【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術] 3-3 網点

掲載日:2018年11月1日
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  • 平版・凸版印刷などでは、画像の階調表現を網点面積率の大小で表現する。
  • 網点のような周期的パターンの画像を2つ以上重ねると、そこに別の規則的な模様(モアレ)が発生する。各色版を重ねて印刷した際にできるモアレのひとつに、網点が小さな環状あるいは花状につらなったロゼットモアレがある。
  • 各色版を重ねて印刷するときのスクリーン角度が不適切であると、モアレが目立ち絵柄の再現を損なう。モアレを目立たなくするために、各色版の角度をコントロールしている。
  • かつて網点の形成は光学的スクリーンを用いて行われていた。デジタル出力では、従来の網点形状を電子回路でシミュレートしている。網点形状によって画像の滑らかさやシャープさが変わる。

3-3-1 スクリーン線数

  • 網点は1インチに並ぶ網点の数によって、粗密を表現する。これをスクリーン線数という。
  • 平滑度の低い紙では、インキ皮膜厚をより厚くして印刷しなければならないので、網点が太りやすくなる。したがって、紙質に応じて適切なスクリーン線数を選ぶことが必要である。
  • アート・コート紙を使うカラー印刷では175線〜230線くらいが使われ、中・上質紙を使う書籍、雑誌や新聞では85線〜133線くらいが使われることが多い。
  • 250〜300線以上は高精細印刷とも呼ばれ、刷版製版から印刷にいたる品質管理は厳密なものとなる。
  • 巨大な看板などは、いったん網点出力したフィルムを拡大して意図的に粗い線数にして(目伸ばし)、インキを多く乗せて濃度を高く印刷することもある。

3-3-2 スクリーン角度

  • 各色版を印刷で刷り重ねる際にモアレが目立たないようにするために、刷版上で各色版のスクリーン角度を変える。
  • 網点は水平、垂直に並べるよりも45度に傾けた方が目立たなくなるので、単色印刷では45度のスクリーン角度を使う。
  • プロセス4色のうち、C、M、K版が干渉するとモアレの原因となり易い。そのため、45度にこの1つを置き、他の版をそれぞれ30度ずつ離して置く。そして、これらのいずれか2色の中間にモアレが発生しても目立ちにくいY版を置く。

3-3-3 AMスクリーン(Amplitude Modulated Screening)

  • アナログ製版の時代から現在に至るまで、最も一般的に使用されている。等間隔に配置された網点の大きさを変化させることで色の濃淡を表現するスクリーニング技術である。網点の再現性、印刷時のインキ転写精度に優れており、オフセット印刷における標準的なスクリーニング方式とされている。網点の形状はスクエアドットの他にラウンドドット、チェーンドットなどがある。

3-3-4 FMスクリーン(Frequency Modulated Screening)

  • FMスクリーンでは、網点(実際はドットというべき小さな点)の直径を一定にして、点と点の間隔を制御することで濃淡を表現する。一定面積内の点の数は、明るく表現する部分では少なくなり、暗く表現する部分では多くなる。
  • FMスクリーンの特長としては、1)従来のスクリーニングでは網点が規則的に並び、スクリーン角度に起因するモアレがあったが、それがないこと、2)点が非常に小さいので布地や木目などの表現に優れていること、3)スクリーン線数による制限がないので豊かな階調表現ができること、などである。
  • FMスクリーンでは、絵柄中の平網部分、中間的な明るさのフラットな部分やハイライト部で、画質が荒れた感じになりやすいが、さまざまな対処法がある。
  • 4色プロセスインキセットだけではなく6〜7色を使った印刷方式など、将来のカラー印刷への展望を開いた画期的な技術である。

3-3-5 高精細印刷

  • 標準的なオフセット印刷の場合、175線程度のAMスクリーニングを用いることが多い。それに対して、より精細な線数で刷版を製作し、印刷することを高精細印刷と呼ぶ。一般的には250〜300線以上のスクリーン線数を指すことが多い。250線を越えると、網点は肉眼で確認できないほど微細となり、階調もなめらかとなる。画像が鮮明で高彩度の表現が可能となるため、写真集や美術印刷などに用いられる。一方で印刷条件が厳密となるため、管理面の制約もある。

3-3-6 平網と網点の管理

  • 2色以上のインキを刷り重ねて、色を出すことを掛け合わせという。
  • かつては、ベタ印刷以外の一定の階調を表す部分を平網と呼び、図形や罫線に平網を設定することを「網フセする」「網ガケする」と言っていた。
  • 一般に、平網は10%単位で設定し、10%単位で印刷品質を管理することが多かった。色見本として、10%単位の網の組み合わせを印刷したものを参考にすることもあった。
  • プロセスインキを「M70%+Y100%」で掛け合わせると、オレンジになるが、オレンジ、黄緑、青紫のような色は、プロセスインキを掛け合わせるより特色を使った方が鮮やかである。
  • 「C50+M50+Y50」など等量のCMYの掛け合わせたグレーは赤みを帯びるため、Kに置き換えた方が安定する。
  • 特定のプロセスインキ用に分解したCMYKデータを別のインキセットで印刷すると、仕上がりが全く異なる可能性がある。つまりCMYKデータは、インキに依存するデバイスデペンドバリューである。
  • CMYKの値がどのような色として印刷されるか、インキ自体の分光反射率や紙、湿し水管理、刷り順、印刷機本体の調整、また温度・湿度等の印刷工場の環境といった複数の条件が積み重なって影響する。
  • CMYK値は「面積率」という絶対値であるため、印刷工場内の管理上は有効でも、色を表現する情報としては万能でない。インキや紙や印刷条件が標準化されたものとして、日本ではJapan Color、アメリカではG7(SWOPやGRACol)、ヨーロッパではPSOなどの指標がある。