印刷産業の得意先産業は変化しているか

掲載日:2017年6月15日

産業連関表で印刷産業の販売先を見ると、その他の情報通信(出版、新聞など)は2000年から2005年に大幅に減少し、その後も減少傾向にあるのに対して、金融・保険・不動産は増加傾向にある。(数字で読み解く印刷産業2017その5)

印刷産業の販売先上位10産業は2011年から大きく順番を変えた

前回の「印刷産業は1年間にどれだけ原材料を購入しているか」では、産業連関表を列方向(タテ)に見て、印刷産業がどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているかを見ました。

今回は、産業連関表を行方向(ヨコ)に見て、印刷産業の商品・サービスの販売先を見てみましょう。

「販売先上位10産業」から印刷産業の得意先の推移を見ると、その他の情報通信(出版、新聞など)が2005年までは突出して1位でしたが、2011年には2位の商業、3位の金融・保険・不動産までほぼ同じ金額となりました。そして、2012年には金融・保険・不動産に逆転され、2014年には商業にも逆転されました。また、印刷産業は2000年には4位に付けていましたが、2005年以降は大幅に縮小し、6位から7位で推移しています。上位陣の変化はそのまま印刷産業の得意先の変化を反映しています。

産業連関表で印刷需要の変化を見る2017-3_ページ_1

前回は、原材料等の調達先上位10産業を、さらに詳しい基本分類(516×394部門表)で見ました。販売先を同じように基本分類で見ると、構成比が2桁になる産業はなく、最も構成比が大きい「出版」が7.61%、「金融」7.58%、「小売」6.34%、「企業内研究開発」6.18%、「印刷・製版・製本」5.65%、「広告」5.20%と続き、0円は394部門中23部門だけで、どこにでも印刷需要があることがよくわかります。

産業連関表のひな型を見てみよう

下表は「平成26年延長産業連関表」を財とサービスの2部門にまとめたものです。網掛け部分が印刷産業で、列方向(タテ)に見るとどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているかがわかります。つまり、2014年の印刷産業の生産額4.95兆円は、財1.44兆円(そのうち印刷産業から0.28兆円購入)とサービス1.03兆円を購入し、付加価値2.48兆円が加わって生み出されたものです。

行方向(ヨコ)に見ると、印刷産業の商品・サービスの販売先がわかります。全産業を顧客として製造業に1.05兆円(そのうち印刷産業に0.28兆円販売)、サービス業に3.92兆円販売されています。

白書2017産業連関表_ページ_1

現在『印刷白書2017』の執筆準備を進めていますが、限られた誌面で伝えきれないことや、読者からの問い合わせなどに対しては、「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。

前回は産業連関表から印刷産業の費用構成、今回は印刷物の販売先を見ました。次回は5月末に公表された「平成28年経済センサス‐活動調査 速報集計」について報告したいと思います。

(JAGAT 吉村マチ子)