「コンテンツファースト」へと舵を切った講談社

掲載日:2015年1月21日

講談社は、2014年9月に印刷物や電子書籍用のコンテンツ制作管理システム「スマート・ソース・エディター」を開発し、本格運用すると発表した。

出版コンテンツの制作管理システム

スマート・ソース・エディターは、社内の校閲やルビ振りのノウハウをシステム化したもので、一般書籍などの原稿制作を担う。用字用語の統一や学年によってルビの対象範囲が変わるなどのルールが反映されている。

しかし、最大の効果は独自のシンボリックなタグ設定によるXMLテキストを書き出すことだろう。例えば、書体指定なら「〇○ゴシックB」とかではなく、「見出し1」のようなタグを指定する。デバイス(印刷会社)側でDTPソフトに取り込む際に、「見出し1」に相当する書体名に一括変換する。このXMLテキストは、印刷用にも電子書籍用にも展開できる汎用性を持っており、印刷物と電子書籍のサイマル出版や文庫化などの将来的な2次利用もローコストで実現することができる。

DTP、電子書籍を見据えた出版・制作の最終形?

出版社が自身でコンテンツを制作・管理し、完成度の高い原稿を用意する。印刷技術や電子書籍リーダーは将来的には発展し、不変ではない。新たなデバイスが誕生することもあるし、制作方法が大幅に変化することもある。そのため、デバイスに依存する部分は印刷会社に委託する。
校正時に修正があっても、元のコンテンツにフィードバックすることが容易で、常に最終コンテンツを保管することができる。将来的な2次利用も、迅速、ローコストで実現することができる。

取引先の印刷会社などでは、既にこの原稿データを元にした印刷物や電子書籍の製作に移行しており、出版が行われている。
このような出版社による「コンテンツファースト」は、理想的な制作スタイル、分業体制と言えるかもしれない。

【関連イベント】:【page2015カンファレンス・2月4日(水)13:00~15:00】

【G1】「これからの出版コンテンツ制作」では、講談社デジタル製作部次長の増子昌也氏に構築までの経緯や実際の運営について話を聞く。DTPとの違いは何か、印刷会社の製作部門とのやり取りや今後の課題についても議論を交わしたい。

今後の出版制作に大きな影響のある事例と言える。出版制作やDTP、電子書籍の関係者にはぜひ参加していただきたい。

(JAGAT研究調査部 千葉 弘幸)