就活ルールの廃止及び変更で新卒採用のあり方が変わる

掲載日:2018年10月19日

経団連は新卒者採用の指針として「3月広報開始、6月選考開始」を現行の就活ルールとしたが、そのルールを廃止する意向を表明。新卒採用のあり方は大きく変わる可能性も出てくる。

就活ルールが変わる!?

日本経済団体連合会(経団連)は新卒者採用の指針として「3月広報開始、6月選考開始」を現行の就活ルールとしたが、そのルールを廃止する意向を表明した。ただし、2021年卒業の学生までは現行ルールを維持し、新ルールについては政府、学生との話し合いの上、具体策を模索する。

現行の就活ルールはあくまで経団連の指針であり強制力を持たない。経団連以外の企業はこのルールを順守する義務はなく、実態として4月から面接を始める企業も多い。ルールを順守した企業が新卒採用活動に出遅れる形となり結果として不利に働く構造が生まれる。形骸化したルールであれば、廃止または見直しをする必要性があり、それが経団連が廃止の意向を表明した背景になる。

ただし、ルールが全くない状況では、採用の超長期化によるコスト増や、学生の学業への支障などの課題が想定され、企業と学生が大きな混乱の渦に巻き込まれる。また、採用開始日程にルールが無ければ、優秀な学生は大学1年生の時点で内定を獲得することも可能であり、青田買いがより促進される。そのことが一概に悪いことでは無いが、超大手や知名度の高い企業の採用が有利になり、中小企業の新卒採用においてはより厳しい状況になる。なお、「2019年卒・新卒採用に関する企業調査-内定動向調査」(キャリタス調べ)によると、日程ルールが撤廃された場合の影響について企業側の回答は、優秀な学生を「採用しやすくなる」と回答したのは5.2%「採用しづらくなる」が64.7%に上る。

通年採用という考え方

2021年卒業の学生までは現行ルールが維持されるが、その後、日程ルールの廃止または大きく緩和されるようなら、新卒採用の考え方は大きく変わる。日本は決められた期間の中で求人を行う、「新卒一括採用」が通例であるが、アメリカのような「通年採用」が増えていく可能性もある。通年採用とは期間を定め無いため、大学1年生の時点で内定を獲得する学生も増える。実際に、日本においても通年採用を導入している企業は増えている。

ソフトバンクは2015年より「ユニバーサル採用」を提唱し、大学4年の学生のみを新卒対象にするのではなく、入社時30歳未満の新卒、既卒、就業経験者を新卒採用の対象とし、入社時期も4月に限らないため優秀な人材を確保する間口を広くとっている。

フリマアプリで躍進を続けている新鋭企業のメルカリも「新卒」という概念を持たず通年採用を取り入れ、学生の学年も不問にしている。学年を不問とする通年採用の課題として、長い内定期間中に繋ぎとめることや、学生のモチベーション維持があるが、同社は、新卒新入社員向け人事制度『Mergrads(メルグラッズ)』を導入している。一般的に、新卒入社社員は一律の初任給が設定している企業は多いが、同制度は、学生のスキルやバリューに応じて提示する年収も違えば、内定期間中に昇給し初任給に反映される。報酬面だけではなく、内定期間中の教育にも力を入れており、プログラミングや語学支援などの制度も用意している。

このように、就活ルールが廃止または新たなルールに変更されることで、新卒採用のあり方が大きく変わる可能性がある。人材採用は企業の永続的な発展のためにも大きなポイントとなるので、就活ルールの動向を捉えながら新たな新卒採用のあり方を考えていく時期が来たのかもしれない。

CS部 塚本 直樹

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