「価値がある」と感じてもらえる印刷物
 −『JAGAT info』5月号のご案内−

掲載日:2025年5月16日

 「釣り」という趣味がある。この趣味に本格的に没入していくと、釣竿(ロッド)やリール、糸、仕掛け、擬似餌(ルアー)や毛針などさまざまな種類の道具が欲しくなり、次第によりグレードの高いものが欲しくなっていく。そして釣り場に行くための往復の交通費をはじめ、乗船代や保険代、遊漁券の購入などなど、とめどなくお金が出ていってしまう。これを俗に「沼」と呼ぶようだが、要するに沼にはまったかのようにズブズブと散財してしまうことを例えており、初めて聞いたときは秀逸な比喩だと感じた記憶がある。
 さて、そのような釣り人に対して「わざわざ高いお金を出さないでも、スーパーや鮮魚店で買えるじゃない」と言うのは、無粋というものだろう。なぜならば、どの道具を購入すべきかで迷ったり財布と相談したり、あるいは夜明け前から出掛けて釣り針を垂らしてみても1匹も釣れなくて(これを「ボウズ」と呼ぶ)悔しい思いをするなど、一連のプロセスを全て含めて体験し、楽しむことが「釣り」という趣味だからである。その日の食料を得るために魚を釣っているのではない。
 これは、写真撮影という趣味においても同じことがいえる。大枚を叩いて機材をそろえ、天気予報とにらめっこしながら出掛けて現地の状況に一喜一憂し、ここぞというシーンでシャッターボタンに力を込め、そして狙いどおりの写真が仕上がる瞬間がたまらないからこそ、写真撮影という趣味を続けていられるのである。「プロが撮影した写真を購入すれば良いじゃない」では満足できないのは、写真を所有することだけが目的なのではないからだ。
 その人にとって何が価値あるものなのかは、その人の価値観次第である。つまり、その趣味に興味がない人にとっては無駄遣いとしか映らない行為でも、趣味人にとってはお金を注ぎ込むべき価値を持っている。消費者(ユーザー)にとって「価値がある」と感じてもらえる印刷物とは何なのか、今年度も一緒に考えていきたい。

 

『JAGAT info』2025年5月号のご案内

◯特集
 page2025開催報告
 印刷ビジネス開発最前線:キャラクターグッズで拓く新市場
  三輪直之氏(シンクイノベーション代表取締役)
  金光俊典氏(シンクイノベーション執行役員MD事業部長)
  河島弘司氏(バリューマシーンインターナショナル代表取締役社長)

 印刷業界では、今後の事業の柱となるような新規ビジネスの開発が急がれている。その一つとして注目を浴びているのがキャラクタービジネスで、市場規模は約2.5兆円ともいわれている。
 特集では、オンラインカンファレンス「印刷ビジネス開発最前線:キャラクターグッズで拓く新市場」の講演要旨を収録する。創業から10年で年商30億年を突破したシンクイノベーションの三輪氏と金光氏、印刷会社の新規事業開発を多数成功に導いたバリューマシーンインターナショナルの河島氏にご登壇いただき、さまざまな興味深いお話を伺った。

◯特別企画
 サステナビリティを起点に新たな印刷ビジネスを構想する
  講師:星名勧氏

 JAGATでは、さまざまな分野の有識者を講師に招き、職員向けの勉強会を随時開催している。特別企画では、星名勧氏を囲んでサステナビリティに関するお話を伺った際の講演要旨を収録。サステナビリティの考え方をどのように新たなビジネスへとつなげていくべきかを考える。

(『JAGAT info』編集部)

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