現実的な働き方改革について、調査結果から論考

掲載日:2018年12月13日

印刷会社の働き方改革について調査したところ、業種の強みが生かして伸ばすべきことが判明した。そして施策と業績の相関を見ると、一定の傾向があることが論考された。

その業種の強みを生かした働き方改革を


■最多は有給取得の奨励

深刻な人手不足を背景に、各方面で働き方改革に関する議論と試行錯誤が続いている。働き方がラクになっても業績が悪化しては仕方がない。業績を維持しつつ、あるいは働き方を改革しながら業績を高めるには?「JAGAT印刷産業経営動向調査2018」では、初めて印刷会社の働き方改革・生産性向上の取り組みと意向について調査した。その結果、最多は6割弱が取り組む「有給取得の奨励」だった。制度的側面は弱いだろうから導入はたやすいが実効性はどうだろうか。4割弱ある「定時退社の奨励」も数は多いが同様に冷静に見るべきだろう。


■印刷会社はテレワークの実施率が高い

「非正規社員の正社員化」が6割弱、「テレワーク(自宅勤務)」が4割強で続く。印刷業界は他業界より先進的と見て良いのではないか。総務省「平成29年通信利用動向調査」によると、2017年の企業テレワーク導入率は13.9%であり、導入率は産業横断的な平均値を大きく上回って高い。DTPへの取り組みを通じて古くからデジタル化やネットワーク化に取り組んできた強みが生かされている。パソコンスキル等が他産業中小企業より高い点は強みと自覚して、引き続き働き方改革に生かしていくべきだろう。


■時間短縮より休日重視が効果的か

「短時間勤務」5割強、「フレックスタイム」約3割、「裁量労働制」約2割。この3つは導入意向もそれぞれ同数程度があって広がりそうだ。導入には新たな制度設計が必要なため、真に働き方に影響を及ぼしていくだろう。「副業の許可」と「リモートワーク(働く場所の自由)」はそれぞれ1割に満たなかった。まだ1回の調査しかしていないので、あくまで現時点での仮説であるが、時間短縮のスタンスより休日重視のスタンスの方が業績を高めるようだ。「有給取得の奨励」「裁量労働制」「テレワーク」「フレックスタイム」導入企業の業績は平均を一定程度、上回っていた。


■一律よりも自由度が効果的か
働く時間の自由、働く場所の自由、そして休日の取りやすさが従業員の成果を挙げることにつながっている可能性が示唆される。逆に定時退社など時間を一律に制限する方向に向かわない方が良い。1日の働く時間を減らすよりも働きやすい環境を整え、調子が良い時は長時間働いたが方が良いし、逆に乗らない時は早く切り上げたり休みを取ったりした方が業績につながりやすいようだ。働き方改革とは、業種・職種にもよるが、従業員が仕事に没入しやすい環境と時間と勤務日を選択できる自由度のことかもしれない、というのが本調査から導かれる一つの仮説である。

参考文献:「JAGAT印刷産業経営動向調査2018」
     「JAGAT info」2018年9月号,p31

(JAGAT 研究調査部 藤井建人)

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