消費者の心に訴えるブランディング ~五感×紙メディア×ブランド体験~

掲載日:2018年7月13日

グローバルで競争が激化している現在、あらゆる市場は飽和状態になっている。企業が自社の製品・サービスを訴求するためには差別化や独自性を伝えていく必要があり、ブランディングが重要なキーワードとなる。

中小企業もブランドで選ばれる時代
ブランディングとは、企業が顧客にとって価値のあるブランドを構築するための活動である。ではブランドとは何であろうか。企業の製品・サービスが他社のものより優れているポイント、あるいは伝えたいメッセージを、消費者に対して的確に伝える。そして製品・サービスが飽和状態の市場の中でも、消費者にニーズ喚起が生じた時に、いかに自社の製品・サービスを想起してもらえるかがブランドの役割である。ブランドが上手く噛み合えば販売や営業活動をしなくても、自然に高値で売れ続け、高いリピート率を継続していくことができる。SNSが普及したことで、ブランドを消費者へ直接伝えるチャンスがあるため、中小企業にとってもブランディングは有効な手段である。

ブランドは製品・サービスとは異なり無形の財産になる。表面的には目に見えないものを緻密に積み上げていくことで、その価値は高まるのである。
有名なブランディング事例として「関サバ」「関アジ」がある。佐賀関で水揚げされたサバやアジのことを指し一般的なものより高価格で取引されている。もちろん単純にブランド名をつけただけではなく、1本釣り、生け締め、空輸方法など細部の品質管理にこだわることで、他の漁港から水揚げされたものとは圧倒的な差別化を図っている。
そうした製品・サービス自体の差別化や独自性を高めることはブランディングの第一歩(大前提)である。

「良いサービス≠売れる」「良いサービス×伝える=売れる」
サービスにこだわり、良いものを提供していてもそれが未認知の消費者に伝えることができなければ売れない。ブランディングの第二歩は、ブランドを消費者に正確に伝えることである。そのためにはブランドコンセプトを決定し、その世界観をクリエイティブの力で表現する必要がある。そこは印刷企業がブランドオーナー企業へ支援できる一つのポイントでもある。
ブランドの世界観を構築する上で重要なのがブランド要素の統一である。プロモーション用印刷物であれば、「ブランド名」「ロゴマーク」「キャッチコピー」「色(配色)」「紙」をバラバラに考えるのではなく、それぞれの創りたいブランドの世界観に統一してデザインする必要がある。

五感で感じるブランド~「音」「香」「味覚」
近年は消費者の五感に訴えてブランドを体験させることで、より強い刺激を与えることが求められる。それらのブランド要素としては「音」「香り」「味覚」などがある。例えば、「お値段以上~♪」や「はじめての♪」とリズム音楽が鳴ったら、それぞれ思い起こす会社がある人もいるだろう。私の息子(幼児)もこれらの音楽が鳴ると、その後に企業名を口ずさんでいる。これは音を介在して幼い子供にも「ブランド再認」を起こさせているのである。「音」は人間の脳や感情に強い刺激を与え高い効果がある。2015年4月から音の商標保護制度もスタートし、企業の無形資産価値としても重要な位置づけとなる。

また、「香り」に関しても、少し高級なホテルに泊まるとそれぞれ特有の香りづけがされている。各地域にある同ブランドのホテルであれば同じ香りを設定しているところが多い。香りを嗅ぐことで、「またこのホテルに泊まりにきたな~」と帰属意識を醸成しているのである。新宿駅構内のアップルパイ専門店「らぽっぽ」では強烈なアップルパイの香りを店外に出している。その香りに引きつられて(ブランド体験をして)購入する人も多く、「香り」を起点としたブランディングを行っている。
そうした五感に訴えるブランディングが求められるなかで、印刷物も文字やデザインで情報を伝えるだけではなく、香りがでるうちわや、サウンドロゴがついたDM、厚盛り印刷や艶のある光沢コートでシズル感の高い食材を表現するなど、感情を刺激する付加価値の高い印刷物は様々に考えられる。ブランドオーナーは、顧客に自社のブランドをどれだけ伝えられるかが課題である。その一端を印刷会社として、ブランディング×紙メディアの視点でモノづくりとコトづくりを考えてみるのも面白いかもしれない。

CS部 塚本直樹

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