25年を越えて進化を続けるDTPエキスパート

掲載日:2018年10月9日
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DTPエキスパートは1994年2月に第1期試験をおこない、149名の方が受験した。その後、年2回実施しており、2018年8月には第50期試験(25周年)を迎えた。これまで延べ5万人以上の方がチャレンジし、合格者は22,000人を超えている。

DTPエキスパートが誕生した背景

米国でDTPの主要ソフトやハードウェアが発表されたのは1985年である。当初のDTPは、プリンター出力で完結するドキュメント制作が中心だった。その後、数年間で印刷機器メーカーとの連携が試行され、カラー対応やプリプレスシステムとしての可能性が期待されるようになっていた。

1993年頃になると、日本でもIllustrator 3.2JやQuarkXPress 3.1Jなどがリリースされたこと、ポストスクリプト対応の日本語フォントが増えたことなど、DTP環境が整ってきた。ただし、利用頻度の高い写植書体が使用できないこと、アプリケーションの安定性が低く出力エラーも多かったことなど、多くの課題が存在していた。

さらに、ハードウェアやソフトウェア以外の大きな課題として、文字と画像の両方の分野に精通した人材がほとんどいない、という現実があった。

それまでの印刷工程は、写植・版下を主とした文字組版と、写真原稿をスキャンしフィルムを加工する製版工程が独立して行われていた。デザイナーはレイアウトを考えて指示書を書くだけであり、印刷工程全体を見通す能力を持ち合わせてはいなかった。

JAGATは、海外の動向などから近い将来DTPが本格的に普及し、プリプレス・印刷の主流になることを想定していた。
そのための人材育成手段として認証制度が適していると考えた。顧客やデザイナー、印刷現場をリードする専門家であることから、「DTP エキスパート」と命名した。DTPの導入・運用に必要とされる知識や技術をカリキュラムとして体系化し、1994年にDTPエキスパート認証試験を行うことを発表したのである。

カリキュラム内容の変遷

初期のカリキュラムでは、写植やフィルム製版、フィルムのレタッチなどDTP以前のアナログ工程についての知識も問われていた。
その後、現在も続くスローガンとして「よいコミュニケーション」「よい制作環境」「よい印刷物」を掲げ、発注者側のデジタル化、マルチメディアやデジタル印刷などへの対応を含めることとした。

2000年代前半には、イメージキャプチャーとしてデジタルカメラを中心に据え、RGBデータ入稿、ICCプロファイルによる色変換、PDF/X、CTP、Japan Colorなどの項目が追加された。これらは、DTPおよびプリプレスのデジタル化がある程度完成し、広く浸透したことを表している。
2000代後半にはインターネットの普及を反映して、著作権問題や知的財産権、個人情報保護などが追加された。
近年では、実技課題の形式をPDF/X-4とし、透明効果の最適化に対応した。

このように、技術や制作環境の進化に応じてカリキュラムを改訂し、出題に反映しているため、その時代に応じた最新のDTPや印刷知識を習得することが可能となっている。

進化を続けるDTPエキスパート

ITやインターネットの進化、およびスマートフォンの普及に伴って、われわれの日常生活は大きく変化した。新聞、雑誌、書籍、コミックの電子版は広く浸透しており、日常的に利用している人も多い。
また、企業のマーケティング活動は、デジタルメディアにシフトしており、印刷メディアの比重が縮小傾向にあることは否めない。

しかし、このような時代であっても、社会における印刷メディアの重要性は変わることなく続いていく。総合カタログは無くなっても、個別に提案するためのパーソナルカタログが必要となる。デジタルメディアで強い関心を示した顧客には、豪華なDMが効果的である。

印刷の形や方法が変わっても「よい印刷物」を創造し、提供し続けるには、DTPエキスパートの知識や能力を備えた人材が原動力となることは間違いないだろう。

(資格制度事務局 千葉 弘幸)

※本記事は2018年4月公開記事の再掲です