能動的な学びの姿勢でデザイン力を高める

掲載日:2021年10月14日
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DTPエキスパート・マイスター認証試験の主要な受験者層は印刷および関連業界のデザイン・制作職であるが、そんななか、グラフィックデザイナーとして長年の経験を持ちながら、あえて印刷を詳しく知ることで顧客からの信頼にもつなげようと資格取得に臨んだ1108GRAPHICS(イトウヤグラフィクス)のイトウエリカ氏の取り組みについてお話を伺った。

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第55期DTPエキスパート・マイスター取得者
イトウ エリカ 氏
1108GRAPHICS

 

これまでの仕事の経歴や現在の業務について教えてください

グラフィックデザイナーとしてデザイン事務所に勤務後、独立して8 年半になります。

主に雑誌・ムック・書籍などの出版関係のデザインを手掛けていますが、販促ツールやパンフレット、カタログ、飲食店メニュー、バナーやウェブサイト、教材、パッケージなど、業務内容は多岐にわたります。

同じようなデザインを続けていくよりも、多様な業種・多様な媒体のデザインを手掛けていきたいと思っていますので、今まで手掛けたことのないジャンルでも、スケジュールさえ合えばなるべく引き受けるようにしています。

日々の仕事で、あるいはこれからの仕事をするうえで課題を感じていることはありますか

会社員時代はすぐ近くに上司や同僚がいましたので、分からないことは聞いたりソフトウェアの新しい機能を教えてもらったりと、受動的に過ごしていても知識は増えていきましたが、現在は独立して自分一人で業務にあたっているため、受動的だと成長がありません。常に能動的に学ぶ姿勢を持ち続けなければならないと思っています。

ただし、これは個人的な考えですが、役に立つことばかりを学ぼうとするのは遊びがなくてつまらない。デザインには遊びや余裕も必要です。役に立つことも立たないこともいろいろと知っている方が、回り道にはなっても最終的に良いデザインを生み出せるのではないかなと思っています。

DTP エキスパート取得に取り組まれた経緯・動機について教えてください

実は、DTP エキスパートを取得しようと思い始めたのは、試験の1 カ月半前、受験申し込み締切の2週間くらい前でした。

昨年からのコロナ禍で仕事が減り、特に1月は時間があったので、常日頃の業務に追われている状況だとできないことに挑戦しようと考えたのです。

そこで、資格を取得しようと思いました。デザインには資格がありませんので、直接的ではなくても多少デザインと関連性のあるものをと考えて、印刷・DTP の資格=DTP エキスパートを取得しようと考えました。

申し込んでからは1 カ月間、業務の合間を縫って勉強に励みました。大学入試以来の試験勉強だったので、毎日新鮮な気分でしたね。

DTP エキスパート資格をどのように生かそうと思っていますか

グラフィックデザインを「モノ」にするのが印刷技術ですので、印刷の知識はグラフィックデザインの土台になる部分です。直接的に業務に生かせることは少ないかもしれませんが、印刷をしっかり理解したうえでデザインに臨むことは大きな意味があると思っています。

また、印刷・DTP についてプロフェッショナルであるという公的な認証を頂いたのは、何の保証もない個人と取り引きをするクライアントの立場からすると、一つ安心できる材料になるのではないでしょうか。

資格を取得して何か変わったと感じること(自身のスキルや対外的な影響など)はありますか

フリーランスのデザイナーとして大きな変化があるわけではないのですが、「勉強して成果が出た」ことは率直に嬉しかったです。この突然訪れた暇を持て余すのではなく、学びに費やせたのは有意義でした。

あとはフリーランスのデザイナーで資格取得という話は少し珍しいようで、ちょっとした話の種になったりもしていますね。

今後の業務の展開や目標などがありましたら教えてください

まず何よりも、このコロナ禍の一刻も早い収束を願うばかりです。仕事が以前のペースに戻らないと今後については展望しづらいところではあるのですが、どのクライアントも大なり小なりコロナ禍の打撃を受けていますので、一緒に立て直していくという気概でやっていきたいと決意を新たにしています。

その他にも、資格取得と並行してウェブサイトのリニューアルを行っていたのですが、あまりにウェブの知識がなくて苦労したので、今後はその知識ももう少し深めていきたいです。学習と実践を繰り返して習熟していく、その過程を今まで以上に大切にしたいですね。

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コロナ禍で人々の生活パターンや日々の時間の使い方が変化したことで、個別学習需要も増加傾向にある。一定の職務経験が身に付くと、基礎からの学び直しを回避したくなるものではある。しかしながら、体系化された資格試験への取り組みは、知識の総点検とともに、現在のビジネス環境だからこそ重要性が増している領域に改めて気付きを得る機会ともなる。業務実績も豊富なイトウエリカ氏の取り組みは、その好例だといえるであろう。

まとめ JAGAT資格制度事務局 丹羽 朋子
-JAGAT info 2021年8月号より一部転載-