エキスパート集団、メディアに強い会社を目指して

掲載日:2017年6月9日
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研文社社長の網野勝彦氏にDTPエキスパート、クロスメディアエキスパート試験に取り組んだ経緯と今後の社員教育について話を伺った。

網野社長ご自身がDTP エキスパート試験にチャレンジし、合格されたと聞いています。その経緯をお聞かせください。

お客様から見たときに研文社がどんな会社か。そこで、「研文社にはDTP エキスパートが何十人います」ということを会社の看板にしようと考えました。

当時、私は営業本部長として、DTP と印刷のデジタル化を進めてお客様にしっかりとサービスするには、原則として全員がDTP エキスパートを取得することが必要だと考え、それを推進したのです。
「全員取るなら、当然営業本部長もせなあかんやろう」となりました。泣きそうになりながら、久しぶりに徹夜で試験勉強しました。

最初の頃は、DTP エキスパート受験のために、対象者全員の研修を行いました。社内で土曜日半日を使い、全部で5、6 回だったと思います。社外に依頼し、カリキュラムを考えてもらいました。それがスタートです。

初チャレンジのときは結構な人数で受験し、合格者もかなり出ました。そのため、DTP エキスパートの在籍人数でも、結構上位に入って、「次はトップテン入りだ」などと社内で言っていました。

自己啓発として奨励する企業も多いと思いますが、研文社は会社としてDTP エキスパート集団となることを目指し、最初の立ち上げをやりました。

DTP エキスパートを受験されたのは、営業・企画制作・製造部門のどちらでしょうか?

中心は営業部門です。営業部の指針として「エキスパート集団になる」ことを掲げたからです。ただし、同時に制作部門などにも受験を奨励しました。

最終的には、会社全体としてエキスパート在籍数ナンバーワンを目指そうということになりました。

営業部門に浸透するには、何年もかかったのでしょうか?

手を挙げさせて希望者を募ったのではなく、業務命令として「取れ」ですから(笑)。
業務時間中の研修なので、全員参加しないといけない。自己啓発だったらプライベートの時間を割いてやることになりますが、当社では会社の研修として行い、全員受験させました。

「自己啓発じゃない、これは業務だ」という形で、これを最初の3 年間やりました。そうして毎年合格者を増やしていき、一定の人数までは達成できました。

また、モチベーションを保つように、資格取得者、資格を維持している者には資格手当も支給しています。

合格者が増えたことやレベルアップの成果はいかがでしょうか?

日常のデジタルデータ入稿のやり取りなど、スムーズになっていきました。特に若い人が自信をつけ、入稿フォーマットやデジタル用語にも詳しくなり、データを授受する際にはどういう確認が必要かなど、お客様との対応も良くなりました。実務のコミュニケーションが、若い人中心に変わっていくきっかけとなりました。
また、その結果、DTP の現場とのトラブルも減ったと思います。

クロスメディアエキスパートの取り組みはどのように始めたのでしょう?

3 年ほど前から、仕事の内容としてデジタルメディアに関わることが増えてきました。そこで会社の方針として、今後期待するのは、さまざまなメディアを理解できる人だと掲げました。

そして、クロスメディアエキスパートの資格取得を奨励することにしました。
DTP は印刷の基礎となる技術であり、もっとも重要なところです。しかし、お客様のニーズはデジタルメディアへの対応と変わってきたのです。

クロスメディアエキスパートが数名いる程度で「デジタルメディアに対応します」と言っても、それだけでは会社として十分ではありません。
お客様から見て、研文社は「メディアに強い会社」だと認めてもらいたいということです。ですから、多くの社員がクロスメディアエキスパートを取得することがマストなのです。

それが当社のブランディングだということです。

クロスメディア以外の他の資格はお考えになりましたか?

今の段階では、クロスメディアに取り組むことをメインとしています。それがある一定のところまで達成したなら、次はプロモーショナルマーケターと考えています。
ステップバイステップとして、DTP、クロスメディア、そしてプロモーションに取り組みたいということです。

また、UCDA(ユニバーサルコミュニケーションデザイン)認証にも取り組んでいます。金融関連の業務にも数多く携わっているため、ユニバーサルデザインのコンサルティングをすることで、会社としてもサービスが広がることになります。

クロスメディアエキスパート取得の成果は出ていますか?

資格を取ったらすぐ仕事が来るかというと、そんなことはありません。そういう人材育成の仕組みを回し続けることによって、実務に強い人が徐々に育っていくだろうと考えています。

また、クロスメディアは実践することが大事なので、営業部のほとんど全員にiPad を配布しています。営業日報やメールもタブレット上で扱えるようにしています。日常的にデジタルメディアに触れること、使いこなすことが大切だと考えています。

メディアの知識が増え、専門用語にも詳しくなっているため、お客様とのコミュニケーションが良くなっているとは思いますが、目に見えてということではありません。
ただし、3 年目なので徐々に実を結ぶことを期待しています。今のうちにクロスメディアの知識を蓄えておくことで、何年か先の業務や会社の方向性に影響していくと考えています。

これからの人材育成について、どう考えていますか?

普通は、受験しろと命令されると「言われたからしゃあない」というようなスタートが多いでしょう。
しかし、それがきっかけとなって資格を取得した結果、業務知識の幅を広げることができました。お客様とのやり取りも、よりプロフェッショナルなレベルになっています。自分の仕事の幅が広がって、楽しくなっているのではないでしょうか。

自分が勉強することで仕事がスムーズになり、お客様との関係も良くなったと実感できる。個々の意欲も高まって、会社全体に浸透するというサイクルを実現できたと考えています。
これは人材育成としても、うまく循環しているといえます。

(聞き手・まとめ:千葉 弘幸) –JAGAT info 2016年12月号より転載–