新たな市場はどこにある「デジタル×紙×マーケティング」をテーマにJAGAT大会2018開催

掲載日:2018年11月2日

2018年10月25日(木)、ホテル椿山荘東京にて「デジタル×紙×マーケティング」をテーマにJAGAT 大会2018を開催した。参加者は180名を超え、今年も当日発行の『印刷白書2018』をいち早く渡すことができた。

JAGAT50周年記念として開催した昨年のJAGAT大会2017が、周年事業の意味で、セレモニー的な要素が多かったのに対して、今回はデジタル時代に印刷メディアがどのような役割を担うかについてディスカッションを行った。

第1部は塚田会長の挨拶で始まった。
この1年間の国内外の経済状況に触れ、情報コミュニケーションの分野では、新しいサービスステーションが必要であるとし、印刷以外の新たな市場には他企業とのアライアンスも考えていくべきだと言及した。JAGATが2015年に発行した『未来を創る』の中にもある「2020年までに何をするのか、実現のために必要な戦略」のためには、あと1年と少ししかないと述べた。さらに今年9月にドイツ・ケルンのケルンメッセで開催された世界最大級のカメラの展示会『フォトキナ(Photokina)2018』の報告をした。

次にJAGAT専務理事の郡司秀明が、「「デジタル×紙×マーケティング」で印刷ビジネスはこう変わる」と題して講演をした。JAGATの価値観としては、印刷業の多様性を述べるとともに、今後はインターネットやデジタル知識は不可欠になる、絶対に無視することができないものになる。だから印刷ビジネス自体が変わろうとしている。特に広告・宣伝事業、商業印刷はデジタルマーケティングとリンクしていくことが必須であるとした。

重要なものは人材で、JAGATでは最大限サポートしていく。具体的には、JAGAT主催のセミナー、研究会などであり、DTPエキスパートやクロスメディアエキスパート資格試験は人材育成の最短距離である。

続いて、JAGAT研究調査部部長の藤井建人が「JAGAT最新調査から読み解く印刷業界の最新動向」を講演した。当日配布した『印刷白書2018』と『デジタル×紙×マーケティング読本―デジタル印刷レポート2018-2019』に、「JAGAT印刷産業経営動向調査」、「フリーペーパー調査」などを踏まえて、売上高、収益性、生産性、安全性など多方向から印刷産業の市場動向を解説した。

第2部では、「デジタル時代の印刷メディアの新たな役割」をテーマにディスカッションを行った。

登壇者は元花王でデジタルマーケティングを担当した「デジタリアン」の本間充氏、消費者動向の実態調査を行いデジタル消費の実態を把握する博報堂DYメディアパートナーズの吉川昌孝氏、紙とデジタル両方の立場で雑誌制作に関わってきた主婦と生活社有山雄一氏の3名である。

テレビを横目にスマホとタブレットを視聴する若者の行動が示すデジタル世代の消費行動や、上海でビッグデータや顔認証など最新技術を駆使した無人書店の「志達書店」でのリアルイベントを絡めた取り組みなどを紹介し、「実体化」「OmO(Online Merges Offline)」などのキーワードを交えつつ変化するメディア環境下で生き残るためのメディアについて議論した。

ディスカッションから見えてくるのは、デジタルメディア、印刷メディアという分類は無意味になってきているということかもしれない。「最近の若者はいらないメールを捨てるのではなく、必要なメールだけを選択するのです」という発言が出たように、消費者は「紙だから、デジタルだから」でメディアを選んでいるわけではなく、必要な情報が載っているメディアを選択するようになってきている。そのような時代に生き残るためのヒントとして、有山氏は「自社の資産を棚卸しして新たなビジネスを行ってみる」、吉川氏は「リアルイベントに注目している。オープンファクトリーなどはこれから面白いのではないか」と述べていた。


左から本間氏、吉川氏、有山氏

第3部では、参加者同士が交流する場として懇親会を開催した。
塚田会長の挨拶の後、経済産業省主務情報政策局コンテンツ課課長代理矢野泰夫氏が来賓祝辞を述べた。網野勝彦副会長による乾杯の音頭の後、和やかな雰囲気の中、談笑の輪が広がった。

(JAGAT大会の報告およびディスカッションの詳細については、『JAGAT info』2018年12月号に掲載予定)。