デザイン経営による競争力の強化

掲載日:2018年11月14日

製品のコモディティ化(同質化)が急速に進んだ現在、機能や品質において他社製品と差別化することが困難になった。また、あらゆる産業が技術革新によって、従来の常識や経験が通用しない大変革期を迎えている。そこで生き残るためには、顧客に必要とされる存在に生まれ変わる必要がある。そのような環境下、規模の大小を問わず、世界の有力企業が戦略の中心に据えているのがデザインだ。しかし、日本の経営者はデザインを有効な経営手段と認識しておらず、グローバル競争の弱みになっている。

デザイン経営の重要性

「デザイン経営」とは、デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する経営手法である。たとえば、米アップル社や英ダイソン社は、デザイナーを経営層に取り入れている(ダイソンは創業者がデザイナー)。両社は、明確な企業理念のもと独自の強みや技術、イメージをブランド・アイデンティティとしてデザインで表現し製品の価値を高め、世界的な市場拡大を実現している。
一方、日本企業はデザインに対する自信と意識が低く、製品の同質化が進む中、国内企業の国際競争力は一層低下している。そこで、デザインによる企業の競争力強化に向けた課題の整理とその対策を行うため、2017年7月「産業競争力とデザインを考える研究会」が立ち上がった。数多くの議論後、報告書『「デザイン経営」宣言』を取りまとめた。

見栄えだけではないデザイン力

デザインは、企業が大切にしている価値、それを実現しようとする意志を表現するものだ。単に製品の見栄えを良くするだけではない。顧客が企業と接点を持つあらゆる体験に、その価値や意志を徹底させ、それを一貫したメッセージとして伝える。それによって、顧客に他企業では代替できないというブランド価値が生まれる。

また、デザインはイノベーションを実現する力になる。デザインは、ユーザーが気づかないニーズを掘り起こし、事業にしていく面があるからだ。そこでは、供給側の思い込みを排除する。そのうえで、ユーザーの潜在的ニーズを企業の価値と意志に照らし合わせる。誰のために何をしたいのか、という原点に立ち返ることで既存事業に縛られず事業化を構想できる。
デザインとイノベーションでは、歯磨き粉チューブの例がある。昔は細長いチューブを尻側から押して小さなキャップから出して使っていた。子供のころ、真ん中から押そうものなら怒られたものだ。しかし、今ではキャップ部分が大きく、逆さに立てる自立型チューブになった。それによって抜群に使いやすくなり市場を一変させた。それくらいデザインは世の中の暮らし、イノベーションに役立つものだ。

デザイン経営の投資効果

「デザイン経営」は、その投資効果に見合うだろうか。各国調査では「YES」という答えである。欧米ではデザイン投資を行う企業パフォーマンスについて、研究が行われている。そこではデザイン投資を行う企業が、高いパフォーマンスを発揮している。たとえば、British Design Councilは、デザインに投資すると、4倍の利益を得られると発表した。また、Design Value Indexは、S&P500 全体と比較して過去10年間で2.1倍成長したことを明らかにした。その他の調査を見ても、「デザイン経営」を行う会社は高い競争力を保っており、デザインを取り巻く世界の常識となっている。日本もいち早く経営者がデザインに積極的に取り組み、(印刷物を含め)デザインの価値がもっともっと上がる世の中になってほしい。

(西部支社長 大沢 昭博)

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