CBT方式試験への移行による受験者および社会環境への負荷軽減を数値化しました。
3月7日・8日に第63期DTPエキスパート学科試験を全国25都道府県における合計63カ所のCBT試験会場にて実施した。
CBT方式移行後3回目となる第63期試験の受験申請者は、前年同期比で114.3%と数年ぶりの増加に転じた。(表1)
CBT試験の会場は全都道府県に1カ所以上設置されており、第60期までの集合型一斉試験(全六大都市試験会場での学科試験実施)に比べて、受験の会場までの移動に伴う時間的負荷・経済的負担を削減している。そこで、軽減の度合いを定量的に捉えるため、第63期試験の受験者居住地域データを基に移動時間および費用の比較・集計を行った(表2)。
その結果、移動時間では50.9%、移動費用では76.6%軽減されていることがわかった。
表2 移動に伴う経済的費用および社会的費用の比較(63期学科試験受験申請者126名)
受験のための長距離移動は、CO2排出という社会的費用(利益を追求する過程で生じる負荷を環境などの社会に負わせる費用分)としても捉え得る。「1単位余計にCO2を排出したときに人類(社会)が追加的に受ける被害」を「炭素の社会的費用」(SCC: Social Cost of Carbon dioxide)と呼び、「見えないコスト」を経済に内部化するために用いられる考え方である。※1
近年では、交通移動の際に多くの人が利用する乗り換え案内アプリでも、各経路で生じるCO2排出量を表示する機能が実装されるようになった。そこで、CBT化による社会的費用の効果を数値で把握するべく、受験者の居住地域から受験会場までの最短時間到達ルートで排出されるCO2の量も算出した(表2)。その結果、受験者の移動に伴うCO2排出量は、80.7%軽減されていることが分かった。
一方で、厳密に算出するのであれば、受験者の移動だけでなく、その他試験実施に伴うCO2排出量として、CBT方式では試験システム配信から生じる排出量などが、また集合型一斉試験では受験票郵送や試験問題の印刷・会場までの輸送に伴う排出量なども対象となるだろう。これらを勘案すると全排出量の正確な把握は容易ではないが、最も影響の大きい交通機関からの排出量だけで約8割軽減される結果になったことは、SCCの観点からも一定の意義を見出せたといえるのではないだろうか。
※1 山口臨太郎『CO2の社会的費用はおいくら?』 国立環境研究所『国立環境研究所ニュース』Vol.38 No.3所収 2019年8月発行)
(JAGAT丹羽朋子)(JAGATinfo 2025年4月号掲載に対し、集計値対象を全受験者に拡大して加筆修正)
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