社会課題と印刷

掲載日:2023年8月3日
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DTPエキスパートカリキュラム第15版新項目「社会課題と印刷」のポイントを掲載します。

印刷ビジネスは、企業活動や生活者の消費行動などの動向と密接に関わっている。印刷ビジネスが受注型産業から脱却して今後のポジショニングを確立するためにも、こうした社会動向に対して意識的である必要がある。特に顧客企業との接点となりビジネスを作る立場の営業・企画職にとっては、日常的に話題に上ることの多いトピックであり基本概要は押さえておきたい。

環境課題と印刷

地球温暖化は世界的課題となっており、原因となる温室効果ガスの排出削減に関する産業界への要望が高まっている。

日本国内でのCO2 排出量を部門別に見ると、企業・公共部門関連の排出は全体の78.3%を占める*1 。こうした現況の下、2030年までに2013年比で46%の削減、そして2050 年までの実質排出ゼロ(カーボンニュートラル)という国内目標値の達成に向け、さらなる取り組みが求められている。

産業部門にはサプライチェーン一体での環境負荷を考慮した体制が求められ、顧客のサプライチェーンの一翼を担う印刷業も対応が不可欠となりつつある。
国際機関であるGHG プロトコルイニシアチブが策定した基準である「サプライチェーン排出量」は、自社だけではなく、その上流工程および下流工程での温室効果ガス排出量も含めて全体数値を把握し、対策していこうとする試みである。
各工程での排出量を分類ごとに整理することで、具体的な削減計画に結び付けることを目指している。

企業の環境対応に関する客観的指標としては、パリ協定が求める水準と整合した温室効果ガス排出削減目標であるScience Based Target(SBT:科学的根拠に基づいた排出削減目標)や、気候変動に関する企業の対応を情報開示するよう促す気候関連情報開示タスクフォース(TCFD)などがある。

また、100%再生可能エネルギー電力で事業運営することを目標とする企業連合RE100 も、今後国内での取り組みが進むと見込まれている。印刷業においても、大手印刷企業や先進的取り組みを実践する印刷企業で、これら国際標準の情報開示に関する取り組みが進んでいる。

*1 環境省の発表資料「2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について」より

持続可能な消費と生産

生活者の消費行動として欧州を中心に、倫理観に基づく消費行動である「エシカル消費」が進展している。生活者自身が人・社会・地域・環境などの社会的課題の解決を考えたり、社会的課題に取り組む企業に賛同して製品を選択したりすることが、その消費ポリシーとなっている。

日本国内では消費者庁がエシカル消費関連サイトを立ち上げており、また東京都は2022 年12 月に「TOKYO エシカル」というキャンペーンを開始、民間企業と連携した普及・啓蒙活動を開始している。

人権と印刷

人権とは、人間が人間らしく在るために生来持っている権利であり、それを阻害するようなイメージを一方的に与えるコンテンツ表現は回避すべきである。例えばある集団に対する差別的表現や固定概念に基づくステレオタイプを前提とするような表現などには、慎重な対応が求められる。

マーケティング戦略上、ある属性にターゲティングしてその属性における価値観の最大公約数に沿ったメディア展開を試みる場合がある。近年はあからさまな差別表現を見聞きする機会は減ったものの、アンコンシャスバイアス(無意識のうちの偏見)をもとにしていないか、改めて捉え直す必要もあるようだ。価値観が多様化し、最大公約数を求めること自体に無理がある場合も多い。

いずれにしろ「既存の社会規範に基づいた思い込み」ではなく、よりニュートラルな視点を心掛ける必要があるといえるだろう。

(資格制度事務局 丹羽 朋子)
Jagat Info 2023年2月号より一部抜粋