

(『JAGAT info』2016年2月号より一部抜粋/研究調査部 藤井建人)