従業員側から見るコロナ禍の研修・スキル向上手段

掲載日:2020年12月17日
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エキスパート認証制度では二年に一度の資格更新の際、更新者にアンケートを行っている。2020年11月更新者約2,000名にコロナ禍の研修・スキル向上に関する実態調査を行った。

エキスパート資格者(DTPエキスパート約1800名クロスメディアエキスパート約200名)を対象者としているため、調査対象者の職種属性は、デザイン制作職が約3割、営業職約2割が主要層となっている。

コロナ禍で企業活動自体が一時停滞(自粛)した間、個別学習の需要は増加した。その中で、研修・学習形態はどのように変化したか、実際の学習者はその変化をどのように捉えているかを踏まえ、今後の人材育成形態の在り方を展望するための調査とした。

固定化したスキルだけでなくビジネス環境と自身の働き方をも踏まえたスキル形成がより望まれる時代を迎えている。加えて、コロナ禍で利用手段の常識が大きく変化し、各人ベースの申し込みや個々の利用を前提とした研修サービスも増加していることから、その変化を捉えることも目的とした。

コロナ前後のスキル形成実態

コロナ以前では、会場受講の集合研修、書籍など紙媒体の教材がそれぞれ3割ほどを占めていた模様だ。Web、電子書籍、アプリなどのデジタル教材を活用している人も2割ほどいる。

コロナ以降では、実質会場受講の集合研修は自粛傾向にあったため、当然ながら会場受講の研修が激減し、オンライン講座に置き換わったことが分かる。かつ教材は紙媒体からデジタル教材へと僅差ではあるが逆転している。
コロナ前の学習手段
コロナ以降の学習手段
セミナーの受講形態変化通信教育の形態変化

従来は、デジタルとアナログの両方式の提供があればアナログが選択されることが多く、デジタルの利点を知る機会がなかった人も多いと思われる。コロナによりデジタルメディアを利用する機会を得た結果、コロナ収束後の利用者側の意向はどのように変化したかを確かめた。

手段の変化と今後の意向

教育ツールとしてのデジタルメディアのデメリットが懸念される面もあるとはいうものの、社会人教育においては利用者側の利便性も踏まえて今後の活用方法を検討していく必要がある。

ただしこの傾向は、学習形態によっても異なり、研修講座や通信教育ではオンライン、デジタルメディアを引き続き利用したい意向が強いが、教材に関しては、「現時点ではわからない」という回答もかなりの割合を占めている。

昨今の注目テーマに対する関心度

記述問題としてさらに、昨今の注目テーマである「デザインとマーケティング」の可能性や、自身の業務との関連について、短文記述の回答を求めた。

エキスパート認証制度では、「新ビジネスを作る企画提案力を持った人材」「印刷物の強みを活かしてビジネスを実体化する人材」を想定している。

こうした人材には、マーケティング力とデザイン的観点は避けて通れないものとして、2016年発行のDTPエキスパートカリキュラム12版から試験範囲に盛り込んでいる。

2020年12月末公開予定*のカリキュラム第14版では、印刷ビジネスにおけるコミュニケーション施策とメディア制作の連携が重要視される点を反映し、「コミュニケーション」カテゴリにマーケティングとデザインの関連を示す内容を集約するよう構成変更をする予定だ。

併せて今後の人材育成の一助として活用いただきたい。

*カリキュラム冊子版は2021年1月より配布開始します。

(アンケート結果詳細は、会報誌jagat info 2月号に掲載予定)

(JAGAT研究調査部 丹羽 朋子)